第12話:舞踏会の絆と誓い
我が家はかなり武に偏っていますが、それでも舞踏会場には多少のお金を継ぎ込んでいます。
天井の中央には美しいクリスタルのシャンデリアが吊り下げられ、多くの燭台に灯されたキャンドルが部屋全体を幻想的に照らしています。
舞踏会場の壁際には豪華なカーペットが敷かれ、戦いの彫刻が施された柱が美しい装飾を添えています。
壁面にはゴールドとベルベットで飾られたカーテンがあり、その奥には絵画が美しい風景画や歴代の一族全ての肖像画がかけられています。
洗練された貴族たちが美しい衣装を身にまとい、優雅な舞を楽しんでいます。
舞曲のメロディーが響き渡り、優雅な音楽が舞踏会場を埋め尽くしています。
楽器から奏でられる美しい旋律が、心地よく響き渡ります。
音楽に合わせて踊る人々の優雅な動きが、舞踏会場に一体感と美しさをもたらしています。
カップルが一糸乱れぬステップで舞台を踏み出し、情感豊かな動作と微笑みで相手とのコミュニケーションを取る一方で、舞踏の醍醐味を楽しんでいます。
美しい音楽が響きわたる中、夢のような世界にいざなっています。
貴族たちは華麗な舞台で優雅さと気品を湛えた舞を繰り広げ、まるで絵画から抜け出したような情景が伝わってきますます。
満面の笑みを浮かべたアニカ王妃殿下が父上に身体を委ねています。
父上は政略結婚を決意されて必死の笑みを浮かべておられます。
兄たちも愛妻を胸に抱いて舞踏を愉しんでおられます。
私はそんな中で独り凍り付いています。
あの日の情景と言葉が私の心と体を縛っているのです。
「ソフィー嬢、約束通り私を踊ってください」
テオ様に誘われたらしかたがありません。
「はい、よろこんで」
父上と私の事が恐ろしいのでしょう、誰も彼も必死で表情を抑えています。
僅かでも私を馬鹿にするようなしぐさを見せたら、決闘を申し込まれると思っているのでしょう。
「ソフィー嬢とのダンスが一番愉しく踊り易いです」
「お世辞と分かっていてもうれしいですわ」
「お世辞ではありませんよ」
私も父や兄たち以外では一番踊り易いです。
テオ様は二メートルを越える長身なので、あまり背を丸めなくていいのです。
いえ、テオ様は私が大きく動けるように誘導してくださいます。
「このまま踊りましょう!」
曲が終わったというのに、テオ様が手を放してくださいません。
二曲続けて踊るなんて、とても親しい間柄でないと、恋人と思われてしまいます。
私が相手でなければ大変な噂になってしまった事でしょう。
「手を放してください!
三曲続けて踊ってしまったら、婚約者だと思われてしまいます!」
二曲目が終わっても手を放してくださらないテオ様に強く言いました。
悪戯にしても酷過ぎます、こんな姿をしていても心は乙女なのです!
「初めて会った時から心惹かれていました。
ミュラー伯爵に結婚の許可を貰っていますが、ソフィー嬢に認めてもらいたかったので、この場を整えてもらったのです。
どうか私と結婚してください、お願いします」
宮廷の運命と煌めき・王族の誓い禁断の愛:王太子に婚約破棄された伯爵令嬢は拳を握る。 克全 @dokatu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます