愛のカタチは人それぞれだと思いませんか!?

ことり

初恋ははちみつ色にとろりと溶けて(BL:ショタ×ショタ)

「なんでお前泣いてるんだ?」


初音恋斗はつねれんとは校舎の裏で、膝を抱えて泣きじゃくる少年を見つけた。

今は昼休み───小学生は皆鬼ごっこやらドッヂボールやらで活気に溢れて遊んでいる。

恋斗も例外では無い。

今はかくれんぼの真っ最中で、鬼から隠れるために校舎裏に来たところで少年を見つけたのだ。

善良な恋斗は「腹痛いのか?」「保健室連れてってやろうか?」と尚も泣き続ける少年にひたすら声をかけ続ける。

しかし、少年は泣くばかりでまともな言葉も出せないようだ。

いつまで経っても視線すら寄越さない少年に業を煮やした恋斗は、やがて「こっちくらい見たらどうだ!」と少年のふっくらとした柔らかな頬を小さな両手でつつんで無理やりに顔をあげさせる。

次の瞬間、恋斗は人生で一番美しい光景を捉えて、瞬きすら忘れて見入ってしまった。


「お前の目、すっごい綺麗だな!」


恋斗の視界に映った少年の瞳は、綺麗な金色だった。

涙の水面が揺れる様子は、とろりと溶けた甘い蜂蜜にも似ている。


「え...気持ち悪くないの?」


そこで初めて少年が声を発した。

泣いているせいで上手く発声できないのか、震えた声を絞り出して尋ねる。


「なんで気持ち悪いんだ?俺こんなに綺麗なの生まれて初めて見た!俺のビー玉コレクションより綺麗だぜ!」

「でも、でもみんな、僕のこと気持ち悪いって...日本人じゃないんだって...」

「そいつらもったいないな!こんなに綺麗なのにわからないなんて...」


今までのクラスメイトとは違う反応を見せる恋斗に、少年はへにゃりと泣き笑いのような表情を浮かべた。

それを見た瞬間、恋斗の心臓は酷く音を立てる。


「なぁ、お前名前は?」

「僕?僕は蜜瑠...峰蜜瑠みねみつる...」

「蜜瑠...」


少年の───蜜瑠の名前を、恋斗は飴玉を転がすように舌の上でなぞる。


「俺の名前は初音恋斗。蜜瑠、俺のお嫁さんになってください!」


何の突拍子もない求婚に蜜瑠の涙はすっかり引っ込んでしまって、どうしたらいいかも分からずに狼狽えるばかりだ。


「お友達じゃなくてお嫁さん!?えっと、でも僕男だし、それに恋斗くんのこと何も知らないし...」

「だって蜜瑠が笑ったの見たらすっげぇドキドキしたんだもん!ドキドキは恋の始まりだって母ちゃん言ってた!」

「だけど僕は君にドキドキしてないよ...?結婚って好き同士がするんでしょ?」

「だったらこれから俺のこといっぱい知って、いっぱい好きになってくれよ!絶対に蜜瑠のこと泣かせないし、いっぱい笑わせるから!」

「んん...それなら...?」

「本当か!?じゃあまずはお友達からってやつだな!」


「よろしくな!」と笑顔で手を差し伸べる恋斗に、蜜瑠は初めての感情を抱く。

自分を差別しない、綺麗だと褒めてくれる。

嵐のように突然現れた、明るく照らす太陽のような彼に惹かれ始めているのだと。


これは初恋も知らなかった子供たちの、穢れのない純粋な愛のカタチ───






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