第3話

水蓮は昨夜のうちに巽と別れを済ませた。


愛しい番だ。

離れたいわけがない。


しかし、自分にとっては白蘭もまた離れてはならない己の半身だ。


子供たちは巽に託した。


共に成長を見届けることができないことを許してほしい。

共に生きると約束したのに守れない妻で申し訳なく思う。



それでも巽は許してくれた。


一生分の恋をした自分は幸せだ。

水蓮と出逢い、恋をして、共に暮らし、可愛い子供たちにも恵まれた。

龍の血を引くこの子たちには役不足かもしれないが、君に顔向けできるよう立派に育ててみせるよ、と。


そして、何百年、何千年かかってでも逢いに行くから、来世でも妻になってくれないか、と。


水蓮は泣いて受け入れた。


水蓮たちの封印が解けるのが先か。


巽が生まれ変わるのが先か。



水蓮と巽には結ばれたときに魂の番であることがその身に刻まれている。

蓮の花の模様が身体にくっきりと浮かんでいるのだ。

どれほどの時を待ち続けるとしても、その番の模様がある限り希望はる。



水蓮と白蘭が氷に包まれるのを見守りながら、巽は流れる涙を止めることができなかった。




ふたりを包む巨大な氷は湖の底へと沈められた。

他の人間に見られるわけにはいかないと、他の龍たちからの提言だった。


その湖を龍たちの庇護の下、巽の一族が守っている。





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