書店

本が大好きだった僕にとって、祖父母が営む100年続いた書店は、少年時代のすべてであり、当たり前の日常だった。

高校生になったある日、祖父から告げられた「店を畳む」という一言。 僕はその重大な事実から目をそらし、何もなかったかのように振る舞おうとする。

しかし、夏休みが始まり、閉店に向けた返本作業を手伝う中で、天井まであった本棚から次々と小説や漫画が消えていく光景を目の当たりにする。 それは、自分の「最愛の人を殺す」ような作業だった。

変わりゆく商店街、シャッターアートの出会い、最後の教科書販売。 大切な場所の「最後」を見つめ、喪失と向き合い、静かに未来へと踏み出す少年の、ひと夏の記録。