第4話

あれから数日たったが大した変化はない。クラスに転校生が来たことに変わりはないが、馴染んだというより埋もれた感じになった。あいつは相変わらず休み時間には一人で座って、弁当のときにも一人で黙々と食べ、ずっと一人でいる。まぁ、最初のあのあいさつではしょうがないと思うけど。

「・・・い、おーい、時矢」

「なんだ?」

「なぁ時矢、最近あのお嬢様のことばかり見てるよな?あいつになにかあるのか?それともいつものあれか?」

「いつものってなんだよ。いや、あいつずっと一人だなってさ。」

「そりゃ最初にあんな挨拶すりゃそうなるでしょ。」

俺は真司とそんなやり取りをしながら数日を過ごしていた。

 ある休日、俺は買い物に出かけていた。

そんな中ある集団を見かけ、好奇心から近づいてみるとその中心には、あの倉科がいた。あいつは周りの大人たちに「お美しいです。」「素敵です。」と言われてはしゃいでいた。なんだこれ。面倒くさそうなものはさっさと立ち去るに限る。と思って踵を返したその時。

「あ~‼」

ギクッ‼

「あなたは、・・・さん。」

なんで名前呼び?

いや、そんなことよりさっさと逃げよ。ダッシュで‼

「なんで逃げるんですか⁉捕まえてください‼」

ザ‼

えっ‼この黒服さんたちはいったいどこから?

俺は一瞬で黒服たちに囲まれた。その奥から倉科が歩み出てきた。

「なんで逃げるんですか?」

「面倒くさそうだから。」

「なっ‼ひどくないですか⁉」

「ひどくない!高校生にもなってなんかよくわかんない大人たちにすごいすごい言われてる現場なんか見たらふつう逃げるわ‼」

「あれは、その~昔から一緒にいる人たちだからその~・・・」

「はぁ~。もういいや。」

俺は観念してため息をついた。

「お前なんかうれしそうだな」

「ふふっ。だってこんな風におしゃべりしたの初めてじゃないですか。」

「まぁ、そうだけど」

「そうだ、私ともっとお話ししません?」

「お嬢様いけません。このようなどこぞの者ともわからないような者についていくなど。」

黒服が何やら騒いでいる。

「どこぞの者ではありません。私の友達です。」

ん?誰が友達だって?

「さぁ行きましょう。」

倉科が俺の手を取って歩き出す。

「どこ行くんだ?」

「私の家です。」

ふ~、ん‼誰の家だって⁉

「いやいやいや、ちょっと待て」

「はい?」

「はい?じゃないよなんで俺が君ん家に行かないといけないの?」

「ですからお話を…」

「いやいや、話ならそこらへんの…」

「では、お店を用意させますね」

と言って黒服を呼び出す倉科。

「そうじゃなくて、その辺の公園とかで十分だって言ってんの。」

「…そういうもんですの?」

「はぁ~。そんなんだからみんなから避けられんだよ。」

「・・・」

やべっ。つい本音が・・・

倉科はしばらく黙って下を向いていたかと思うといきなり声を荒らげて言い放った。

「そんなことない‼みんな私の友達です。」

彼女はそう言いながらも目に涙を浮かべていた。なぜそんな反応をしたのかわからなかった俺は、少したじろぎながらも言った。

「いや、だってお前避けられてんじゃん。」

「そんなことない、みんなはその・・忙しかっただけだもん。」

この言い訳がましさにだんだんイライラしてきた俺はこいつに現実を見させてやることにした。

「そーかそーかじゃあ明日学校に行ったらあいさつして回ってみろよ。お前の想像とほかの奴の反応がまるで違うからよ。」

そう言った俺は倉科から離れて一人帰路に着いた。彼女が一人で何を考えているか考えずに・・・。

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俺の 私の 太陽 taroro @breath-bless

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