おわりに

 さて、ここまでお読みくださったということは、この長すぎる限界オタクの感想文をお読みくださったということですね?


 ありがとうございます。本当にありがとうございます。


 「はじめに」の中で、この作品が五つの要素の調和で成立していたことを書きましたが、この感想文を書いている時に、もうひとつ、個人的に六つ目の要素があるのではと思いました。


 それはあの時、同じ配信に居合わせたリスナー諸氏です。


 Spoonはリアルタイムでコメントが流れる仕様になっていて、自分以外の人も配信を聴いていることが分かるのは皆さんご存知の通りです。


 その人たちの反応が同じ画面の中で見えるって、実はすごく嬉しいことだなと思いました。


 私と近い世代の方であれば、ニコニコ動画を見たことがある人は多いと思います。そちらでは、他の動画サイトにはない特徴として、画面にコメントが流れていくというものがあります。


 あれなんてまさに、自分だけじゃなくて、見ている人みんなの反応が見れて面白い要素のひとつなんです。


 では『Con:Fine』ではどうだったでしょうか。みんなで上演を心待ちにし、思ったことをどんどん文字にして、一緒になって登場人物と旅をして、一緒になって翻弄され、一緒になって圧倒される。配信の楽しみ方は人それぞれですが、このライブ感が本作をより楽しいものにさせてくれたのではないかと思いました。


 たかがアプリかも知れません。たかがネットかも知れません。私の感じたことは大袈裟なのかも知れません。


 でも、あの時の配信の盛り上がりは、リスナー諸氏との一体感は、間違いなく心の底から楽しい時間でした。素晴らしい作品と、それを大いに楽しむ鑑賞者。お互いに影響し合わないわけがないと思うのです。




【最後に】

 正直、こんな出過ぎたことをしても良いのか、とても悩みました。終演後、Kagerou氏にDMを送ったのですが、実は血の気が引いて指先まで冷たくなっていました。


 制作に関わった方が書くならともかく、私は完全に外野で、初演版に至っては当日まで存在すら知りませんでした。


 しかし、伝えたいことは、伝えられる時に伝えたいと思い、人様の作品に土足で踏み込んでしまうという失礼を覚悟して、この感想文を書かせていただきました。


 最初にも申し上げた通り、許可してくださったKagerou氏、うるう氏両名には感謝してもしきれません。


 Spoonというアプリの小さな世界の中で、こんな物凄い作品に出会えたこと、それに向き合う人たちがいることを知れたことは、創作者の端の端の端にいる人間として、非常に嬉しい出来事でした。


 そして何より、本作はCASTという形で、何度もまた聴くことができる。また、あの世界に触れられる。


 まさに本と同じです。手を伸ばして、ページをめくりさえすれば何度でも読める。


 それを教えてくれる言葉を、「ストーリー」のページでも取り上げたミヒャエル・エンデの『はてしない物語』から引用して、この感想文の締めと致します。


 半年間、本当にお疲れ様でした。


 本当に、ありがとうございました!






―――






“ファンタージエンへの入口はいくらでもあるんだよ、きみ。そういう魔法の本は、もっともっとある。それに気がつかない人が多いんだ。つまり、そういう本を手にして読む人しだいなんだ。”


――M.エンデ『はてしない物語』より コレアンダー老人

  「ファンタージエン」とは、作中に登場する本の中の別世界のこと。







2023年8月2日  藤野悠人こと、シュガーさん

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『Con:Fine』再演に寄せて 藤野 悠人 @sugar_san010

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