SATAN・#14

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 それは、突然の事だった。


 今朝けさ、クラウスが、家を去ると言い出したのだ。

 その理由はどうやら、転勤らしい。

 

 これからは、アラティウス家の本家である『皇宮』に従者としてつかえるという。

 つまり、クラウスにとっての出世なのだ。


 しかし、私的には本家に仕えようと、分家に仕えようと、どちらでも同じ事である様に感じる。

 本家に仕えるから凄いとか、分家に支えているから二流とか、私の感覚ではそんな事は一切無いのだ。

 クラウスは大事な家族だ。

 その家族を、本家の人間達が奪っている様なモノだ。


 けれど、クラウスの功績が本家の人間に讃えられたのであれば、クラウスにとっては喜ばしい事なのだ。


 だから、私も応援してあげたい気持ちは確かにある。

 クラウスと別れるのは辛いけど、それでも前向きにクラウスの背中を押してあげたい。

 

 それだというのに……。


 何故なぜ、今日の今日まで転勤の事を私に教えてくれなかったのか。

 クラウスは、その事について一体どう思ってるのだろうか。

 私なんてまだ子供だから、言う必要なんて無いと思われてたのだろうか……。


 私はクラウスが大好きだった。

 本当の祖父の様だと何時いつも感じていた。

 そんな大事な事、私に一番最初に言って欲しかった。


 悔しい……。

 寂しい……。


 お別れ会も出来ない。

 プレゼントだって用意出来てない。

 どうして何も言ってくれなかったの、クラウス……。


 現在、時刻は9時30分──。

 平和だと思っていたこの日曜日の朝、クラウスは突然、私の部屋を訪れた。

 

 出迎えると、クラウスは黒いハットを被り、キャリーバックと鞄を持って、真摯しんしな顔付きでそこに佇んでいたのだ。


 格好と荷物を見て、最初は旅行でも行くのかと思った。

 だから私は少し欠伸あくびをしながら『どうしたの?』って呑気な反応した。


 すると突然、別れの挨拶をしてきた。

 意味が分からなかった……。

 

 そして今にいたる──。

 私はクラウスに、この何処にも行き場のない悲しい感情をうったえていた。


「クラウス、私の事ずっとナメてたの……?」

「その様な事は決してございません、お嬢様」

「じゃぁ、なんなのよ!!私、こんなにクラウスの事が大事なのに。当日まで黙ってるだなんて、私……ホントに辛い……」


 裏切られた……。

 そう言いたかった。


 余りにも無慈悲すぎる。

 何年も一緒に過ごした大事な家族ともあろう私に、何も言ってくれなかったのだから。


 呆れてはいない。

 ただ悲しいのだ。

 

「お嬢様……」

「私に構ってくれたのも、ゲームを教えてくれたのも全部、ただのおりだったってこと?仕事であやしてただけって事!?」

「そんなは事はございません……」

「そうとしか思えない態度じゃない!!」


 逆にどんな理由があれば、成立するの。

 考えても考えても、大事な人に話さない理由なんて思い付かない。

 臨時で決まった事だったとしても、せめて昨日までに言って欲しかった。

 何故……今なの?

 何故……別れ際なの?

 私は、クラウスにとって厄介者なの?


「クラウスは……私の事……嫌いなの?」


 言葉を発すると、虚しさに耐えきれなくなり目から溢れるしずくを両手で覆い隠す。


「嫌いな訳がございません……お嬢様」

「うるさい!!私の事ずっと厄介者だと思ってたんだ!!もう、勝手にすればいい!!何処どこへでも……行けばいい……」


 知らずと身体が崩れて落ちていた。

 全てが嫌になる。

  

「お嬢様……。このクラウス、今日という日が一生の不覚でございます。お嬢様をこんなにも傷付けてしまいました。今はとても、お嬢様に顔向けできません……」


 私はひざまずいたまま涙を垂らしていた。

 両手で顔を覆い、目の前の現実を拒絶する。


「ですがお嬢様……。最後に一言だけこの軟弱者の言葉を聞いて頂く事はできますか?」


 暗闇の中、クラウスの弁解の声が上がる。


「……なに?」


 私は顔を覆ったまま聞き返した。


「私はこの家で一番お嬢様が大切でした……。それではお嬢様、お元気で」


 暗闇の中、自分から遠ざかる足音が聞こえた。


「えっ……」


 すると、重かったはずの膝は持ち上がり、暗闇をいて、離れ行くその背中に抱きついた。


「……待ってクラウス!!」


 衝動的だった。

 コレが私の本当の答えだった──。


 クラウスと離れたくない。

 一緒に居たい。

 もう、どうにも成らないなら、せめて最後に話したい。


 クラウスは私の大事な家族だから──。


 クラウスは立ち止まり、ゆっくりと振り返る。


「お嬢様……」

「愛してる、クラウス……。貴方はずっと、私の光だった。酷いこと言ってごめんなさい……。本当はクラウスの事大好きだから」


 クラウスは私を両手で優しく私を包み込んでくれる。


「お嬢様……。このクラウス、今日という日がこの人生で一番幸せです」


 上を見上げ、クラウスの表情を観る。

 暗雲をはらう太陽の様な、優しい笑顔だった。


 やはり、私の考え過ぎだった……。

 クラウスが私を嫌いだったなんて。


 きっと、何か事情があったに違いない。

 いや、もうそんな事はどうだっていい。

 

 今は大事な家族の門出かどでを温かく見守ってあげたい。

 私は人でありたい。

 温かい『人』でいたいのだ。


「忘れないでクラウス。貴方は何処へ行っても私の家族。何処へ行ってもこの絆は繋がってる……。そうだ」


 私は首に下げた十字のネックレスを外す。


「クラウス、ちょっと屈んで?」


 クラウスは、不思議そうに私を見た後、立膝たてひざを突いて屈んでくれた。

 私は、ネックレスをクラウスの首に付ける。


「うん。似合ってるわ」


 付けてあげた十字形のネックレスは、クラウスにとても似合っていた。


「そんな……頂けませんお嬢様。この様な大層なモノは」

「クラウス、物は大層じゃないわ。大事なのはそれに詰まってる願いや想い。だからそのネックレス、クラウスが持つから輝くの」

「お嬢様……」

「それ見て、私の顔でも思い出して。ねっ」


 私はクラウスに微笑んだ。

 最期の日くらい、笑って終わりたい……。

 そしてクラウスに、元気に新しい場所へ歩んで欲しい。

 

 クラウスはネックレスのエンドパーツを手に取り見つめた。


「お嬢様。貴方はやはり、お母様と似てらっしゃる。とても素晴らしいお人に成られました」

「そんな事ないって……恥ずかしいよ」

 

 私は手を後ろに回しながら、視線を落としてモジモジと身体をすってしまう。


「私は、間違ってはいなかった……」

「え……?」

「お嬢様、もっとお話していたい所ですが、時間が来てしまったようです」

「そんな……もう!?」


 私は咄嗟に懐中時計をワンピースのポケットから取り出す。

 時刻は、9時50分──。

 

「10時頃にむかえが来ます。最期に門の前で皆様とご挨拶をします。お嬢様も来て頂けますか?」

「もちろんだよ、クラウス」


 クラウスは朗らかに微笑んだ。

 

 もうこの笑顔が見れなくなってしまうと思うと心が痛むが、私もクラウスに笑ってみせた。

 クラウスだって、最期に私の悲しい顔なんて見たくない筈だから……。


 複雑な想いを抱えながら、少し重い足取りでクラウスと一緒に庭へと向かった。



 ✳︎


 

 庭に移動すると、既に皆集まっていた。

 お母様にお父様。

 それに家の執事や門番。


 このアラティウス家に携わる全ての人が、クラウスを見送りに来ていた。


「クラウス、世話になったな」

「ドミニク様。私こそ、大変お世話になりました」


 最初に挨拶をしたのは、お父様だった。

 クラウスと手を結んだあと、静かに後ろに下がった。

 少し素っ気ない気がするが、男性同士の別れはこんなモノなのだろうか。


 まぁお父様に関しては、私とお母さんに比べればクラウスと一緒に過ごした時間は断然少ない。

 だから、あまり愛想が無いのも仕方がないのかもしれない……。


 すると、次にお母さんが前に出た。


「クラウスさん」

「サナリー様……」

 

 お母さんはクラウスと握手をする。


「思い出しますね、あの日の事。あの子も私も、ずっと貴方に支えられてきた……。

「とんでもございません、サナリー様。私の方こそ、貴方様に人生を変えて頂きました」

「ふふっ。ルミル、あんなに大きくなったの」


 お母さんは、そっと後ろをふり向き私を見る。

 何だか少し照れ臭い……。


「あの時、まだ小さかったお嬢様が、ご立派になられるまでご一緒できたのは、本当に光栄な事でございます」

「ルミルは、貴方が磨いたの。間違い無く」

「いえいえ、私は何もしておりません……」

「一緒にいてくれてありがとう。ルミルと、私と、この家と……。必ずお手紙送るわ」


 するとお母さんは、持っている紙袋から小さな四角いケースを取り出し、クラウスに渡す。


「これからも、ずっと一緒よ。クラウスさん」


 クラウスは受け取ったケースを見つめた。


「受け取ってよろしいのですか?」

「もちろん。大事な時につけて。おまじないがかかってるわ」

「大切に致します」


 お母さんとクラウスは別れの挨拶をして別れた。

 最後に私の番だ──。


「クラウス……」


 私は前に出ると、気持ちを堪え切れずクラウスにハグをした。


「お嬢様……大きな背中になられましたね」

「うぐっ、グスッ……」


 クラウスの前でまた泣いてしまった。

 お別れの時は泣かないと決めていたのに。


「お嬢様……先程の事、気にされてますか?」

「えっ……事前に私に伝えなかった事?」

「はい」


 もう忘れていた……。

 だから別に掘り返さなくていいのに。

 最期は気持ち良く見送りたいから。


「気にしてない……。きっと何か理由があったはずだから。クラウスのこと信じてるから私」

「本当に申し訳ございませんでした。全て私の不注意によるモノです。今回の事は全て水に流していただけますでしょうか……」


 不注意……?

 それは、クラウスがうっかり忘れてたということ?


「良いよクラウス。どんな理由であれ、クラウスの事を悪くなんて思わない」

「……お嬢様、やはり貴方は優しい方だ」


 最期にクラウスをギュッっと抱きしめる。

 もう、当分会えなくなってしまう。

 だから、一生分のつもりで抱きしめる。


 温かくて、優しくて。

 いつも私の味方でいてくれた。


 トランプも、スケッチも。

 私の好きな事全部教えてくれた……。


 何処へ行ってもずっと家族。

 ずっと一緒──。

 

 クラウスの胸に押し込む様に想いを念じる。

 そして抱きしめた腕を放し向かい合う。


「お嬢様、お願い致しますね」


 ……。


 ……ん?


「大丈夫だよクラウス、もう気にしてないから……」


 お願いというのは、今朝の件を水に流すという事だろう。

 クラウス、私が怒ったから結構にしてるんだ……。

 申し訳ない事をした。


 すると、クラウスは鞄の中を探り出す。

 中から取り出したのは1通の封筒だ。

 クラウスはそれを両手で私に差し出した。

 

「お嬢様、受け取ってくださりますか? 」

「手紙!?嬉しい……ありがとう!!」


 私はクラウスから封筒を受け取った。

 無地デザインで、落ち着いた色合いの茶封筒だ。

 でも表面は少しザラザラとしていて、厚さもあるせいか少し高級感がある。

 

 そして封筒のフタは、花のシールで塞がれている。

 紫色の花の絵が描かれた可愛いらしいシールだ。

 

「封筒かわいいね。クラウスが選んだの?」

「はい。私が考えました」


 クラウスらしさが伝わる、良いデザインだ。

 

 そして気になるのが、この花のシール。

 とても可愛らしく描かれているが、私は知っている……。

 コレは市販のシールではなく、クラウスが自作したモノだ。

 よくクラウスに絵の描き方を教わっていたから、彼の絵柄だと直ぐに分かった。


「ふふっ、クラウス。このシール自分で作ったの?凄い……とっても可愛い」

「光栄でございます、お嬢様」


 クラウスって意外とロマンチストだ。

 わざわざ、自作するくらいなんだから、きっとこの花にも意味がある。

 

「花言葉でしょ?クラウス」

 

 私はニヤつきながらクラウスのいきな演出を問う。


「それはお楽しみです……お嬢様」


 照れ臭いのか、クラウスは回答を濁した。

 きっとこの花に、私との思い出を詰めてくれたのだろう……。


 しかし、可愛く描かれているものの、正直何の花であるかが分からない。

 5枚の花弁が付いており、サクラの様なシルエットをしている。

 この花の答えだけは聞いておきたい所だ。


「とっても可愛いけど、コレ何のお花!?」

「そちらは、『クロウエア』でございます」


 クロウエア……?

 

 あぁ、確か『サザンクロス』の事じゃなかっただろうか。

 花弁が星に似た形をしているので、そう呼ばれているらしいが、正式名称は『クロウエア』だったかも知れない……。

 

 言われてみれば、納得だ。

 うちの庭にもサザンクロスが咲いていた事があったので、少し知っている。

 春過ぎによく見たがとても綺麗な花だ。


 私はクロウエアのシールを眺める。


「この手紙、あとで必ず読むよ」


 手紙を貰ったとなると、もうコレが本当に最期だ。

 私は別れの挨拶をしようとした。

 すると突然、後ろからお父様が割り込む様にやって来た。


「悪いがクラウス、手紙の内容を拝見してもいいかな?」


 お父様は、少し緊迫感のある声でクラウスに話しかける。

 一体何だろうか……。


「どうぞ、ドミニク様」


 次にお父様は、私の顔を伺う。


「ルミル、その手紙を見せて欲しいのだが」

「えっと……いいのですが、どうしてでしょうか、お父様」

「ルミル、クラウスには悪いが、大事な娘に何か変な物を渡していないか確認する為だ。最近は麻薬取引だってさかんになってきているからな。念の為の安全確認だ」


 意味不明な回答だ……。

 クラウスが私にそんなモノを渡す訳がないというのに。


 しかし、出来るだけお父様との喧嘩は避けたい……。

 私は仕方なく封筒をお父様に渡した。


 するとお父様は受け取った封筒を開け、中身と手紙の文章をチェックし始める。

 

 正直、気分が悪い。

 クラウスは私の為に手紙を書いてくれたというのに。

 何故なぜ先にお父様に見られなければいけないのか。

 

「特に問題ない……。済まなかったなルミル」


 お父様は手紙を確認し終わると、封筒に仕舞い私に返した。

 すると、そそくさと後ろに下がっていった。


 私は思わず、小さな溜息ためいきを吐いてしまった。

 全く、折角のムードが台無しだ。

 

「お嬢様、最後にこちらを……」


 するとクラウスは、また何かを片手に握りしめ、私に手渡した。

 手を開くと、手の平に乗っかる小物が姿を現した。

 ポーカーで賭けたクラウスの王冠だった。


「コレ……なんで」

「お嬢様にお渡ししたいのです。私との思い出の品だと思って受け取って下さいませ」

「ダメだよ。私、勝負に勝ってないもん。こんな高価なもの。クラウスの宝物でしょ!?」


 コレだけは流石に受け取れない。

 私との“思い出の品”だとしても、クラウスの宝物の一つだ。

 勝負にも勝ってないというのに、この王冠を受け取れる筈がない……。


「高価ですか……。いえ、お嬢様にどうしてもお渡ししたいのです。それに、モノだけなら大層じゃないんです。お嬢様が私に教えてくれた言葉です」

「でも……」

「それは、お嬢様が持って初めて輝くんです」


 すると、門の外から地を響かせる轟音ごうおんが聞こえて来る。

 ひずめの音だ。

 門の外を覗き込むと、屋敷の前に一台の馬車が停まった。


「それではお嬢様、お元気で」


 クラウスは私に会釈えしゃくをする。

 それを見た私は、居ても立っても居られなくなった。


 やはり私は、心残りしかなかった。

 眉間みけんに眉を寄せ、クラウスを見つめた。


 待って──。

 本当はそう言いたかった。

 向こうへ振り向き、門の外へ歩んでいく彼の背中を、私は気が遠くなる程にただ呆然と見守ることしかできなかった……。


 クラウスの遠ざかる背中を見つめる。

 けれど、胸の中の想いを押し殺すことができなかった。


「クラウス!!また会えるよね!?」


 叫んだ──。

 すると、クラウスは馬車に乗り込みむ直前に軽く身体を振り向かせた。

 しかし、クラウスは私と顔を合わせる事なく馬車の客車キャビンに乗り込んだ。


 暫くして、馬車馬は駆け出した。


 そのうしろを見つめながら、この儚い思いを王冠と共に握りしめた。


「クラウス……また、きっと」


 虚しい想いは、天が聞いても、クラウスに届く事はなかった。


 私たち屋敷の住人は、其々それぞれの場所に戻った。



 ✳︎



 日曜日だというのに、パッとしない……。

 

 何時いつもであれば学校の予習復習を終えた後に、クラウスの部屋に遊びに行くのが殆どだった。

 それがもう出来ない。


 私は僅かな休日を、何をする事なく呆然と過ごした。

 頭の中は空っぽだった。

 

 もう追い求める物もない。

 トランプで勝負をする事すら出来ない。

 

 私の人生における“生きがい”を一つ失ったのだから。

 ただベッドに腰掛け、虚空を見つめることしか出来なかった。

 そうして、そのまま日は沈んだ。


 私は今まで幸せだったのだ。

 クラウスに遊んでもらえて、孤独を殆ど感じずに居られたのだから。


 でも、私は失った。

 もう、お母さん以外愛せる人が存在しない。

 そして、そのお母さんも最近はほとんど家にいる事はない。


 孤独だ。

 私は、これから孤独になるのだ──。


「クラウス……」


 頭の中の不安の数を数えていた。

 不意に寂しい口から漏れたのは、最愛の家族の名前だった。


 それでも、生きていかなければいけない。

 この家系と上手く付き合い、そしていずれは……。

 

 いずれは……。

 

 ふと、テーブルに置いてあった“クラウスからの手紙”が目に映る。

 そういえば、先程貰った手紙をまだ開けていなかった。

 どんな別れの言葉が書いてあるのだろうか。

 

 気になって、腰掛けのベットから立ち上がり、テーブルに置かれた封筒を手に取る。


 封筒の中の折りたたまれた手紙を取り出し開く。

 そこには、万年筆で書かれた達筆な文字列が紙面の中央に刻まれていた。


『お嬢様、今までありがとうございます。私はお嬢様と過ごせた日々を誇りに思っております。クラウスより──』


 その言葉を何度も読んだ。

 何度も、何度も読み返した。


 感情が昂り、目がしおしおとうるむ。

 私は愚かだった。

 クラウスはずっと私を愛していてくれた。


 それだというのに、私はクラウスに酷い事を言ってしまった。


 あの時、謝れて良かった。

 あの時、謝ることが出来なければ、今私はどうなっていただろう。


 きっと自分を呪い、錯乱状態になっていた。

 私は最初から最後まで、クラウスに助けられた。

 気が付くと鼻をすすり、手紙を抱きしめながら涙を頬に伝わせていた。


「私も……大好きだよ。クラウス」


 この手紙は、クラウスの形見だ……。


 トントン──。

 突然部屋のドアが叩かれた。

 こんな時に一体、誰だろうか。


 私はテーブルに手紙を置き、のそのそとドアの前まで行った。


「はい……」

「私だ、ルミル」


 ドアの向こうに居るのはお父様だった。

 今は一人になりたい気分だが、仕方なしにドアを開けた。

 すると、そこには仕事を終えたであろう姿の父親が佇んでいた。

 

「何でしょうか……お父様」

「お前の様子を見に来たんだ。少し心配でな」


 心配か。

 私がそんなに心配なのであれば、日頃の態度をもっとどうにかして欲しい。

 私の事を少しでも考えて欲しい……。


 父の顔を見れば頭に愚痴しか浮かばない。

 今日はもう、そっとしておいて欲しい。


「具合は悪くないか?」

「はい……大丈夫です」

「そうか。クラウスの件は済まなかったな。彼がお前に別れる事を伝えないで欲しいと言って来たのだ」

「え……」


 クラウスが、そんな事を……?


「何故、クラウスは隠していたのですか?」

「考えてもみなさいルミル。クラウスは大切なお前に言いづらかったのだ」

「クラウスは、そんな臆病な人間では無いと思いますが……」

「さぁ、それはクラウスだけが知る事だ。それよりルミル。最後に何かクラウスから受け取っていたね?念の為だ。見せなさい」


 さっきから一体何だというのだろうか。

 また防犯の為とか訳の分からない事を言うのだろうか。


 それでも私は、頭の中の愚痴を唱えること無く身体が動いてしまう。

 仕方なく、ワンピースのポケットに入れていた王冠を取り出し見せた。


「なんだ、ただの王冠じゃないか。最後にこんなゴミを渡したのか?クラウスは」


 ゴミ!?

 この王冠はゴミでは無い……。

 私とクラウスの思い出の結晶だ。

 人に、とやかく言われる筋合いは無い。

 

 それに、お父様は見る目が無い。

 この王冠は、王冠マニアの間で取引される高価な代物。

 無能にも程がある……。


「お父様、この王冠は500万Gもする高価な代物です。クラウスは私に授けてくれました」

「なに!?クラウスがそんな事を言ったのか」

「え……」


 なに……どういう事?


「ルミル、お前には申し訳無いが、それはクラウスの優しい嘘だ。きっと、お前を楽しませる為のな……」


 嘘……?

 クラウスは、私に嘘を付いていたの?

 私を楽しませるために?


 頭が追いつかない──。


「いえ、この王冠は本物です!だってここにフォーゲル社と彫られてます!!」

「フォーゲル社?何故、フォーゲル社だと高価なのだ?」

「だってフォーゲル社は、かつて一世を風靡ふうびした今は無き伝説のアルコールメーカーですよ!?」


 フォーゲル社は戦時下に不慮の倒産を強いられた、国を代表するアルコールメーカーだったという。   

 だから酒好きの間では物凄く惜しまれているとクラウスは言っていた。


 そんなメーカーの作った、希少な酒瓶の王冠。

 高価でない訳が無いのだ。

 お父様は何も知らない。

 分かっていない。


「ルミル、お前は余り知らないだろうが、それもクラウスの嘘だ」

「そんなことは!!」

「まぁいい、今日は疲れてるだろうから、早く寝なさい……」


 お父様はそう言い残して部屋を出て行った。

 全く騒々しい……。

 

 いや、逆にこの王冠の価値はお父様に分からなくて良かった。

 もし高価な代物だと信じれば、またあーだこうだ言われて没収されていたかもしれない……。

 

 無論、私はこの王冠を金銭的な価値感で見ている訳では決して無い。

 この王冠はクラウスとの思い出が詰まっているから大事なのだ。


 けど、それでもクラウスが大切にしていた『希少な王冠』である事に変わりは無い。

 だから、私が思う以上にこの王冠はとても高価で価値の在るモノ。

 両方の意味合いで、誇れる宝物なんだ。


 しかし、何故お父様は私がクラウスから受け取るプレゼントをかたくなに調べるのか──。

 思い返せば、今日のお父様の様子は少し不審だった。

 クラウスが麻薬なんて私に渡す筈がないのに。

 異常な程、クラウスに対して不信感を抱いていたように見えたのは気のせいだろうか……。

 

 それには何か理由があるのだろうか──。

 

 いや、でもそれは私の思い込みに過ぎない。

 考え過ぎだ。

 

 私は王冠を大事に手紙の封筒に仕舞い込む。

 

 時計を見ると時刻は23時30分──。

 明日は学校だ。

 夜更かしは良くないので、私はベッドに入り眠る準備をした。


 瞳を閉じて、今日の出来事を振り返る。 

 

 突然、朝クラウスが部屋を訪れた時は、とても驚いた。

 私のせいで喧嘩をしてしまったけど、それでもクラウスは私を愛していてくれた。


 唐突ではあったが、クラウスと贈り物を交換できた。

 最期にクラウスは、私宛の手紙をくれた。

 今思えば、手紙を事前に用意していたという事は、私に別れを伝える気はあったけど、照れ臭かったから手紙という手段にする予定だったのだろうか?

 

 でも、それなら何故クラウスは自分から私の部屋に白状しに来たのだろうか……。

 言いづらいのであれば、手紙だけ残して去る事もできた筈なのに。


 クラウスの行動もよく考えれば、不可解な点がある。


 お父様は、クラウスが直前まで転勤の事を黙っていて欲しいと言ったと言っていたが、それは、そもそも本当なのだろうか……。

 仮にクラウスが言ったのだとすれば、私と喧嘩になるのは分かっていた筈なのに。

 わざわざ報告を出て行く直前にする必要があったのだろうか?

 

 ……。


 そんな事を考え出すと、目が冴えてしまい眠れなくなってしまう。

 私は枕を抱きしめながら、必死に目を瞑った。

 それでも、今日一日を振り返れば振り返る程、おかしな点が浮かび上がる。


 手紙を渡した後、クラウスは王冠をくれて、門の外に歩んで行った。

 最後に私は一声かけた。

『クラウス、また会えるよね』と。


 クラウスは私の顔を見てくれなかった──。

 そうだ。

 あの時クラウスは立ち止まった筈だ。

 聞こえていた筈なのに、私の最後の言葉を無視したようにも見えた……。


 どんな些細な事でも、私を気遣う性格のクラウスが、その最後は少し無礼な態度に見えた。

 気のせいと言えば気のせいかも知れないが。 

 私はクラウスと何年も一緒に過ごしてきた。 

 だからクラウスの変化なら、我ながら敏感に察せる。


 違和感の正体は、コレかも知れない……。

 

 クラウスがココに居るなら問いただしたい。

『今日少し変じゃなかった?』って。


 ……。


 私は、もう一度封筒を手に取り眺める。

 すると、忘れていたモノが一つ目に入った。


 封筒のフタを閉ざす、紫色の花のシール。

『クロウエア』だ。


 忘れていた……。

 今思えば、コレってかなり意味深な細工じゃないだろうか?

 

 そもそも、何を思って自家製シールを作ろうだなんて思ったのだろうか……。

 もちろんオシャレだし、いきでもある。


 しかし、クラウスの行動とシールの意味合いが一致しない……。

 そんなオシャレな細工をして私を喜ばせようものなら、そもそも喧嘩をせずに済む様に、もっと余裕を持って転勤の事を知らせようと考えるのが普通の思考だと思うが……。


 手紙やシールといった粋なはからいをするにも拘らず、一連の行動には後ろめたさがある。

 明らかに矛盾している。


 ……。


 正直、考えれば考える程、意味不明だ。

 そして今思えば、クラウスの行動は色々と辻褄が合わな過ぎて、少し怖さすら感じる。

 今、私が思うことは一つだ。


『クロウエア』の花言葉を調べても良いのだろうか、という事だ──。


 最初は粋な演出かと思った……。

 きっと、私とクラウスの思い出を象徴する様な、感動的な花言葉が詰まっているかと予想していた。


 でも今は、クラウスの心理が読み取れなくて、粋な演出に見えない。

 見てはいけないモノに触れている気分だ。


 この胸のざわめきはなんだ。

 クラウスは一体何がしたいんだ……。


 ……。


 意を結する。

 私は布団から這い出て、マッチと蝋燭を持ち、部屋の玄関に向かった。


 ドアを開けて、廊下に誰も居ないことを確認する。


 長い廊下を音を立てないように忍足しのびあしで歩く。

 階段を降りて向かうのは、一階にる私の勉強部屋。

 書斎だ──。


 部屋の前に付くと、誰にも気づかれない様ににそっとドアを開く。

 マッチで蝋燭ろうそくに火を灯すと、その後はドアを閉め切り、中に身を潜める。


 蝋燭で辺りを照らしながら、書斎の本棚を見渡した。

 そして、植物等の本が置いて在る棚を探す。


 指差しで辿りながら、横一列に並べられた背表紙のタイトルを目視で追い続ける。

 暫くして、1冊の本の背中を指先で押し上げ、列から引き出す。


「あった……」


 手に取った一冊の分厚い本。

 灯りで照らせば、質素だが繊細な花弁はなびらのデッサンで彩られた表紙が浮かび上がる。


 花図鑑だ──。


 その分厚い本を抱えて、私はのそのそと書斎を後にする。

 またも見つからない様に廊下を歩き、慎重に自室へと戻る。

 

 そしてドアを閉めて、直様すぐさまテーブルに花図鑑を開き目次を見渡す。

 上から順に細かな文字列を辿る。

 そして、探していた文字を見つける。


「あった、クロウエア…… 」


 春夏の花だからだろう。

 記載されているページは意外と前の方だった。


 ページをめくり、クロウエアの項目を開く。

 何処かに花言葉は書いてないだろうか……。


 項目を上から辿り、急ぎ目に目視で追う。

 

 分類から原産地。分布。

 季節における特徴など、割と細かい所まで記載されている。


 そして1番下の項目にようやく求めていたモノを見つける……。

『花言葉』という項目を。


 胸の騒めきが止まらない。

 何だか、いけない事をしている様だ。

 冷や汗が全身から湧き出る……。

  

 ……。


 いや、さっきから私は少し考え過ぎだ。

 私は、ただクラウスからの愛の言葉を知りたいだけなのだ。


 何も悪い事はしていない。

 何も……。


 自分にそう言い聞かせると、決心して花言葉を見る。


『まだ見ぬ君へ』

『光輝』

『願いを叶えて』


 これが、クロウエアの花言葉だ。


 3つの花言葉はそれぞれポジティブな言葉ではあるが、別れ際に渡す言葉としてはどれもパッとしない……。


 強いて言うのであれば、『光輝』が意味合いとして少し通じなくもないないくらいだ。

 私の明るい将来を願ってくれているという意味であれば、最期に送る言葉として相応しいモノとしても観れる。


 だが……。

 えて『光輝』という言葉をシールにする意味があるのか?


 同じイラストでも、手紙にクロウエアの絵を描くとかじゃダメなのか?

 絵を描くという行為自体は同じ事なのに。


 そして実際に、シールよりも手紙に絵が描かれてあった方が印象に残るし、花言葉としても受け取りやすい。


 最大の謎は、何故シールにしたのかという事だ。


 ……。


 私が捻くれているだけだろうか……。

 こんな事を私が今考えていると知ったら、クラウスは悲しむだろう。


 だって、純粋に私に喜んでほしくて、こんなに可愛い自家製のシールを作ってくれたのに。


 私は何か、奇妙な事を疑ってばかり。

 もう辞めよう……。


 私はクラウスの気持ちを踏みにじっている。

 書斎から持ち出した花図鑑も、明日返しに行こう。


 クラウスは花言葉で私の将来を願ってくれていた。

 コレしかない。

 コレでいい。


 ありがとうクラウス……。

 私もクラウスの明るい将来を願うよ。


 私は納得し、布団に入った。

 今度こそ寝よう……。


 布団に被さり、顔を少し埋めた。

 ぬくぬくしていて温かい……。

 けれど、温かい筈なのに、どこか落ち着かない。




『お嬢様、お願いしますね?』




 その時、クラウスの言葉を思い出した。

 そうだ。

 クラウスは今日、度々会話の最中によく分からない事を言っていなかったか?


 庭でクラウスから手紙を受け取る前に、何かをお願いされた。

 その時、『私はもう気にしてない』と返したが……。


 けど、そういうことじゃないのか?


 でも、会話の流れからして、クラウスは今回の事は水に流して欲しいと言ってきたから、私はもう気にしてないと言ったのだ。


 ……。


 けどあの会話の最中もう一つ変な言葉が出てきた。


『不注意』という言葉だ。

 それは会話の最中から違和感があったから、良く覚えている。


 あの時、クラウスは確かにそう言った。

 事前に別れの手紙や自家製シールを用意しているにもかかわらず、クラウス本人の不注意で私に挨拶に来なかったと。


 クラウスの言う『不注意』とはなんだ?

 

 転勤の事は、他の皆んなには知らせていたのに、私にだけ知らせなかった……。


 いや、そもそも他の皆んなも知っていたのか?


 お母さんも、執事達も、皆んなクラウスが居なくなる事を知っていたのか?

 もし知っていたのなら、私に教えてもいい筈なのに、教えてくれなかった。


 それともお父様が言ってたように、クラウス本人が私への口止めをしていたのか?


 ……。


 そうだ、お父様はクラウス本人が私には伝えないで欲しいと口止めされたと言っていた。 

 でも少し変だ。


 コレが本当なら、クラウスの言う『不注意』とは意味が少し違くないだろうか……。

 口止めしていたのであれば、はなから私に伝える気がない筈なのに……。

 何故『不注意』なんて嘘を付くのだろうか。


 それとも、任意のタイミングで自ら別れを告げたかったけれど、タイミングを逃して私に言いづらく、手紙という手段に変更したという事なのだろうか。


 不注意という言葉を無理矢理当てはめるなら、こうなるが……。


 どちらにせよ、クラウスは自ら私に伝える事を避けていたのだ。


 でもそれなら、振り出しに戻ってしまう。

 言いづらいなら、直接会わず手紙だけ置いて去ることもできたのに。

 なのに、クラウスは私の部屋を訪れた。


 辻褄が合わない──。


 だって、この件をどっからどう見ても、クラウスは私に怒られに来てるとしか思えないのだ。


 そう、わざと怒られに来てるように見えるのだ。


 なんで……?

 どうして……?


 少し怖くなり、吐息が荒くなる。

 ダメだ。考え過ぎだ。

 私は昔から過呼吸になる事がある。


 あまり、怖い事は考えたく無い……。


 

『お嬢様、お願いしますね?』



 けれど、その言葉は何度も頭をぎる

 まさか……お願いって何か別の事を指してたりしないよな。


 その事を考えると、背筋が凍る様に身がよじれた。

 思い出したからだ。


 私は布団から這い上がり、テーブルの上の花図鑑をもう一度開く。

 もちろん開くのは、クロウエアのページだ。


 あった……。

 確認するのはクロウエアの花言葉。


『まだ見ぬ君へ』

『光輝』

『願いを叶えて』

 

「“お願い”って、まさか……」


 私はクロウエアの花言葉を凝視する……。


 


 『願いを叶えて』




 この花言葉だ。

 あの時のクラウスの意味不明な返しと関連性がある。

 まさかとは思うが、クラウスが本当に伝えたい花言葉はこっちなのではないか?


 もしそうなら、一体何の願い?

 私に何を叶えてと言っているの?


 もちろんだが、コレは全て私の妄想に過ぎない。

 でも、妄想にしては上手く噛み合いすぎじゃないだろうか……。


 クラウスは何か、私に伝えたい事があるのでは……。

 

 そもそも根本的な話しにはなるが、もし伝えたい事があるなら、何故このような謎解きゲームみたいな事をさせるのだろうか……。


 今朝、私に会った時に直接言えばいい。

 何故言わなかった……。


 この謎解きゲームも、いきな計らいの一つという事なのだろうか……。


 だが、こんな状況下で謎解きゲームをさせるなんて少しおかしくないか?

 いくらなんでもTPOを分け前なさ過ぎる。


 もし、それらをえて無視して行っているのであれば、なにか理由がある筈だ。

 

 そういえば、クラウスは私がミステリーや推理小説を好きでよく読んでいた事を知っている。

 そして二人でよく語り合ったものだ。


 私は、小説に登場する伏線やトリックをクラウスに自慢げに話していた。


 中でも印象的なモノはSOSの出し方についてだ。

 誰に知られる事なく自身の危機を身内や友人に伝える方法だ。


 コレを気に入った私は、クラウスに精一杯自慢したことがあった。

 

 その内容とは、手紙の紙面に穴を開ける事だ。

 手紙にもし穴が空いている場合は、書いてある内容と真逆であったり、全く異なるというものだ。


 事前にその旨を教えておけば、情報操作などをされずに、身内や友人に緊急を知らせる事ができるのだ。


 とても簡単であり、子供だった私でも分かりやすい仕掛けであった。

 それを自慢げに語ったのを覚えている……。


 ……。


 まさかな……。


 まさか、クラウスがそれを覚えているとは思えない。

 

 いや、思い返せばクラウスの手紙の内容はかなりそっけなかった。

 最期にしては短文というか、文字数がちょっと少ないように感じた。


 無論、その一言に私への想いが詰まっているのは分かるが……。


 でも。


 でも……。

 

 考えたくないが、ある可能性に気がついた。

 わざと、黒字を少なくしたんじゃないか?

 何かに、何処かに目がいく様に。


 まぁ考え過ぎだ。

 本当に考え過ぎだ。


 ……。


 私は念の為、封筒を開けた。

 何もない事を確認する為だ。


 私の悪ふざけもコレでおしまいだ。

 コレで決着をつける。


 何もなければ、全て私の勘違いだ。


 封筒から手紙を取り出し、開いてみる。



『お嬢様、今までありがとうございます。私はお嬢様と過ごせた日々を誇りに思っております。クラウスより──』



 紙面の中央に刻まれた、短文の文字列。

 注意深く紙面をよく見る。


 灯りでよく照らしながら、紙面を見渡す。

 そして、私の心臓は止まりかけた。


 空いているのだ──。


 紙面の右下に針で空けたかのような、小さな穴が空いているのだ。


 何処からどう見ても、人意的に空けられた様な形跡の穴が。

 

 突然、目の前の何もかもが信じれず、手紙を持った手が震え出す。

 

「クラウス、何が言いたいの……!?」





             ◇◆ 謎の穴──。

 


   【SATAN #14・最後のプレゼント 終】



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  ────◇◆ピックアップ◇◆────


 創作の制作秘話を、こちらのページに載せてます!!

 今回は、『執筆について』です。

 是非、覗きに来てくださいっ✨


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SATAN-サタン- 〜モモカと悪魔〜 大崎あむ @oosakiamu

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