第24話 おばあちゃんは待っていた。
あたしの家が見えてきた。そしてポーチのある階段のドアの前には、なんてこと! おばあちゃんが立っていたのだ。
二十四年前、泣いて帰ったママを迎えてくれたのと同じ場所に、影のないおばあちゃんが立っていた。おばあちゃんは夢なんかじゃなく、この時、この瞬間を神様に見せてもらってたんだ。
二十四年前の朝、おじさんはおじいちゃんと喧嘩をして、この家を出て行った。そして二十四年目の夕暮れに帰ってきて家に入り、おじいちゃんと仲直りをする。神様はおじさんが出ていったあの日の時間を逆回ししてくれてたんだ。
あたしはおじさんの手を引いて玄関のドアの前に立った。おばあちゃんは側で見ている。
「おじさんチャイムを押して。そして中に入って、おじいちゃんにちゃんと謝って。ここから先はおじさんが一人でやらなきゃだめだよ」
おじさんの手を離して脇によけた。おばあちゃんと私に挟まれ、おじさんはチャイムに手を伸ばした。でも、手が震えてなかなか押せないでいる。
「あぁメアリー、メアリー、怖いんだ。父さんが許してくれなかったら、どうしよう。また母さんを悲しませてしまったらどうしよう」
おじさんは、また私をママの名前で呼んだ。心が二十四年前に戻ってるんだ。大きな大人のおじさんの心は、弱かった十七歳のままだった。
まだ日没には間がある。神様、最後の奇跡をください。
おじさんに勇気をあげて!
「おじさん大丈夫だよ、おばあちゃんの祈りの力を信じて。この世に、おばあちゃんの二十四年かけた祈りに勝てるものなんて、あるわけないんだから」
ドアを開ければ、二十四年前のおばあちゃんそっくりのママが、立って迎えてくれるからね。
そしてこういうの
――お帰りなさいダニエル、待ってたのよ――って。
2020年4月22日~2021年5月5日45,000字(2022年9月短縮修正)
【後書き】
この作品もカクヨムで一度は削除した作品です。
けれどもエブリスタで二人の人が読んでくれて、二人ともスターをくれました。
この作品は決してゴミではなかったと確信したのです。
たくさんの人に読んでもらえるのは嬉しい事だけど、たった一人でも最後まで読んでくれる人がいれば、もうそれで十分満足な私です。
おばあちゃんの願い 源公子 @kim-heki13
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