第3話 正体、そして・・・
「先生が例の転校生に何の注意もしなかった理由だよ。」
俺はしばしば考える。こいつはこんな情報を一体どこから集めてくるんだ?
「で、どんな理由だ?」
「聞いて驚くなよ。あの倉科ってやつは、あの倉科グループのご令嬢なんだとよ。」
「‼なんだって⁉」
倉科グループ:日本で三本の指に入る大財閥の一つ、政治やあらゆるところに強いパイプを持ち権力を行使する力を持つといわれている。
なんでこんなことを俺が知っているかって?全部聞いたんだ。
「じゃあ、この学校にもその大財閥の息がかかってるってわけか。」
「そうなるな。」
まさかここにも倉科グループの手が伸びているとは、思ってもいなかった。
「なるほど、だから普段はあんなにうるさい担任もあの子には何も言わなかったってわけか。で、そのご令嬢様は?」
と、俺たちはそろって倉科のほうを向いた。すると倉科はうつむいて座っている。
「あいつ何してんだ?」
「さぁ、授業が終わってからずっとあんな感じだぞ」
****
まだかな、まだかな?
転校初日はこうやって待っていれば私に興味を持った人たちが続々と声をかけてきてくれる。何かの本でそんなことが書いてあった気がする。
私はワクワクしながらその時を待った。
・・・けれどチャイムが鳴ってしまった。
あれ?休み時間が終わっちゃった。なんで来ないんだろう?あ、そっか、みんなきっと照れているんだ。そう思ったけど次の休み時間もその次も誰も来ない。ついにお弁当の時間になった。なってしまった。本当ならこの時間までに友達作って一緒にお弁当食べるはずだったのに。まぁいいや、今から動けば。私は近くの女の子のグループに話しかける。
「ねぇ、一緒にお弁当食べ・・・」
みんながぞろぞろと席を立ち私から離れていく。
なんで?
****
「あいつ何してんの?」
「さぁな。」
と真司が答えた。
倉科は今日の午前中の休み時間は席でじっとしてうつむいていたかと思えば、弁当の時間になったらいきなり動き出して女子に話しかけた。そのうえ女子には避けられているし、あいつはいったい何がしたいんだ?
弁当の時間が終わりに近づき授業準備が始まってもあいつは一人で黙々と弁当を食べている。
変な奴。
俺が最初に倉科に対して思った印象だ。
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