第5話 神野 晴紀 15歳
図書館の椅子に座り、テーブルに置いたスマホの画面を覗き、ため息をついた。
「はぁっ」
私は
いまは生徒会長をやってます。
自慢ではないけれど全教科オール5。そして若干美人。
性格が決して真面目ではないのがあえてよかったのか、
投票は2位に608票差でダントツで生徒会長の座に就いた。
そもそも立候補者は自分を入れて2人。
自分としてはめちゃめちゃ優しく、そして自分より美人かつ同じくらい優秀な
やってもらいたかったのだが。そもそも立候補していなかった。
ちなみに全校生徒は612人。2位には4票しか入っていない。
何故そんなに大差をつけたかって?
この生徒会長決めは誰でも参加できる。
流石に1、2年は立候補者はなかなかいないが、
3年A組の
この人がまさかの成績はオール1、性格は超自己中心的。
4人の取り巻き(さっきの4票はこの人たちの票)以外は常に見下している。
良い点は親が金持ちだというだけ。
絵に描いたような無能である。
気に入らない人がいればすぐに苛める。
栞奈ちゃんやその友達の
勿論取り巻きだって金目当てで仲良くなっている。
そんな人が生徒会長になれる訳も無く。
608対4の惨敗である。
また、本来は2位の人が副生徒会長になるのだが、
先生たちもこれじゃだめだと思ったらしく、栞奈ちゃんが副生徒会長になった。
そしてここまでくれば想像のつく人もいるだろう。
現在の苛めの標的は、そう、私である。
3年女子のグループラインにてびーびーびーびー言ってくる。
勿論金目当てに友達になっている取り巻きたちが
絢と一緒にびーびー言うはずは無く。
特に持ち物を隠されるなんてことも無いので、
それ自体はどーでも良いのだが。
「絢が…ねぇ…ギットギットのベッタベタなんだからさぁ…も~」
絢が何と学校の先生たちに「2位が副生徒会長になれるって聞いたのに何故なれないんだ」と行って来ているのである。
両親には成績や性格のことを話し、すぐに納得してもらったが。
副生徒会長に絢がなってしまいそうなのである。
副生徒会長はかなり大事な役職だし、栞奈ちゃんがなってくれて非常にうれしいのだが。まさかのまさかである。
「どーすればいいんだろーっ」
きっと絢は私が休んだ時に権力行使してやりたい放題にするだろう。
上下関係の厳しい生徒会。書記の人たちは止められないだろう。
「…その解決策、分かりますよ!」
「誰っ⁉」
漆黒の綺麗な眼と髪をしている、近くの小学校の校章のついた帽子をかぶった6年生くらいの女の子が突然姿を現した。
「ああ、びっくりさせちゃってごめんなさい。私は永上愛乃瑚です。」
「いや、別に名前言わなくても…。」
愛乃瑚ちゃんは首をかしげて言った。
「そもそも、副生徒会長を決める選挙をしちゃだめなんですか?」
「ああああああっ!それだぁぁっ!………あ」
「あのぉ…、図書館内ではあまり大声を出さないようにお願いします…。」
遠慮したような雰囲気で貸し出しカウンターの司書さんが言った。
「っ!ごめんなさいっ!」
「もー、気を付けてくださいよっ。…ぃたっ!」
生意気な小学生の頭を軽くはたく。
「あんたが突然めっちゃ良い提案してきたから叫んじゃったんだよ!」
「ごめんなさぁーい。」
「…にしても名案。あ!帰らないとだ。愛乃瑚ちゃん、バイバイ!」
「さよーならーっ」
後日。
『遥山栞奈さん、副生徒会長正式就任おめでとうございます!』
『あ、ありがとうございます!』
大きな拍手の中、体育館で栞奈ちゃんの副生徒会長正式就任を祝った。
「栞奈ちゃん!良かったね。一緒に頑張ろう!」
「うん!」
「栞奈ぁーっ!頑張ったじゃーん。」
「頑張ったよ~っ。これからも頑張ります!」
「遥山、就任オメデト―。」
「ありがとう!」
絢は苦虫を嚙み潰したようなような顔をしている。
なんてったって、取り巻きは絢がお金をあげないと気付いた瞬間あっという間に
離れていき、栞奈が自分がもうすぐ就けそうだった座に就いて、皆に祝われているのだから。
「もーっ!ヤダっ!」
そう言うと、ダン、と足を踏み鳴らし体育館を出ていった。
それ以降、人をいじめることは無くなった。
そんな絢を眺めながら思った。
「ガス抜きか。やっぱあの子頭良いな。」
愛乃瑚が生意気だけれど憎めない笑みを浮かべているのが見えたような気がした。
図書館の不思議なあの子 猫原未瑚 @MikoMikko
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