大丈夫? 私の声ちゃんと聞こえてる?

「また君に会えて嬉しいよ」//小さくなったり大きくなったり。耳元に近づいては離れていく声。


//SE 白地に黄色い向日葵柄の浴衣を着たちいちゃん。腕に小さなきんちゃく袋。手には金魚の模様のかわいいうちわ。

田園風景と大自然に囲まれた長閑な村。



「大丈夫? 私の声、ちゃんと聞こえてる?」

//正面から。空気が漏れるようなおっとりとしたささやき声。小さい声だけど活舌はいい。


//SE 蝉の声。土の上を歩く二人の足音。



「随分雨が続いたけど、ようやく晴れたね」//右耳からの声。


「ひと雨ごとに、夏の終わりが近づいてる。


夏ってわくわくするけど、すぐに終わっちゃう。急がなきゃ!」


大丈夫? 聞こえてる? 私の声」//右耳から聞こえる明瞭な声。


そっか。よかった。


今日は、この町にとって、特別な日なんだ」//正面からの声。前を歩いているちいちゃん。


「年に一度だけの特別な日」//こちらに振り向く


「ほら。向こうの方に耳を澄ましてみて」//左からの声


「聞こえる?」


//SE お祭りの音。少しずつ大きくなってくる。


「そう! 祭囃子」


「今日はこの村に代々伝わる夏越の祓なごしのはらえの日」


「う~~~ん。まぁ、有り体に言うと、夏祭り!


だからね、今日は、浴衣着てみたの。


ひまわり柄の浴衣……どう?


私、ひまわりが大好きなんだ」//袖を持ち上げて首をかしげる。


「んふふ。誉めてくれてありがとう。


君のキャップもかっこいいよ」//んしょっと背伸びをして、頭に触れる


「君は女の子を褒めるのが上手だね」


「今日は、君にとっても、特別な日になるといいなぁ」


「あっ! もう特別な時間は始まってるんだった! まだ出会ったばかり君と、初めて一緒に過ごす夏」


「たくさん思い出作ろ!」


「さぁ行こう!」//腕を引いて、小走り。


//SE 段々大きくなる祭囃子の音と群衆の声


「ふわぁ、すごい人だ~。毎年の事ながら、いつも驚いちゃうよ。

この町に、こんなに人がいたのか~って」


「金魚すくいに、スーパーボールすくい。


くじ引き!! スイッチ当たるらしいよ。ほんとかな?」//意地悪な笑み。


「当たった人、見た事ないよね。あはっ。君も、そう思う?」


「射的に、投げ輪。


あ! 私、あれやりたい! ヨーヨー釣り。

私、絶対失敗しないので。きゃはは」


//SE ヨーヨー釣りにチャレンジ。水の音



「うんしょ。


あらら……


あちゃちゃーー。


あれ? おかしいなぁ。


あれ?


え~ん、切れちゃった。

ざーんねん」


「そ、そんな事言うんだったら、君がやってみてよ」


SE// ヨーヨー釣りにチャレンジ。


「あの、黄色いのがいいな。黄色とオレンジの模様のやつ。黄色とピンクでもいい。ちょっと大きすぎかな」


「うんうん。


ほう。おおーー。

おーー! いいよいいよー。


もうちょっと。

頑張って。


そーっと、そーっとね」


「うわぁ、すごい!!

釣れた!!」

//SE ちいちゃんの拍手の音


「凄い!! 天才!!

君は、ヨーヨー釣りが得意、メモメモ……」//メモを取る音。


「へ? くれるの? いいの?


わぁ、うれしい。

ありがとう」


SE// しばらくお祭りの雑踏。



「ねぇ、お腹すいてない? すいてるでしょ? 


さっきからお腹の鳴る音が、聞こえるよ」//お腹に耳を寄せる。


「んふふ」//袖で口元を隠す。


「私もね、実はお腹ペコペコ。


何食べたい?」


「私はねぇ、かき氷! いちごミルクのかき氷が食べたい」


「ほ? 君はマンゴーミルクが好きなのか。

ふむふむ、メモメモ……」//メモを取る。ボールペンが紙を擦る音。


「んふっ。


私って、メモ魔なの。

大事な事はメモしておかないとすぐに忘れちゃうから」//困ったような表情。


「ふわぁ、なんか、頭がぽーっとしちゃうぐらい楽しい。

君と一緒に村祭りに来られるなんて」


「ね、見て見て。川辺が、ちょうちんでライトアップされてるの。きれいでしょ。


日が暮れて、真っ暗になったらもっときれいなんだよ。


待ち遠しいなぁ、早く日が落ちないかなぁ」


「あ、でも……お祭りが終わったら、君との時間もおわるのか。さびしいな」//寂しげな声



「この村祭りの屋台の多くはね、この辺りの商店街が出してるの。

だから安くて、何もかも美味しいの」


「そっか。腹ごしらえなら、かき氷じゃなくて、たこ焼きとか、焼きそばがいいよね……」


お祭りと言えば、たこ焼きに焼きそばだよね。


君は、たこ焼きと焼きそば、どっちが好き?」


「ふわぁー」//嬉しそうに。


「私と一緒だ! 

焼きそばもいいけど、たこ焼きが若干勝つんだよね。

じゃあ、決まりだね。

たこ焼きからの~、かき氷!」


「どっちも買っちゃおう!」


//SE 祭囃子と群衆の声。



「おっとっと。更に人が増えてきたね。人が、多すぎて、なかなかまっすぐ、あるけ……ないね」

//SE Tシャツの裾ををつかむ音


「こう、してても、いい? はぐれちゃいそうだから」


//手を掴む。


「ふあっ!」//驚いた声。


「ありがと。こうしてたら、安心だね」


「君の手は大きくて、優しいね。

すっぽりと包まれてる感じが、なんだか安心する」



「あれ? なんだか、顔色悪いよ。大丈夫?」//心配そうに。


「そっか、君は人混みが苦手なのか。ふむふむ、メモメモ……」//

手を離してメモ音。


「んふふっ」//ちいちゃんから手を繋ぐ。


「大丈夫。安心して。

誰にも内緒の秘密の場所があるの。


たこ焼きと、かき氷買ったら、連れて行ってあげるね。


私だけの秘密の場所。


君だけ、特別なんだからねっ」


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