本作は学園を舞台としたミステリである。
学園、しかも全寮制という、極めて閉鎖的な状況を利用した、いわば「密室」ものである。
しかし、何をもってして密室となるのか。
物質的、空間的限界が密室の全てではない。
人間をがんじがらめにするのは、社会的階層であり、またその能機能に与えられた知性でもある。
この物語は、探偵役の姫烏頭 蒼雪(ひめうず・そうせつ)という少年によって、能楽という知見を用い、紐解かれる。
全体を読了した後、私に残ったのは心象は「松鏡」である。
能のお舞台には、松がある。
あれは、鏡に映った松である。
この物語には、対応する人物と人物が複数描かれている。
かつてあった事件と、今起きた事件と、その各々に類して見える誰かがいる。
しかし、それは表層の類似である。
そこに「内的解像度」からの読み解きをぜひ加えて見て欲しい。
見える景色が変わるから。
これは、密室であり、
決して密室ではないことが、
分かる者と、分からない者との残酷なまでの差異を描いた物語でもある。
七不思議の呪殺──きっかけはこのタイトルです。
ミステリーだけど呪い? どういうことだろうとわくわくしながら読み始めました。
ひとつめ、ふたつめ……と七不思議が出てくると、ふと違和感が顔を出してきます。
これはどういうことだろう。これは? と物語にぐいぐい引き込まれていきました。
更新されると自分の中で答え合わせをしたりして(大体間違ってました)そうか、なるほどなー! とまた次回の更新を待っていたのが今はもう懐かしいです。
いつもながら、作者様の力量には脱帽します。こういうのもあるんだ、と読んでいて勉強になります。
このようなレビューでお恥ずかしいですが、本当にとても良いミステリーを読ませていただきました。
ありがとうごさいました!
皆さんも、読んでみてください。
月波見学園の七不思議を調べると呪い殺される。
しかし、外部生の姫烏頭蒼雪は怪異の存在、呪いを否定する。
実際に七不思議を調べて行方不明となった兄を持つ佐々木実鷹は、呪いは存在すると必死に訴える。
そうでなければならない。そうでなければ、誰かを恨むことになるから、と。
この『恨み』は物語を通じて、事件の根幹に関わってくる。
沈み果てて浮かばぬものを浮かばせるために、姫烏頭は七不思議の真相を追っていく。
死んだ人間は何も語らないのだから、生きている間に蒔いた種を拾い集めて、真実を追究する。
その果てにあるものは、何十年も煮え詰められてきたどす黒い感情の渦。
恨み募った感情のために手を血に染める者。
恐怖と懺悔のために七不思議を利用する者。
果たして、沈められたものとはなんなのか?
七不思議に秘められたおぞましい真実とは?
これは、七不思議の謎を舞台にした、極上のモダンホラー&ミステリーである。
人間とはかくも恐ろしいものだ。