その絵に、世界の『余白』が描かれていた

自分を信じていない男と、
世界に信じられていない女。

二人を結んだのは、一枚の絵だった。

新木余裕。37歳。動かない。変わらない。考えない。
ただ、風景にまぎれて「無」のように生きている。

荒木静。25歳。描く。描き続ける。全身全霊で。
だが、誰にも理解されない。『色のない世界』に囚われていた。

ある日、神社で吊るされた一枚の絵馬。
そこに描かれた『絵』だけが、余裕の心を動かす。

それは願い事ではなかった。
神に祈るでもなく、飾られるためでもない、
「見つけられること」を宿命とした一枚。

無色の男が、濃密な『色』と出会ったとき、
二つの人生が、静かに、劇的に、軌道を変えていく。

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