【アオ&クウ&ミー子&リリカ】 ~番外編~ みんなでASMR! ダミーヘッドマイク、空を飛ぶ!の巻

「なにコレ、生首?」

「どう見ても生首ではないですよ、ミー子。これは……マネキンの、頭?」

「いやいや、この角ばった顔はモアイ像だろ。誰だ? ハワイになんて行ってきたやつ」

「モアイ像はハワイではなくイースター島ですよ、クウ」

「ん? なんか耳のとこだけ変にリアルっさね」


『ふ~~っ』


「リリカ!? いきなり何してるんです! マネキンの耳に――」


『ふ~~っ』


「――ってするなんて!」

「そうゆうアオもやってんじゃん……。やっぱ無防備な耳見たら――」


『ふ~~っ』


「――ってしたくなるよな」

「あんたたち、さっきから何してんのよ……。そろいもそろって生首の耳に――」


『ふ~~っ』


「――って息かけるなんて」

「ミーちゃんもやってるっさね……」

「流れ的に、ってやつよ。まあ、冗談はここまでにしておいて。コレが何なのか誰も知らないみたいだから、このあたし、ミー子様が説明したげましょう」

「ミー子はコレが何なのか知っているのですか? とゆうか、知ってて「生首?」とか言ってたんですね……」

「なーんだ。新手のモアイ像じゃねぇのか」

「こほんっ。三人とも、耳をかっぽじって聞きなさい! コレはね――」

「ちょーっと待ってください、ミー子」

「何よ、アオ」

「あの、かっぽじる? かっぽじるってどうゆう意味ですか?」

「え? アオ、知らないの? かっぽじるってのはねぇ、耳かきを使って――」


『――ごぞごぞごぞ……』


「こうすることよ!」

「あぁ~、耳掃除のことですか」

「少なくとも耳掃除のことではないと思うぜ……」

「それで、ミーちゃん。コレはなんなのさね?」

「コレはね、ダミーヘッドマイクよ!」



「「「だみーへっどまいく?」」」



「そ。こうやって――」


『――耳もとで囁いたり、ふ~~ってしたりすると、面白い音が れるのよ。マルチコ部のことを村の外の人に宣伝しようと思ってね、放送部から借りてきたの』


「借りてきたんじゃないですか……。それで、この、だみーへっどまいく? を使ってどう部を宣伝しようと言うのです?」

「部活動紹介CDを作るのよ!」

「CD? PVを撮るんじゃなくて?」

「いまちまたではね、ASMRってのが流行ってるの。これを利用すれば、より多くの人にマルチコ部を宣伝できるわ」

「ASMR? どこかで聞いたことある言葉っさね」

「ASMRなら知ってるぜ。アレだろ? 脳に直接語りかけてくるやつだろ」

「その通りよ、クウ。ASMRを利用すれば、リスナーの脳にマルチコ部の存在を刷り込み――いえ、効果的に宣伝できるはずよ」

「刷り込むって……。具体的にはどうするんです?」

「いい質問ね、アオ。例えばそう。リリカ、ちょっといい?」

「なんさね」

「マイクの耳もとで、水出し梅昆布茶うめこぶちゃ淹れてくれる? 注ぐのは氷を入れたグラスにお願いね」

「かしこまりっさ」


『――からん からん からん』


「クウ、この梅昆布茶をマイクの近くで飲んで頂戴。できるだけノドを鳴らして」

「いいぜ」


『ゴク、ゴク、ゴク……』


「はい。これでマルチコ部名物、リリカが淹れる梅昆布茶を宣伝できたわ」

「な、なるほど……」

「他にもあるわよ。試しにアオ、マイクの耳もとで一眼レフのシャッターを切ってみなさい」

「分かりました」


『パシャッ、パシャッ、パシャッ……』


「ほ~ら。これで部員その2、迷える子羊ちゃんの一眼レフを紹介できたわ。きっと小気味いい音が録れてるはずよ」

「ウチもやるウチもやる!」

「いいわよ、クウ。やってみなさい」

「ウチはこのマイクをワンコのセバスチャンに見立てて」


『(わしゃわしゃわしゃ~! なでなでなで~!)』


「ちょっと、クウ! もう少しやさしく、包み込むようにぎゅってしながらなでなでしなさい! あと何か囁いて」

「へ~い」


『(ぎゅっ。なでなで)お前、ほんとに可愛いな。(なでなで)もっとなでてほしいのか? しゃーないなぁ。(なでなでなで)そういえば、ワンコって耳とかなでられるのも好きだよな?(なでなでなで……)』


「はい、おっけー」

「ふぃ~。ひと仕事終わったぜー」

「流れ的に最後はあたしね。ミー子様と言ったら、やっぱりガラケーとパソコンよ! まずはガラケーで高速文字入力!」


『カコカコカコカコ――!』


「続いてパソコンのキーボードを使ってアスキーアート!」


『カタカタカタカタ――!』


「これぞ職人のなせるワザ!」

「ただのネット沼に住む妖怪だと思うのは私だけでしょうか……」

「てゆうか、そのタイピング速度はクラッシャーの域に入ってるぜ……」

「ミーちゃんのASMR、需要あるとは思えないっさー」

「にゃ、にゃんですって!? そんなの、聴いてみないと分からにゃいでしょ!」

「これで一応全員がASMRの収録? を体験してみたわけですが……。梅昆布茶に一眼レフ、ガラケーにパソコン、セバスチャンに至ってはヒロミ農場のワンちゃんですし、こんなんで本当に部の宣伝なんてできるのですか?」

「たっ、たぶん大丈夫よ!」

「たしかにアオの言う通りだぜ。ウチら、なんか忘れてないか? 何かは分からないけど、一番最初に収録してみなきゃいけない音がある気がするんだが……」

「ワシらが、最初に収録しなきゃいけない音……?」

「私たちマルチコ部が、まず収録すべき音……」

「マルチコプター研究部を宣伝するために、あたしたちが絶対に収録しなきゃいけない音……ん? マルチコプター研究部? マルチコプター?」


「「「「あっ! ドローンの音だ!」」」」


「でも、どうやって録るんです? ドローンの音なんて」

「マイクの近くで飛ばすとか? それとも機体を手に持って、耳もとでプロペラ回すか?」

「それじゃ、ダメよ。きっとCDになったとき扇風機と聞き分けがつかないわ」

「じゃあ、どうするんさね? いっそのことドローンとマイクを合体させてみるけ?」

「ドローンと合体? そうよ! その手があったわ! ドローンにマイクを乗せて飛ばすのよ!」


「「「ドローンにマイクを乗せる~?」」」


「はらぺこ亭の料理を空輸デリバリーするみたいに、ドローンにマイクを乗せて飛ばすの。それでなか村を一周させれば、飛んでるドローンの音が録れるじゃない! しかもプロペラ音だけじゃなく、空から聴く井ノ中村の音ってのも録れるわ!」

「村の音も録れれば、マルチコ部だけじゃなくて村の、ひいてはカワズ女学園じょがくえんの宣伝CDにもなるかもしれませんね!」

「その通りよ!」

「そうと決まれば、早速飛ばす準備を始めようぜ。ウチがドローンオペレーターやるからよ」

「んじゃ、ワシはダミーヘッドマイクを改造して、みんなのFPVゴーグルと接続ペアリングさせる!」

「私、飛行ルート考えます!」

「なら、あたしは音響チェックやるわね!」

「なんか忙しくなってきたぜ!」

「こうゆうときはアレっさね」

「ミー子部長! 円陣えんじん音頭おんどをお願いします!」

「任せなさい! それじゃあマルチコ部~、てぇ~~く」



「「「「おーーーーふっ!!!!」」」」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

あおぞらどろーん! 弐護山 ゐち期 @shinkirou

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ