最終話

//SE リビングに敷かれた布団に体育座り。すぐ隣の部屋にはちいちゃん。


//SE コンコンと、控えめに扉をノックする音。


「ねぇ、寝た? 起きてる?」//壁越しに聞こえるくぐもった声。


「そっか。眠れない? 大丈夫?」


「あの……、動画、送ってくれてありがとう。


花火、すごくきれいに撮れてたね。


BGMも、エフェクトも、素敵だった。


・・・・・・も素敵だった」


「すごいね」


「へぇ、スマホのアプリでできるんだ?」


「え? 私の声、よく聞こえない?


じゃあ、そっちに、行っていい?」


「ありがとう」

//SE 扉を開ける音。パジャマ姿のちいちゃんが部屋に入って来る。


「あっ、そのまま、そのまま座ってて」


//SE 背中をくっつけて体育座りをするちいちゃん。布団の上で、背中合わせで座る二人。


「あの動画、私がもらっていいの?」


「へぇ? 私のために撮ってくれてたんだ?」


「あ、それね」


「メッセージも素敵だったって言ったの。ちゃんと聞こえなかったね」


「ってことはさ、私は、捕まえた金魚? なの?」


「へ? やだ! 私の事が好きって……本当? 心臓がバクバクする」


「男の子に告白されたの初めて」


「本当だよ。

君から好きって言ってくれて、嬉しい。

ありがとう」


「私も、君の事、大好き」


「初めて会った時から、この瞬間まで、どんどん気持ちが大きくなって、もう一人で抱えきれないくらだよ」


「私の……彼氏に、なってくれる?」


//SE ゆっくりうなづく。


//SE こちらに体を向けるちいちゃん。背中に頬を寄せる。


「ありがとう。しばらく、こうしてていい?」


「君の心臓の音を聞いてたいの」


「うん。聞こえる。すごぉくドキドキしてるね。

私も、だよ」


「へ? 私の心臓の音、聞きたい?」


「んと、ボリュームのない胸だけど、いいかな? あまり期待しないで」


//SE 胸元に耳をくっつける。大きくなるドキドキ音。


//SE 髪を撫でる音。髪を耳にかける音。


「こうされるの、好きなんだ?」


「私の声も、心臓の音も、よく聞こえる?」


「そっか。よかった」


「こっちで、一緒に、寝ても、いいかな?」


「ありがとう」


「このまま、朝まで、君の心臓の音を聞いてたい、なんて、わがまま言っちゃってもいい?」


「ありがとう」


//SE 布団にもぐる音。横向きに向き合って寝転がる。胸元に顔をうずめるちいちゃん。



――エピローグ――


そして、僕たちは何度もおやすみと言い合っては、お互いが起きているのを確認して、クスクスと笑いあった。

外が白み始めた頃には、ベランダで一緒に日が昇るのを眺めていた。


来年の夏も、またその次の夏も、飽きる程、ずっと一緒にいたい。

そんな、頬が熱くなるようなメッセージを花火動画に載せて、僕の人生初めての恋は始まった。



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