第4話

巽は時折子供たちを連れては湖へと出掛けた。

この湖にはお前たちの母が、母の兄と一緒に眠っているんだよ、とよく語りかけている。


ある時長男が湖面に向かって「母様元気?」と話しかけた。

長男を真似た長女も「お母さま、元気ですか?」と問いかけ、続けざま次女も「かあたま」と話しかけた。


するとそれに答えるかのように湖の底が淡く光り輝いたのを見た。


封印されても水蓮たちは生きている。


それを支えに巽は子供たちを育て湖を守り続けた。





巽は一族の跡取りだ。


子供たちのためにも、一族のためにも再婚するべきとの声が多く上がった。

しかし、自分の妻は水蓮ただひとりである、この身は水蓮に捧げたと言い切った。

自分のことが気に食わなければ跡目を降りても構わないとまで言い放った。


一族と衝突し続け、巽の再婚話もなくなり落ち着いた頃、巽と子供たちが姿を消した。

何処を探しても見つからないことから、この土地を去ったのだろうと結論付けられた。





湖からは時折子供たちの声が聞こえる。


淡く輝いて見えることもある。


それこそ龍の棲んでいる湖だ。


何が起きても不思議はない。


湖を守るのは人間だが、この土地を守っているのは龍たちだ。


これから先も人知れず龍の目で見守り続けていくのだろう。


封印が解かれ、運命が再び動き出すその時まで。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

また逢えるその日まで 東雲さき @skylark

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ