魔法はファンタジーじゃない、科学だ 〜科学で解明できないものは無いはずなので、攻略を試みようと思います〜

*. 時雨 ☂*・

転生技術者の目覚め





「お目覚めですか?お嬢様」


温かな感触に目を覚ますと、目の前に人の良さそうな顔の女性の顔があった。

お嬢様、、、?

うちはあいにくお嬢様呼びされるような名家でも、富豪でもないはずなんだけど、、、

、、、いやいやおかしいおかしい。どうして女の人に抱き抱えられてんのよ!

ついに幻覚まで来たか、、、


っていうか、どのぐらい寝てた?期限の厳しい案件だから、一分一秒惜しいのに、、、

まだプログラムし終わっていないファイルは?データの抜き取り、、、最悪削除はされていない?

スペアのデータは最新のセーブまで取ってたっけ?


「っ、うぁぅ」


!?

何なのこの声、弱々しくて上手く呂律も回らない。

新手の嫌がらせ?でもしびれ薬の類じゃない、、、


(なんなのよ、、、もうっ!)


とにかく状況の確認をしなきゃ。

まずは中川ちゃん助手ちゃんを呼んで、、、


周りを見渡そうと身を乗り出したところで、つい先刻まで仮眠していた研究室とは違った床が目に入る。経費削減の影響をモロに受けた我が研究室では、高価な技術道具を維持するために、極限までありとあらゆる倹約を申し付けられていた。


当然大理石のツルツルピカピカに磨かれた床 on 刺繍の施されたカーペットなんかとご対面するはずがないのである。


「ぎぁうぅ、、、?」


何なのよ此処、、、何処なわけ?

予想していなかった自体にパニクってフリーズする。


「ひゃぁ!お嬢様!?」


身を乗り出してしまったせいで私を落としかけた女性が奇声を発した。


「エリーゼ!!」


大声を出しながら中年の女性が大股で近寄ってくる


「お嬢様に何かあったのですか!?くれぐれも赤子であるからと言って失礼の内容にしなさい!身分の差を分かっていらっしゃるの!?」


エリーゼ、、、?

なんともまぁヨーロッパ風のお名前、、、











ん?







私=お嬢様 なのよね?




で、さっきこの人が、、、


「お嬢様に何かあったのですか!?くれぐれも赤子であるからと言って失礼の内容にしなさい!身分の差を分かっていらっしゃるの!?」



と、、、




ということは






お嬢様=赤子



であり




私=お嬢様=赤子 "new"



、、、










ゔえ”ぇ”ぇ”ぇ”ぇぇぇぇぇ〜〜〜私、今赤ちゃんになってるってこと!?」


思わず上げた叫び声を聞きつけて、たくさんのメイドさん(女中の方?)が慌ただしく世話を焼いてくれたのだが、これがまたすごいスケールである。



エリーゼと呼ばれたメイドの腕からベビーベッドへと降ろされると、足の部分がゆりかごになっていたようで、前後に揺さぶられ、先程の中年のメイドさんの「アレとアレとアレを!」という号令によって、これまたすごい装飾の付いたぬいぐるみや音のなる玩具を総出で持って来てくれた上に


「お嬢様〜」

「お嬢様〜!」


と必死にご機嫌取りをしてくれるのである。


たかが赤子の呻きの一つや二つ、スルーしてもいいと思うんだけど、、、

毎回これでは流石に可愛そうだし、申し訳なくて泣く気も失せるというもの。


しかしまぁ赤子の体とは不思議にできていて

状況整理が追いつかなくなったせいなのか、体の疲労のせいか、ニコリともせずそのまま寝落ちしたのであった。













次に目を覚ましたのは空腹によるもののようだ。

さっきからお腹がぐるぐる唸っている。



(、、、っていうか、私なんで赤ちゃんなの?)




激動の末すっかり忘れてしまっていたが、どうゆうことやら私は今、知り合いでもなんでも無い、縁もゆかりも無いお家の赤ん坊になっているのだ。


そうだ、さっきは失敗したけど、情報収集しなきゃ。

一番危険なのは何が危険かもわからないまま行動することだわ!



「お嬢様?お目覚めでしたの、、、?」


不思議そうな顔をした、先程の中年メイドさんがワゴンを押しながら部屋に入ってきた。



、、、そっか、大体赤ちゃんって泣き始めてから起きてたことに気づくよね。

泣きもせずポケーっとしてる赤ん坊には面食らうか、気をつけよう。


そばにワゴンが進んで来ると、遮蔽物が何もなかったことに気づく。

今更だけど、窓とベビーベットだけの部屋って、、、

お金持ちのすることってよくわからないなぁ。


「御夕食をお持ちしましたよ。」


そう言って部屋の隅に控えていた別のメイドを呼ぶと、抱き上げられて哺乳瓶を手渡される。


普通の赤ん坊は言ってることわかんないんだから、いちいち教えてくれなくてもいいのに、、、

握らされた哺乳瓶に目をやる。

うん、普通の哺乳瓶だしガラスに曇りもない。色も正常、気体の発生している気配もない。飲んでも良さそうだ。

それに全然粉が底に沈んでない。作る人上手だなぁ。


「お嬢様、、、?」


飲まない私を不思議に思ったのか、少し心配げな表情で見つめられる。

慌てて飲むとなんとも言えない生ぬるいミルクが口の中に広がる。温度が絶妙すぎて気持ち悪い。

急いで嚥下すると、胸が苦しくなってきた。


「あらあら、そんなに急がなくても逃げたりしませんよ?」


少し笑われながら、中年メイドの肩に顎を乗せるような体制へと抱きかえられると、背中を軽く叩かれた。


「げっ、ゔぅ」


突然のことに対応できず、そのまま噯気を漏らすと


「よくできましたね〜 さすがセレスティア様ですわ!」


と冗談なのか本気なのかよくわからないテンションで褒められた。

、、、普通に恥ずかしい。



「メイド長!」


小走りで駆けてきたのは、まだ見たことのなかった若いメイドさん。


「当主様がお帰りになられますので、ご一緒に」

「えぇ、わかりました。」


当主、、、 ということは、豪華なお家や使用人の数を見るなり、やっぱり何処かの富豪かなにかなのね。

当主様って男性かしら?それならお父上様に当たる人?

いや、今の時代よ?別に女性の当主様がいてもおかしくないし、、、



そうこうしているうちに大きな扉の前のホールのような開けた場所へ来た。


来る途中の廊下までレッドカーペット、、、どんだけよ


少し外から音がする。

しばらくして両開きのドアが開いた。


『お帰りなさいませ!!』


使用人たちが一斉に頭を下げる。

一糸乱れぬ揃った動き、角度に此処は軍隊か?と突っ込みたくなる。


「ただいま」


両サイドに執事服とは違った洋服を着た青年を連れたって歩く男性。

歳は30代、、、いやアラサー?


”いけめん”という存在との関わりがなかった私でも、いわゆるそれに彼の方が含まれるであろうということはわかった。

白い陶器肌にアーモンドの形をした翡翠の目。後ろでゆるく結ってある金髪とまでは行かないミルキーイエローの御髪は、艶を帯びており、長身であるにも関わらず細身な体からは、何処と無く知的な雰囲気を醸し出している。


「ティア」


そう呼ばれて顔をあげると、”当主様”がこちらに歩み寄ってきた。


「やっとお前を家族に会わせられる。公爵家へようこそ、セレスティア」






公爵家、、、こうしゃくけ、、、


確か中世ヨーロッパの5爵位は


”公爵”←イチバンウエ!

侯爵

伯爵

子爵

男爵






なるほど、もう一回寝よう








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