伊都国の女王さまの糸

健野屋文乃(たけのやふみの)

技術準備室の秘密(⁎˃ᴗ˂⁎)

「その昔、伊都国の女王さまが、この国の女の子を助けるために、国中に張り巡らせた糸があるの『伊都国の女王さま、助けて』と願いながら、糸を引っ張れば、女王さまが仕掛けた仕組みが作動して、この国の女の子を助けてくれるの」


と、教えてくれたのは、隣のクラスの幼馴染の少女だった。


『親友』


それを確かめたことはないけど、私は彼女の事をそう思っている。

彼女は、思いつめた表情で、私を見つめていた。

色々心配をかけっぱなしだ。


ダメな私でいつもごめんね。


その糸は、技術準備室の壊れた壁の奥にあった。


1000年以上前の伊都国の女王さまの【糸】が、築数十年の中学の校舎に何であるのか?


それをなぜ幼馴染の少女が知っているのか?


等、多々疑問点があったが、クラスでいじめに遭っている今の現状では、そんな事、些細な事の様に思えた。


私は壁の奥を覗いた。

壁の中を張り巡らされているらしい糸は、ピーンと張っていた


「引っ張ってみる?」


幼馴染は言った。

私は幼馴染の目を見つめ頷いた。


「伊都国の女王さま、助けて・・いじめから私を助けて」


と呟き、壁の奥にある凧糸の様に頑丈な糸を引っ張った。



グイッと!


「・・・・」

「・・・・」



何も起こる気配はない。



しかし、数秒後・・・


いじめの主犯の担任教師の声が、グランドから聞こえた。


私たちは2階の窓へと走った。


窓から見下ろすと、担任の教師が


「きったね~」


と叫んでいた。



よーく見ると鳥の糞が、担任の教師に降り注いでいた。

クラスの男子とサッカーを楽しんでいる最中の災難だったらしい。


頼りがいのある兄貴の様な担任の教師が、生徒とサッカーを楽しんでる。

って言う 絵 を鳥の糞が台無しにした。


鳥の糞によって、教師から爽やかな表情は消え、一瞬だけ、私を苛める時に見せる陰険な顔が現れた。





幼馴染は

「これが伊都国の超科学の威力だよ!」

と絶賛した。


どういうメカニズムかは解らないけど、もしかすると、本当に糸を引いたから?


私たちは、ニヤリとした。


そして再び、壁の奥の糸を引いてみた。


急いで窓の外を見ると、担任教師の姿はなく、担任教師がいた場所には、人が一人入れるくらいの穴が開いていた。


どうやら担任教師が落ちたらしく、グランドは大騒ぎになっていた。



担任教師は、夜半過ぎに助け出された。

穴の奥で何があったのか解らないが、まるで別人の様になって出てきたらしい。

もしかしたら本当に別の人に変ったのかも知れない。



私たちは放課後、技術準備室にあった道具を使い、壁を封鎖した。

なんとなく、伊都国の女王さまに『終わったら塞いで』と言われた様な気がして。



これが伊都国の超科学の威力なのかどうかは、未だ確認が取れていない。





おしまい

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伊都国の女王さまの糸 健野屋文乃(たけのやふみの) @ituki-siso

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