『ある友人から送られてきた手紙とUSBメモリの内容について』

名無しの報告者XXX ▋: ^ )

――本文

▶︎ODW-194-夕焼けの村/Village of Twilight Glow


Kさん(仮称)宛にある一通の封筒が届いた。封筒はKさんと親交のあったTさん(仮称)からのもので、封筒を開けるとシミや黄ばみなどの汚れが目立つ、極めて年季を感じさせる一枚の手紙と、黒いプラスチック製の筐体に白い文字で64GBとだけ書かれた、製造元不明のUSBが封入されていた。


Tさんは数年前から行方不明になっており、Kさんから連絡を試みても、音信不通の状態が続いていた。Kさんが最後にTさんと会ったのは、███県にあるファミレスで食事をした時だった。呼び出したのはTさんからでメールには「少し話がしたい」とだけ書かれていたという。


KさんとTさんは大学の時から交友関係があり、最初に知り合ったのは同じサークルでのことだった。KさんとTさんは映像制作を主な活動としているサークルに所属していた。二人は好みの映画の傾向や見ているアニメなどから意気投合し、良く話をしたり遊んだりする仲になったという。


Tさんは20代になる頃、両親が他界し、それ以来ずっと一人で生活していた。Tさんは基本的に一人でいることが多く、他に友達もいない様子だった。教室やキャンパスで他の学生たちがグループで楽しそうに話したり遊んだりしている中、Tさんはいつも一人で本などを読み、静かに過ごしていたという。社会的なつながりが薄く、彼は自身の世界に閉じこもりがちのようだった。家族や他に友人もおらず、彼には頼ることのできる唯一の存在はKさんだけだった。


大学卒業後2人はそれぞれ就職をし、それからは連絡などは取っていなかった。そんな10数年が経過したある日、突然Kさんから連絡が来た。


Kさんはどうやら職場での人間関係などが上手くいっていない様子で、ある種の人間不信に陥っていたようだった。「もう、何もかも疲れた」「そろそろ引っ越そうと思う」、「できればどこか遠くの方で静かに暮らしたい」などと話していたという。Tさんの口からは会話の節々に自殺をほのめかすような言葉が漏れていた。Kさんは心配し、Tさんを説得しようと試みたが、Tさんは具体的な内情を話そうとせず、その日はそれで会話は終わってしまった。


その出来事があり、三年近くが経った頃、Kさん宛に例の封筒が届けられた。


以下に、その手紙の内容とUSBに入っていた写真の内容を載せる。


――【手紙の内容】


[手紙]


Kさんへ


どうも、お久しぶりです。Tです。突然の連絡に驚かれたかもしれませんが、ご心配なく、僕は元気にしています。最近は物忘れが酷く、あなたを誰か忘れないうちにKさんにだけには、近況を報告をしておこうと思い手紙を書きました。


実は、僕は長い旅に出ていたんです。旅に出る前、僕は仕事上の人間関係のトラブルやその他の生活の問題により、酷く疲弊し鬱状態に陥っていました。そんな心の状態から抜け出すため、気分転換と自分自身を見つめ直すために旅に出ることを決めたんです。


必要最低限の物を持って、目的も無くいろいろなところを行きました。本当はこの旅の中で、僕は死ぬ場所を探していたのかもしれません。ですが、そんな時、僕はある村にたどり着いたんです。その村の住民たちは驚くほど親切で、僕のような人間を温かく迎えてくれました。僕が住む家もなくて困っていることを知ると、何人かの人々が自分たちの家を提供してくれたんです。本当に感謝の気持ちでいっぱいです。


この村には、夏の終わりを感じさせるような、ひぐらしの鳴き声が夕陽の下で響き、田舎の懐かしい感じが漂っています。夕陽が柔らかな光を放ち、田舎の風景が色づく中で、ひぐらしの鳴き声が響き渡る様子は、荒んだ僕の心に安らぎと、癒しを与えてくれます。子供の頃を思い出し、無邪気に遊んだ日々がよみがえります。


村の住民たちは、僕のことをまるで家族の一員のように、暖かく接してくれます。今まで、僕は1人でいる事が多く孤独感や疎外感を感じながら生きてきました。でも、この村ではみんなが家族のように明るく楽しく、生活を送れています。僕にとって、この村はまさに救いの場所です。


この村で過ごすうちに、僕は徐々に前向きな気持ちを取り戻していきました。今まで経験したことのない喜びや幸せを感じることができるようになったんです。酷い鬱状態に陥り、自殺を考えていたこともありましたが、今はそんな暗い気持ちから解放されています。


住民たちのおかげで、心の傷を癒し、新たなスタートを切ることができました。ここは居心地が良く、毎日が充実しています。Kさんもぜひこの素晴らしい村へ遊びに来てほしいと思っています。きっとあなたもこの場所の魅力に惹かれ、喜びを感じることができるでしょう。いつか、僕が忘れていなければですが、再会できることを楽しみにしています。


何度も書きますが、僕は今、幸せにしています。どうか、ご心配なさらぬようにしてください。お互いの幸せを願っています。


心から、Tより


敬具


――【USBメモリに保存されていた写真】


USBの中には100枚以上に及ぶ写真が画像フォルダの中に保存されていた。Tさんから送られてきた写真は全て、感光し焼けており、何年も昔に撮られたものであるかのように、傷があり、色褪せ、黄ばんでいた。外の風景が撮られた写真はどれも陽が傾いており、夕陽の明かりが田畑や周囲を囲む山々を赤やオレンジ色に照らしていた。室内を撮ったものも同様に夕陽の中にいるような光景になっており、昼や夜を思わせる写真は一枚も保存されていなかった。


https://kakuyomu.jp/users/user_nwo12n12knu/news/16817330658935079163


https://kakuyomu.jp/users/user_nwo12n12knu/news/16817330658935126845


https://kakuyomu.jp/users/user_nwo12n12knu/news/16817330658935173533


https://kakuyomu.jp/users/user_nwo12n12knu/news/16817330658935209003


Tさんのいる場所、そこは本当に"この世界"なのだろうか?、また、写真に映る人物の多くが、顔が無く、のっぺらぼうのようにも見えるのだが、これは撮影の際にピントがボケてしまったのか、その他の技術的な要因により、顔がないように見えるだけなのだろうか?


Kさん曰く、Tさんとはその後、再び連絡を取れなくなってしまった。今回は、手紙も届いてはおらず、現在まで音信不通の状態が続いている。

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