母の愛
お兄様方とさよならをしたと思ったら、また何処かへ向かっているようだ。
部屋から部屋までの移動に時間がかかり過ぎだと思うの。もうちょっとコンパクトにしたら良いのに、、、
広さもステータスの一環ってやつ?
「ステラ、セレスティアの様子をどう思う?可能なら、今日はマリアにも顔を見せたいのだが。」
「えぇ、随分と落ち着いていらっしゃいまし、可能だと思いますわ。それに、、、クロード坊っちゃんに抱かれるのは今日が初めてにも関わらず、驚かれる素振りもありません。なんというか、落ち着きすぎといいますか、、、」
「、、、あぁ、肝が座っている赤子だな。しかし坊っちゃんはよしてくれ。」
確かにとでも言うように、面白がるような目つきをお父様に向けられる。
そりゃあ中身は根暗な研究室の妖怪ですから。コミュ障ですよ。
お父様の肩から少し顔を出す。
それにしてもこのステラとかいうメイド長、人のことをよく見てる。仕事もできるし今の会話から察するにお父様の幼少期から使えているベテラン、、、
(欲しいなぁ、、、)
間違いなくSR級である。
彼女を見つめていたのに気づいたのだろう。ニコリと控えめな笑みを向けられた。
「マリア、入るぞ?」
ノックしながらお父様がそう発すると、鈴の鳴るような美しい声が部屋から聞こえた。
「どうぞ。」
お父様の腕に抱き抱えられながら部屋へと入る。ステラは部屋には入ってこないみたいだ。
「あぁ、私のかわいいティア。」
早くこちらへ、とでも言いたげな、うっとりとした表情で両手を差し出してくる。
ベットに腰掛ける彼女、、、お母様は、白い肌と透き通るような銀の御髪も相まって、消えてしまいそうな、幻想的な美しさを纏っている。水晶や雪の精霊が存在するのなら、こんな感じなのだろうか。
父上から母上の膝の上へと受け渡される。
「ごめんなさいねかまってあげられなくて。まだお乳もあげられない。貴女の母はもう少し休みが必要なようです。」
無理もない。お産後まもない母親の体は、とても弱くて疲労困憊なのだ。今は是非ともゆっくり休んでいただきたい。愛おしそうに抱きしめて、頭を撫でてくれる手と体温が気持ちよくて、ついついウトウトしてしまう。
「今日は夕方にかけて冷えるようだ。君も暖かくして休んだほうが良い。」
「そうね、、、寂しいけど一旦お別れよ、ティア。愛しているわ」
名残惜しそうに頬を撫でられて、大げさだなぁと思いつつも、物足りないような、寂しい気持ちに駆られて、眉が下がってしまう。
同じ顔をしているであろう私とお母様を見たお父様が、やれやれと言った様子で、もう一度お母様の元へ私を預けてくれた。
まだまだ分からないことだらけで、成すべきこともよく分からないけれど、これだけは言えるわ。
優しい両親に友好的な兄弟。
私の今世の親ガチャは、大当たりだったようです。
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