魔法のある世界

「おはようございます、お嬢様。今日はお天気がとてもよろしいですよ。」

「ん”うぅ〜 おはようエリーゼ。」


眠たい目を擦りながら、ベッドから起き上がる。

私の専属侍女へと昇格したエリーゼが言った通り、窓の外からは晴天が顔をのぞかせている。



皆様にご報告です。

私、セレスティア・ジェラルド、3歳になりました!




「湯浴みの準備が整うまで、少々お待ちください。」

「わかったわ。」




この3年間で知り得た情報、、、


まず、わがジェラルド家は、お金儲け、、、商業を生業とする、このアルミュージュ王国一番と言っても過言ではない大金持ち。

爵位は5爵位のうち、一番高い「公爵」を賜っており、お父様はジェラルド商会の会長兼魔法局の魔導具管理課の管理長、お母様はジェラルド公爵領領主というお仕事をなさっている。


この国では「王宮」「魔法局」「教会」という3つの勢力が存在している。


まず王宮、名の通り王族、貴族による法律の立案や制定、税金などの大まかな政が行われる。


次にお父様の務める魔法局、こちらもその名の通り魔法に関する事柄を取り扱う。「魔法警備隊課」「魔法道具管理課」「魔法動植物管理課」「魔法学会・教育課」

の4つの課に分かれ、それぞれに関する事案を取り扱っている。


最後に3つ目、教会。


まず、この世界には魔法というものが存在する。しかしそれは人間の力ではなく、”精霊”からの与えられたもの、恩恵ギフトと呼ばれるものである、というのがここの一般常識であり、教会の主張なのだ。

存在する精霊は7体。炎の精霊イグニース、水の精霊セルウィーロ、風の精霊タービュランス、大地の精霊エルデ、光の精霊エヴェリーナ、闇の精霊トニトルス。

そしてこれらを長とする、万物に宿る妖精の力を借りて、自然を動かすことを”魔法”と呼ぶのだ。


そして、その精霊を崇め称え、魔法使いへの恩恵ギフトという属性や、加護という特別な祝福の付与の儀式、環境を守る慈善活動を執り行うのが主な役目である。




「セレスティア様、お召し物を失礼します。」

もう随分と手慣れた様子で私の身ぐるみを手際よく剥いでいく。ゆったりとバスタブに浸かりながら、頭皮のマッサージまでしてもらって朝からいい気分だ。はじめの頃は萎縮してしまっていたが、慣れてしまえばえらく快適なのだ。





だが、この世界は魔法があるかわり、、、と言っては何だが、文明がさほど発展していない。移動は馬車だし、洗濯は手作業。ガスコンロもなくて水道でさえ王都の外では満足に使えない。

魔法=決められたコードでしか発動できない

という認識がされており、新たな魔法や生活に使えるような魔法の開発をしようなんて人はいない。


(これじゃあ乙女の儀や成人の儀を行えない平民の子たちは不便よね。)


一般に6歳になると、無事に育つことを祝う「乙女の儀」という聖母神から祝福される儀式(七五三みたいなもの)が行われ、ステッキと上位の魔晶石、恩恵ギフトの内容が授けられる。


その結果によって自分の属性にあった道に進んだり、進路を変えたり、その属性の魔法の使い方を学ぶのだ。

此処まで来てやっと魔法が使える。


儀式までは自分の属性の見当がつかないので、魔法は使えない。

だから皆乙女の儀までになんとか属性を増やそうと、教会に通いまくったり、高値の魔晶石を買って杖に加工したりするのだけれど、、、


(なぁんか引っかかるのよねぇ、、、)


ステッキを使って魔法の呪文のような”コード”を編み込み、それと精霊の力を合わせて魔法を発動する。発動のためにはどうやら上位の魔晶石が必要らしい。


すなわち、魔法を使うには

①精霊や妖精に祈りを捧げ、乙女の儀で属性を知ること

②力を使うためのステッキが必要

③コードを覚えること

が絶対必要なのだ。面倒くさい。


しかし、私はいくつか疑問に思っていることがある。



「お嬢様、のぼせますよ?」

「あぁ、もうそんなに入っていたのね。ボーッとしちゃってた。」


確かに浴槽から上がると少しくらっとする。

エリーゼに冷たい飲み物を持ってきてもらおう。



一般的な恩恵ギフトは祈りの真剣さや、精霊や妖精との触れ合いで増えると言われているが、そうなると、属性の数については理解できても、同じ恩恵ギフトを授けられたのに使える魔法の質に差が出る理由が納得できない。


それに「精霊の力を借りる」ことが魔法ならば、使うのは自身の力ではなく妖精や精霊のもののはず。なのに戦闘に出た魔法師や、魔法を使ったあとの者は疲労したり、ダメージを負うなど、自身に負担がかかっている。しかも、、、ってこれじゃきりがないわ。


(そもそも誰が祈りの真剣度合いなんて見極めるのよ、、、)


証拠があるなら是非ともデータの公開を要求したい。





エリーゼが氷の入った水とを持ってきてくれた。

「ありがとう。」


キンキンに冷えた水を口に含むと、氷が一緒に入ってきた。

頬袋がジンジンする。

前世だったらバリボリ噛んでしまえるのに、、、

公爵家のお嬢様は、飲食の途中で音を立てたらだめなのよ。

こういうときばかりは、3歳時に何求めてんのよって思っちゃうよね。




私が考えた理屈はこうだ。

我々人間の中には魔力エネルギーが存在しているが、それは形のない力に過ぎない。その力を体外に放出し、形を変えたりするために必要なのがコードプログラムなのだ。

そのエネルギーを流したり止めたりする魔晶石スイッチは流れる魔力エネルギーの量によって耐久性が変わってくるので、莫大な魔力エネルギーを消費する魔法なら、上位の魔晶石が必要になるのだろう。


しかし、何処までかは分からないが、属性の話も何らかの形で現れるのだろう。精霊や妖精といった存在はたしかに居る。その辺に。


(すごい魔法が作れる説明書があっても、電池が足りなきゃ意味ないわ)


この仮説が正しいのなら、私がやらなくてはいけないのは、『魔力の増加』と『加護について学ぶこと』よね。



ん?なんでそんなに張り切ってるのかって?


なぜならここ、、、アルミュージュが魔法実力至上主義の国家であり、当然私達、上に立つものである貴族は、高度な魔法を使えるようにならなくてはいけない。




それに、、、






だってワクワクするじゃない、未知のエネルギーと現象なのよ!

早く解明しなきゃだめよね?









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魔法はファンタジーじゃない、科学だ 〜科学で解明できないものは無いはずなので、攻略を試みようと思います〜 *. 時雨 ☂*・ @saki0515

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