この名前はなんて読むんだ?
夕日ゆうや
わたしの名は……
チョークの粉を舞わせながら、黒板に書く教師。
ぶっきら棒で少し怖い顔をしている。
その先生を前にみんな静かに座っている。
そんな静寂が少し嫌いだ。
みんなが静まりかえった空気は、お婆ちゃんが死んだときに似ている。
だから嫌だ。
静かになるのが怖い。
ふと近くの男子を見る。
顔がいいわけでも、スポーツができるわけでもない。勉強も良くないらしい。
でも真面目で、物腰柔らかで、可愛い顔をしている。
隣の席の男子とは違って見えた。
何故かその子には人を惹きつける魅力があった。
誰も彼もが好きになる――そんなのないと思っていた。でもその子は違った。
純粋で優しい子。
どこまでも素直な子。
前に明らかに下手な咳払いをすると思ったけど、あれでごまかせると思っていたらしい。
そんな彼のことをいつの間にか目で追っていた。
わたしの初恋。ドキドキしてしまう相手。
「ん。この名前はなんて読むんだ?」
チョークの粉が陽光を浴びてキラキラと光る。
心結。
「あ……」
「ここみ、……ちゃんだよね?」
ドキッとした。
好きだった子に突然名前を呼ばれたのだ。誰だって心臓が跳ねてしまう。
嬉しい。
わたしの名前を覚えてくれていたのも。
自分を知っていたことも。
全然関係ないと思っていたけど、彼は違うのかもしれない。
この授業が終わったあとが楽しみになった。
明日、また学校に来ようと思った。
「
ぶっきら棒な先生にも耐えることができた。
この名前はなんて読むんだ? 夕日ゆうや @PT03wing
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます