番外編 梅酒と〇〇料理を楽しもう!




「ジゼル様、今日はなんかご機嫌ですね? 何かあるんですか?」


 仕事に行く前、リーリエからそう声をかけられた。私は「ふっふっふっ」と不敵な笑みを浮かべた。


「実はね……」

「はい!」

「半年くらいかけて作ったお酒を今日解禁しようと思ってるの!」

「おぉー!」


 きゃーと自分で自分の顔を覆う。


 実は、半年前ほど前に青梅を露店で見つけることができた。私はすぐにそれを購入して、梅酒作りに挑戦したのである。


 その時のお酒がそろそろ飲み頃なので、今日の晩酌で解禁しようと決めていたのだ。


「ズバリ、なんて言うお酒なんですか?」

「梅酒っていうお酒だよ」

「うめしゅですか!……うめしゅって、何ですか?」


 リーリエが首を傾げる。この国には梅は浸透してないからね。当たり前の反応だ。


「梅っていう植物の実を使って作ったお酒のことかな。甘くてさっぱりしてるんだよ」

「おお、美味しそうですね!」

「帰ってきたら、リーリエにもお裾分けするね」

「やった〜! 楽しみにしてます!」


 元気に「いってらっしゃい〜」と見送ってくれたリーリエに手を振りつつ、馬車に乗る。


 さて。梅酒解禁を決めたはいいものの、本日のおつまみはまだ決めていない。

 向かう領地に着くまでの馬車の中で、晩酌のおつまみの案を考える。


 梅酒に合うのは、ナッツ系とかピリ辛系かな。作るとしたら、ピリ辛なものの方が手応えがいいかな〜。


 ちょうど、この間のお礼にって港町から新鮮なエビが届けられたし、エビチリとかいいかもしれない。


 そうだ。せっかくエビチリを作るなら……。




⭐︎⭐︎⭐︎




 仕事が無事に終わり、帰宅。私は晩酌部屋に入ってすぐに公爵様に話しかけた。


「公爵様! 今日は新しいお酒を作ったので、飲みましょう!」

「酒を作ったのか? 相変わらずジゼルはすごいな」

「ありがとうございます。公爵様も気に入ると思うので、さっそく飲みましょう!」


 梅酒を保管していた瓶を開けると、ふわりと梅の香りが鼻腔をくすぐった。

 ストレートやロックで飲むのもアリだけど、公爵様が酔いすぎないように、今回は水割りにする。


「乾杯〜」

「乾杯」


 口当たりが爽やかな梅酒を飲むと、すぐに口の中が梅の甘さに包まれた。


「甘い酒だな。さっぱりしてるし、飲みやすい」

「ですよね。いくらでも飲めちゃいそうです」

「飲み過ぎには注意しないとな」

「本当にそうですね」


 本当に、公爵様は気をつけた方がいい。ジュースみたいな感覚で飲めちゃうから、気をつけなきゃね。


「ところで、今日のつまみは、また不思議な料理だな?」

「はい。今日のおつまみは、中華料理です」

「ちゅうか?」

「あっ、いえ。なんでもありません」


 前世の国名を出してしまった。慌てて誤魔化しつつ、おつまみに目を向ける。

 今日のおつまみには、中華料理を2品用意した。今回は、エビチリと麻婆豆腐である。


 ピリ辛な中華料理って、甘酸っぱい梅酒との相性がバツグンなんだよね。


 ということで、早速、おつまみを食べていく。


 まずは、エビチリだ。噛んだ瞬間のエビのプリプリな食感がたまらない。自作した豆板醤トウバンジャンを使用したピリ辛なソースがエビに絡んで、この辛さがたまらなく美味しい。

 麻婆豆腐は、こちらも豆板醤を使用したピリ辛な味付けになっていて、豆腐とひき肉の食べ応えが抜群。


 料理の辛さに、少しずつ汗が滲んでいく。


 辛いものを食べて口の中がヒリついてきたところで、梅酒を飲む。


「うっまぁ〜」


 エビチリや麻婆豆腐の辛さが、爽やかで甘酸っぱい梅酒と最高に合うのだ。


「辛いな。舌がヒリヒリする」

「最初はびっくりしますよね。食べ過ぎには注意して下さい」

「ああ。だけどこの辛さが癖になるな……っ」


 公爵様の言う通り、この辛さに食欲をそそられてしまい、食べる手が止まらなくなってしまうのだ。

 再び梅酒を飲めば、口の中がリセットされるので、また食べてしまう。まさに永久機関なのである……!


「それにしても、新しい酒を作るなんて、よく思いつくな。俺は絶対に出来ないから、ジゼルは本当にすごい」

「いやぁ、あはは……」


 そこまでべた褒めされてしまうと、むず痒い。


「それを言うなら、私だって公爵当主の仕事は出来ませんよ。公爵様の方がすごいです」

「俺は幼少期からそういう教育を受けてるんだから、当たり前だろう」

「その教育を受けてる過程と努力も含めて、すごいんですよ」

「それならジゼルの酒にかける情熱の方が尊敬できるな」

「うーん。それなら、お互いすごいってことで」


 褒め合い合戦になってしまったので、そう結論を出した。


「とはいえ……最終的な目標は、お米のお酒を見つける、もしくは作ることなので、まだまだこれからです」

「前に言ってたな。俺も新しい酒を飲みたいし、いくらでもサポートする。何かあったら言ってくれ」

「はい!」


 これからも美味しいおつまみとお酒を追求していきたい。その先で公爵様と共に晩酌するのがすごく楽しみだ。






―――――――――――――――――――――

いつもお読み下さり、ありがとうございます。


本日で毎週の更新はお休みさせていただきます。半年以上もの間、連載にお付き合いいただき、本当にありがとうございました!

連載中はたくさんの方に応援いただき、読者の皆さまに励ましていただくことが多かったです。改めて本当にありがとうございました。


とはいえ、毎週の更新をお休みするだけで、また投稿させていただくと思います。その時は2人の晩酌スローライフにお付き合いいただけると幸いです。

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