第23話 学園の終焉と紅龍派の魔女~エピローグ

あたしたちが、辺境を放浪し始めて100年。


あたしは、亜空間を操れるようになり、普通の環境を隠れ家として持つ様になった。

そこには、バルバがいた。

老体だったバルバが処分されかけたのを引き取り、若返らせたのである。

おかげで、隠れ家に帰った時の楽しみが増えたわ。

あまりちょくちょく帰っていたら「対悪魔機関」や天界に察知されかねないけどね。


ミア先輩との仲は、深まったけどまだ恋仲ではない。まだ。

距離は縮まってきているんだけどね。


学園は、本当に質が落ちた。特待生ですら一般人に見える。

それに「対悪魔機関」との小競り合いが、小競り合いじゃ無くなってきたみたい。

―――それは予兆だった。


「フラン!」

「どうしたの?ミア先輩」

「学園に襲撃だ!規模からしてこちらを潰そうとしているようだ!」

「ちっ!思ったより早かったわね!」

 もう少し後だと踏んでいたのだが。

「時間稼ぎにしかならないでしょうけど、あたしたちも出ましょう!」

「ああ!」


 学園の門に転移すると、そこでは激しい争いが起こっていた。不利なのは学園側。

 ガーゴイルの大半は壊され、侵入を許してしまっている。

 あたしたちは、できるだけ奥へ飛ぶ。

 飛べるのは制限空間だった場所も今は解放空間になっているからだ。

 向こうが何かしたのだろう。


((フランチェスカ!))

((シスターエレニア!?))

((学園長には構わなくてよろしい。この学園の本当の管理者は、主に誓って私です。今学園があった痕跡を消し去ろうとしています。足止めを))

((紅龍様への誓いなら、絶対ですね。どこの足止めを?))

((後者の辺りにフリーなものが、ミアは寮の辺りを))

((了解です))


 シスターエレニアが「足止め」と言った理由が分かった。

 あたしが相手したのは、赤毛の女剣士で、結構強いのだが倒せないほどではない。

 だが、倒しても倒しても復活してくるのだ。

((このカラクリ、分からないんですか、シスターエレニア!?))

((他の星に心臓を置いて来ていて、そこで回復しているのよ!))

((そこに行く人員がいないということですか))

((そういうことね。回数制限はありそうだけど))

 ああ、うっとおしいなあ、もう!


 だが、回数制限は実際あるようだ、敵の顔に焦りが見えてきた。

 もっともこっちは、学園の各所で戦闘の気配がして焦ってるけど。

 

 生徒たちはどうやら邪魔にならないように自決させられているようだという事も分かってきた。魂は回収済みなのでどうとでもなるのだろう。

 

 ようやく、相手の回数制限を突破した。

((シスターエレニア!次はどうしたら!?))

((図書館に敵を近付けないでちょうだい!))

((わかりました!))


 あたしは図書館に近付こうとする敵を、片っ端から始末していったが………

 何だか地鳴りがしている?スターマインドの暴走にも似た………

 

 くずぐずぐずぐず………

 学園が。

 あたしが過ごした青春が、全て灰になって崩れていく。

 地下施設でもあったのだろう、地面も陥没していく。


((皆さん、学園長は討たれました。そしてわたしはいなくなります。今後の事は全てフランチェスカに任せます))


 その場にいた魔女全ての頭に爆弾発言を残し、シスターエレニアの気配は消えた。

 敵はまだ残っている。

 どうするのかという思念があたしに集中する。

 ………ああああ、もう!シスターエレニアのバカ!

 もーう、仕方ないわね。惑星議会議員長やってたからやればできるわよ!

((皆、守るものは無くなったわ。各自潜伏なさい。行き場がなければ仮の居場所を貸してあげるからこっちに来て。大丈夫だという者はそのまま潜伏。後夜祭があった時期に、辺境の入口―――安全にしておくから―――に集合よ!))

((はい!))((わかった))


♦♦♦


 1年後、辺境の入口に集合した魔女たちを、安全を確保(疲れた)した辺境半ばの、コンサートホールだったらしきドームにテレポート。

 贄を持ってきた者もいたのでこちらで預かる。

 まずは、生贄を捧げてのミサ、これは外せない。あたしが司祭を務める。

 しかし人数が少ないわね。50人にも満たない。

 それだけあの戦闘で死者が出たって事ね………


 その後、今後についての会議だ。

「あたしとしては、組織立って対悪魔機関に突っかかろうとは思ってないわ。人員の数が違い過ぎるのよ。もちろん個人で挑むなら止めないけど、まずあたしを負かしてからにしなさい。でないと無駄死によ」

 何人かの挑戦者が出たが、辺境を一人で歩いたらそれだけで死にそうな娘ばかりだった。当然勝ったわ。これじゃ挑戦させるわけにはいかないわね。

「あたしは学園と違って指令は出さない。問題が起きた時だけ対処するわ。それぞれが紅龍様への忠誠を貫いて欲しい、サバトは定期的に開くし活動報告もしてもらうけどよっぽどのことがない限り罰則とかは課さないから」

 そんなあたしがトップでいいなら挙手してと言ったら、全員が挙手した。

 多分、最後のシスターエレニアの台詞も効いてるんだろうけど………


「了解、時々選挙するから、お役御免になったらすぐ言ってよ」

 そう言ったが、今の所あたしがリーダーという事になりそうだった。


あたしの物語は、ここで一度終わりを告げる。

学園に縛られてきた半生だったが、その生き残りにはまだ縛られそうだ。

でも嫌ではない。この半生、あたしは反省も後悔もあるけど、嫌いではないのだ。


じゃあ、当分の間、バイバイ!

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魔女フランチェスカの半生 フランチェスカ @francesca

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