第2話 出会い
その日は朝から教室が騒がしかった。俺が自分の席に座ると真司が話しかけてきた。
「なぁ時矢、知ってっか?今日このクラスに転校生が来るらしいぞ。」
「あぁ、それでクラスの奴らが騒がしいのか。」
「なんだよ冷めてんなぁ!転校生だぞ、しかも女子!気分が上がらないほうがおかしいだろ!」
「別に騒ぐほどのことでもないだろ。まぁ男子が騒いでいる理由はわかったけど、女子は?なんで女子まで騒いでんだ?」
「あぁ、たぶんその子がどこぞの大財閥の子供だっていう噂にはしゃいでんじゃない?」
「大財閥?なんだそれ。」
「さぁな。友達になっていっぱい遊びたいとかじゃないの?女子の考えることはよくわからん。」
「まぁなんでもいいけど、物好きな奴もいるもんだな。こんな窮屈な学校にわざわざ転入してくるやつがいるなんて。」
そう、この学校は窮屈だ。私立で校則があるのは当たり前だがそれがとても厳しい。髪型や髪の色は当然のこと、制服の着方、スカートの長さ、中にはブラック校則なんてネットで騒がれたものまで様々な校則が俺たちを縛っている。
「窮屈だ。」
俺はつぶやくように言った。真司もそれを悟ったかのように口をつぐんだ。
しかしそれはチャイムと同時に入ってきた転校生を見るまでだった。
その転校生の姿はそんな窮屈さとは無縁だったからだ。その姿は、金髪のロングヘアーにかなり気崩された制服。とてもこの学校の生徒とはいえないような格好だ。これじゃあ担任は黙っていないだろうと思っていたら見たこともないような笑顔でこう言った。
「それじゃあみんなにご挨拶をお願いします。」
はぁ?
いつもの俺たちに使うような暴言で校則を守らせるんじゃないのかよ。
ほかのみんなも同じようなことを思っていたのだろうがそれは定かではない。なぜならその後の転校生の挨拶で意識がそっちへそれたからだ。
「皆さん初めまして。私の名前は倉科紗季です。途中からの編入で驚く人も多いと思いますが皆さんぜひ仲良くしてください。…ところで皆さんに一つ質問があるのですが、なぜ皆さんはそんなに地味な格好をしているのですか?せっかくの高校生活なんだから楽しまないと損ですよ。」
とウインクをする。
マジか…みんなは開いた口がふさがらなかった。
こいつは何を言っているんだ?一瞬時間が止まったように感じた。それを動かしたのは教師の言葉だった。
「さぁさぁ倉科さん、席についてください。授業を始めますよ。」
なんで注意しないんだ?なぜ普通に授業をする?様々な疑問が浮かんだが淡々と進む授業に疑問を挟む余裕すらなかった。この疑問が解けたのは、授業が終わった休み時間に真司の話を聞いた時だった。
「わかったぜ、時矢。」
「何がわかったんだ?」
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