第2話

しかし白蘭はなかなか帰ってこなかった。


白蘭の番は都を治める領主の娘だった。


そしてその娘には親の決めた許嫁がいた。


親が決めたのだとは言うが、その娘自身満更でもないようだった。


見目も良く、金もあり、地位もある。


婚姻するのにこれほど良い条件を持つ男は他にいないだろうという理由だった。


そもそも人間には番という概念がない。


いくら白蘭の見目が良く愛の言葉を貰っても、

一生を共にするのはありえないと言われたそうだ。



自分はこんなにも胸が高鳴り苦しいのに、番に通じることはない。


愛を捧げても返ってくることはない。


番が他の男と身体を寄せ合っているのを目にするのが辛い。


水蓮と巽が思い合う姿を長年見てきた白蘭にとって、番に拒絶されることは心が引き裂かれるようで耐えられなかった。


このまま都にいるとふたりの姿を見るたびに龍の力が暴走し破壊衝動が沸いてしまう…


許嫁の男を八つ裂きにしてしまう…


そんな姿を番だけには見られたくないと恐れた白蘭は逃げるように故郷に帰ってきた。



帰ってきた白蘭はとても弱っていた。


時が経っても回復することはなかった。


それでも時折擡げる破壊衝動を抑えるため、なんとか保っているようだった。


限界だった。


自我を忘れて龍の姿で暴れて皆に迷惑をかけてしまうのだけは、と恐れた白蘭は自死を選んだ。




水蓮と白蘭は双子である。

白蘭の身を引き裂かれるような思いは水蓮の中へと流れ込んできていた。

白蘭にも番と結ばれる歓びを味わってほしい。

ひとりで寂しい想いはさせないと水蓮は心に決めた。



白蘭が自死するための自爆する現場に水蓮が現れると白蘭を抱きしめた。


共に眠りにつこう

白蘭の心の傷が癒えるまで、何年かかってでも


水蓮と白蘭は抱き合ったまま溶けない氷に包まれて眠るようにして封印された。


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