タイトルが中身を150%表している

「老人ホームの姫(ポジションにいる老爺)」。なんだそりゃと思ったが、粗筋の時点でもうズルいくらい面白い。
それはつまり、この題材を使えば多少心得のある者ならば、一定の面白さが保証される――すなわち、1テンプレート、新ジャンルを発明したと言っても過言ではない。

だが、この作品の後に「老人ホームの姫」をやろうとすることは、大変な苦労を伴うだろう。なぜなら、本作品はこの粗筋とタイトルの力を1.5倍マシで引き出した怪作だからだ!

当初、私は連打される「~た」の文体をボケーッとアホ面で眺めていた。手を止めなかったのたは、粗筋の面白さと、時おり入るツッコミ所満点のジョークに引っ張られたからだ。
そして気がつけば、この小説がおちゃらけただけのコメディではない、「本物」だと悟る。

老人ホームの姫・優希がいかにしてそのポジションに君臨しているかという手練手管、ホームの面々の奥深い人間性。これらがわずかな分量で過不足なく描写され、「これは優希に落ちるわ……」と圧倒的姫性に打ちのめされる。

そして「自分になびかない新入りに姫は猛烈アタック」のターンに入り……ここから始まる怒涛の展開はあまりにも予想不可能だ。だが伏線は入念に張られているのだから、もはや夢中で文字を追うしかない。息をつく暇もなく。

予想外に予想外を重ねた果ての決着は、この作者はどこまでも、一滴たりもお茶を濁す気がないと再三思い知らされるものだった。
振り返ってみれば、作品が持つあらゆる要素を完全に使いきったエンディング。もはや何を言うにも野暮……この粗筋に興味を持たれた方は、こんなレビューより本編を一刻も早くお読みください!!!

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