24-1 というのが彼の結論
少年は、ついにこの、枕元にあった目覚めを悪くするような趣味の悪い文章を読み終えた。
「おばさん、これ、なに?」
「知らね。お前んとこの先生が置いて行った」
「みたいだね」
少年はため息をついた。
「調子は?」
「普通。ちょっと気分悪いけど」
それが、この怪文書を読んだからなのか、何度も殴打されたからなのかはわからない。
「そのうち警察が来て、話聞きたいって。わかる?」
「ああ。記憶喪失にはなってない」
真実である。別に、この怪文書を読んだからではない。柏木に言われてリコーダーを探し、そのついでに金になると思ったものを見つけた自分が招いた、馬鹿みたいな出来事、忘れるわけがない。こんな変な文章、読まなくたってよく知ってる。自分が当事者だからだ
「どんくらい寝てたんでしたっけ」
「えっと、二か月じゃん?」
「そうか」
長い。本当に馬鹿みたいだと思った。
「ま、目が覚めてよかったよ。おばさんも一安心」
「ご迷惑おかけしました」
少年は謝った。
「いや、そうじゃなくってさ、なんやかんやで、りょーやにも友達いるみたいだから」
「え? 嘘でしょ」
少年は反射的にそういった。
「読んだんですか」
「いや、ねえわ。なげえし。そうじゃなくって、会ったから。お見舞いったって暇だし」
だぼだぼのスウェットやヒョウ柄のトップスで、明らかに場違いな格好だが、一応真面目に病室へ通ってくれてはいたらしい。そして、これには書いていないが、会員は何度かお見舞いにも来ていたようだった。
「お兄ちゃん死んで、りょーやはどうなるか、ちょっと心配だったけど、学校には友達いるっぽいしよかったよ」
「そう?」
読んだ限り、歓迎されている感じはないと思っていた。
「退会扱いだったけど」
「それはよく知らねえ」
おばさんはそういい、首をかしげる。
「まあいいじゃん。元気になったら学校行きな。それまではまた、おばさん面倒見たるから」
「ありがとうございます」
少年は素直に礼を言った。
時計は、午後三時。そのとき、病室にノック音が響いた。
「導大寺警察です。氷川良哉君は……」
「いるよ。わたし、席外すわ」
「はい。おれは大丈夫です」
少年はそういっておばを見送り、代わりにやってきた警察と相対した。
「調子は、大丈夫?」
挨拶代わりの一言。まどろっこしい。そう思った。だけど、こうなる前に読んだ、怪文書が頭をよぎる。この世には、もっとまどろっこしくて、馬鹿らしいことをしたやつらを知っている。そう思うと、全部がどうでもよくなる気がした。
「大丈夫です、何でも聞いてください」
氷川良哉は、胸を張ってそう答えた。
導大寺高校出身伝説のアイドル朝霧夕都使用済みリコーダー捜索研究会の結論 杉林重工 @tomato_fiber
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます