第20話 帰りの道
帰りの道
朝10時、この時間からは徐々に湯の滝に来る観光客が増えて来る。
俺はバイクの元へと戻るとヘルメットを手に取り帰りの支度を始める、滝登りをするために脱いだ靴下とブーツを履くと、先ほどまで居た女性と彼氏は既にその場から立ち去った様子。
俺は気を取り直すとセルモーターを回しエンジンに火を入れる、Ⅴ4エンジンの咆哮が谷合いに響く。
ここまで来るのは少し砂利道(昔は砂利だった)を走らなければならず、バイクを汚すのが嫌な人にはお勧めしない。
俺はバイクを切り返すとこの場所の景色をもう一度目に焼き付けて、ゆっくりと来た道を引き返していく。
途中でキタキツネやエゾシカに出会うことも有るが、触ろうとして餌をあげたりするのは止めておいた方が良い。
彼らはそういう心無い観光客から食べ物を貰えると知り道路へと出て来る。
北海道の全域にはそういう野生動物がかなりいる、気をつけよう彼らにはエキノコックスと言う寄生虫が居たり他にも疫病を持っている可能性がある。
多分今年も彼らが道路で事故に逢い轢かれている現実を目の当たりにするだろう、エサを貰いに道路へ出てくれば車に轢かれる可能性がある、彼らは野生動物なのだ、エサなど与えてはいけない。
俺は一路、知床横断道路へと出ると今度は羅臼へと向かう、そこで何をするのかというと。
第一の理由は食事をするためだ、今では数軒焼肉の店があるが昔は俺の知る限り2軒だけだった。
既に俺が知る店は無くなってしまったが、観光客相手に鯔肉(トド)を出す店は今でも数軒ある、羅臼で食べる事ができる他では食べられない肉、それが鹿肉と鯔肉そして熊の肉だ。
別にそれらを食べなくともいい、この地にはもう一つ俺が見たいものがある。
この地区からなら晴れていれば国後島が見える、そこは不当に占拠されている固有領土。
ほぼ東京都と同じ大きさがある島であり何度か返還の交渉がされた時もあるが、現在になっても未だ返還はされていない。
国道を一路羅臼の町から南下して行くとそこには標津の町がある、ここから行ける観光スポットは2つ。
一つは野付半島、もう一つが開陽台。
どちらも一度行った事が有る、天気が良ければどちらもその景色に感動するだろう。
時間に余裕があれば納沙布岬まで足を延ばすのも良い、そこには原生花園もあるので観光に行くのならそちらの方が良いかもしれない。
所で皆さんはバイクで来た奴は全員バイクで来た道を引き返すと思っているかもしれないが、実は他にも帰る方法がいくつかある。
行きで体力を使い果たしたのならば、また同じ道を引き返すのはかなりしんどい。
まあ今の人の方が帰りの方法をたくさん知っているかもしれない検索すればそれらをいくつか知ることができる。
北海道からの船は函館=青森間だけではない、大きな港は他に4か所ある。
道東から一番近いのが釧路港、現在はバイクを乗せる便は出ていないが昔は釧路からも出ていたと聞いた事が有る。
その次が苫小牧、ここからの帰りの便は仙台行、茨城県大洗行、そして名古屋行きの便が出ている。
関東圏に住むライダーが乗れるのは苫小牧発=大洗行きが一番楽な船と言えるかもしれない。
他の船もあるが自分が住む地域までの直通を選ぶか途中までの便を選ぶのかはかかる時間や船賃との相談になって来る。
そしてもう一つの便がある、小樽発=新潟行の便は関東圏に住む人間はあまり使用しないが実家が新潟にある場合途中で寄ると言うプランには使えるかもしれない。
どのプランも1日(18h)近くかかるので、船に酔う人にはお勧めできないが。
ずっと寝て行くと言う人ならばこの帰り方はかなり楽なのではと思う。
現在の料金表をざっと見てみるとこれらの便が懐の具合でプランの対象になるか分からないが、一応書いておこうと思う。
自走で帰る場合のガソリン代が加算さたとして、昔より高くなったガソリン代がどう影響するのかがカギになる。
過去の記憶をたどるとℓ10k計算で700kとすると単純に70ℓ使用することになり。
ℓ165円だった場合片道11550円のガソリン代になる。
高速料金がバイクの場合ETC利用で通常10500円、合計すれば22050円。
そこに函館→青森間の船賃5千円前後を足すと27050円前後、バイクで帰る最短の船を使った場合の片道にかかる料金がこのぐらい。
苫小牧→大洗までの船賃は旅客運賃10740(夕方)+手荷物(バイク)14970~17100円=25710~27840円。
どちらが良いのかはライダーのプラン(排気量)によってもかなり違うが、行きの自走で疲れてしまった場合の選択肢としては考えに入れておいても良い。
まあ走るのが好きな俺は最短の青森=函館間の船以外は大間=函館間しか利用したことが無いのだが。
時間に余裕があるのなら一度は苫小牧からの船に乗ってみたいと思っている。
完
バイクでのツーリング、一度は行ってみたい場所でもある。
ライダーの聖地は何も北海道ばかりではないが、その雄大さや道のまっすぐ続く様を見れば何度もそこへと足を運ぶライダーがいるのは分かると思う。
かつてはライダーズハウスなるものが数百も点在した事が有る、現在その復活の兆しが見えて来ているようだ。
次に訪れるのならばそれらを巡るのもいいかもしれない。
くれぐれも事故だけは気を付けて、良い思い出にして欲しい。
道内の国道は全部制限速度が50kだ、(気を付けよう白黒パンダの停車中)。
直線が続く国道にパトカーが停まっていたらそれは速度取り締まり中だ、北海道のパトカーは回転灯の真ん中に速度取り締まりのレーダー機器を積んでいる。
その時80kオーバーのスピードを出していたらアウト!
特に地元の車が60k未満で走っていたらちょっとの間彼らの後ろを付いて走ろう。
あきらめてしばし景色を堪能するのもいいかもしれない、北海道の思い出は白黒(アナログ)で終わらないように。
税金はできれば故郷納税で払う方が良いだろう。
著者 夢未 太士
そして7月7日が来た… 夢未 太士 @yumemitaisi
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