なすすべの無い暴力から始まる物語です。
主人公が自他共に認める悪であり、彼の集めた仲間もくせ者ぞろい。
腐った世の中で、腐ったやつらを食い物にしながら今日も気ままに悪を働く。
……かと思いきや、それらは全てただ1人のために張り付けた、ぼろぼろのメッキでした。
彼女のために、あるいは世界の、彼のために、隠して張り付けて誤魔化した真実。
そんな一見すると、救いの無い復讐劇です。
そしてルビの多い心理描写や場面展開が、観劇を観ているかのような贅沢感を味わえます。
どうか報われてあれと、願わずにいられません。
暗がりからでも美しいものは生まれる。
そうでなくては。
さあ、この復讐劇の皮を被った英雄譚を楽しみましょう!
間違いなく名作。少なくとも私は大好きです。
でも私の語彙で表現するとどうしても安っぽくなるのが歯がゆいところです。
他の方のレビューやコメントでも散々言及されていますが、ダークファンタジーはこうであってほしいよな!というのを体現してくれています。
謎多く闇を感じるキャラクター、残酷でリアルな戦闘シーンと世界観、胸に突き刺さる人々の嘆きや苦しみ。
それでいて、読んでいてストレスは少ないです。なぜなら分かりやすくて面白いから。
もちろん、ファンタジーならではの非現実感や、ちょっとクスッとできる描写も忘れません。
贅沢セットすぎる。
敢えて言うなら、物語の進捗や展開が早いことを求めている人には合わないかもなと言うくらいですかね。
じっくり丁寧に楽しみたい人向けだと思います。
存在に気づいたのが遅かったことを悔やんでいますが、
こんな良質なダークファンタジーが100話まとめて読めちゃう……ってコト!?
という嬉しさすらあります。
皆様も私と一緒に最新話目指して読み進めましょ。
ダークファンタジーとは斯くあれ。それを体現したかのような情け容赦ない世界観に脱帽せざるを得ない。特にひとりのキャラクターの魅力について語りたいと思う。
世に跋扈する悪意や理不尽に抗うわけでもなく、受け入れた上で欺瞞の正義を振り翳す主人公と呼ぶべき青年ジョン。怪物を束ねる長たる彼の所業には吐気を催す邪悪さがありながらも、語る理屈は反駁の余地なく正しい。
人を選ぶかもしれないが、私はこのようなキャラクターは大がつくほど好物です。頭の捻子が外れた、常人には理解が及ばぬぶっとんだ思考の持ち主。それだけで魅力がある。まだ彼の全貌は明らかになっていないが、これから待ち受ける物語の先で彼がどのような結末を迎えるのかが楽しみである。
また本作の特徴として、豊富な語彙からなる数多の比喩と詩的に綴られた文体。それは単に美辞麗句を連ねたものではなく、地の文の隅々までにも読み手を愉しませる工夫と努力が垣間見えます。韜晦することなく、余すことなく筆者様が創作へと捧げた熱意と研鑽の程を読者の皆様は知ることでしょう。