第44話 夏も間近な空騒ぎ
教室に帰ってくると、田原と
「田原、俺、
「ほ、本当か。よかったあ。葛望大に進んでも友達いないんじゃないかと半分あきらめていたからな」
「長田はどうする。一緒に葛望大を目指さないか。
「俺の成績なら楽勝だとは思うけど、葛望は国公立を目指さないかと言ってきているんだけどな。でも靖樹が目指しているとなると、夏休みに進学塾にでも行って判定を確かめてみようかな」
「そうしてくれ。どうせ大学に行くならこの三人揃ってがいいからな」
田原の言葉には嬉しさがにじんでいた。
親友三人が高校で別れ別れになるという事態は避けられそうである。
少なくとも田原と俺は推薦で行けるだろうし、受験勉強をしなくていいのなら長田の勉強もアシストできる。
本人が思っているように学力はあるわけだから、受験でもしっかりと勝ち抜けるはずだ。
会話をしつつ、机の中から教科書とノートと筆記具、それとタブレットPCをカバンに入れ、机の脇からランチボックスを取り出した。
「さて、今日も勉強お疲れ様。来週までにしっかり勉強するように」
俺がそう言うと、ふたりは教室を出ていった。
そのとき俺の机の中になにかが入っていることに気づいた。
見慣れない封筒である。
豊橋先生の灰色の封筒ではない。
差出人の名前は書いていないが、宛名が俺になっていた。
見た目丸っこくて可愛らしい字体の手書きである。
俺はまたしても空騒ぎをすることになるのだろうか。
─完─
夏も間近な空騒ぎ カイ艦長 @sstmix
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