闇を抜けて、その先へ。

「も」の存在があまりにやさしく温かくて泣きましたよね……。

酒井絢子さんの絵本でみてみたいような、そんな印象があります。

大切な家族(父親)の喪失とその現実の受容の物語ということで、決して軽いテーマではありません。

少しずつ欠けて行く父本人とその愛とともに、ゆっくりと事実を受け入れてさきへと進む。生きていれば避けられないことだけれど、本編で描き出されているのが父子双方にとっての鎮魂という点が救いだと感じました。

それはとてもむずかしく苦しいけれど、最後に悲しみごと受けとめてくれる母という存在があることこそ、世界の寛容を現している。そんな気がしました。

作中の歌の明るさや美しさ。
闇が迫りくる音のおどろおどろしさ。

その全てが胸に残っています。

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