懐中時計の男　～クロノシタス～

　祖父の葬式のため、帰省していた丸越　比呂斗。祖父を偲んで会食が開かれた。夜になり、祖父の家に男が訪ねて来る。男は、祖父に預けていた物を取りに来たと言う。
　祖父が亡くなる三月前、比呂斗が病院へ見舞いに行った時、「もし自分が死んだ後、訪ねて来る者がいたなら渡してほしい」と頼まれたのだった。それは懐中時計と数冊の手帳。
懐中時計だけを受け取ると、男は帰って行く。
　その夜、比呂斗はホテルのベッドで手帳を見ていた。そこに書かれていたのは曾祖父が仕事先の海外で出会った男の事だった。手帳の男と、家に訪ねて来た男は同一人物だと推測される。すでに百歳を越えている驚きよりも、もっと男の事が知りたくなり、比呂斗は寝るのも忘れ手帳を読みふける。