2080年でも、少女たちの恋はここに瞬いている。

短編を書く上で『テーマ』というのは便利なガイドだ。それは人物画を描く際のアタリにも似ている。すべてのシーンがテーマに沿った描かれ方をしていれば、物語は非常に読みやすいものとなる。たとえ突飛で荒々しい展開であっても、それがテーマに沿っていれば浮いた印象を与えることは少ない。

本作は、地球から父の待つ星へ向かう逃避行モノである。それでいて、骨子の通ったSFモノである。このお話を丁寧にやれば、同じ展開で少なくとも4万字はかかるだろう。(個人の意見です!)
それなのに一本の短編として高い完成度を誇っているのは、徐々に東京から遠ざかってゆくというその表現が、バッチリ行間を埋める役割を果たしているからだ。

SFは特に、定めたルールの中で描ける自由度が高い物語である。そこを、読者の気持ちを途切れさせない仕組みとして、うまくテーマを活かしているのが、素晴らしかった。
ここではないどこかへと向かった距離。そしてかつて親しかった幼馴染みと縮まってゆく距離。このふたつの対比構造を思いついた時点でもう勝ちじゃない? と思えるようなお話でした。

みんなにも読んでほしい!


(カクヨム公式自主企画「百合小説」/文=みかみてれん)

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