【アオ&ミー子&リリカ】三者三葉! 休みの日の過ごし方! (ウチはそうだなぁ。晴れの日は釣りとか山菜採りとかしてるかな。雨の日は朝から晩までアクション映画観てるぜ!)
カワズ
部活動単位で集まる場所は、学園の敷地内にある別棟のクラブハウス。マルチコ部も例にもれず、様々な部室ひしめくクラブハウスの一画を拠点に活動しているのだった。
「お疲れさまでーす」
「おいっすー、アオ。お疲れさまー」
「やっほー、アーちゃん」
「あれれ? 今日はまだミー子とリリカだけですか? いつも一番乗りのクウが来ていないなんて、珍しいこともあったものですね」
「クウはね、いま裏山に行ってるわ」
「裏山?」
「ラジコン部がまたクーちゃんにレースを挑んできたんさー」
「またですか……。今度は何と戦うんです?」
「ゼロ戦よ。今度こそラジコン部史上最速らしいわ。なんかね、モーターじゃなくてエンジン積んでるんだって」
「エンジン!?」
「でもま、今回もクウのドローンが勝つんでしょうけど。これくらいのハンデがあった方が、あの電撃カミナリ娘も楽しめるんじゃない?」
「クーちゃん、いきなりレースを仕掛けられたのに『勝負を決めるのは
「たしかに、私たちの中で一番上手くドローンを扱えるクウが負けるはずありませんよね。今までだって一度もラジコン部に負けたことはありませんし」
「そうそう。だからあたしたちはこうして、いつもどーり
「なるほど」
「少し待っててね、アーちゃん。いまアーちゃんの分の梅昆布茶淹れるから」
「ありがとうございます、リリカ」
「なんもー」
「ところでミー子。二人は私が部室に来るまで何をしていたのですか? 机を見たところ、湯飲みの他にノートパソコンとプロポ、FPVゴーグルが置いてあるようですが」
「あぁ、これね。リリカが面白いゲーム作ったから遊んでたのよ」
「面白い、ゲーム……?」
「簡単に言えばドローンの操作シミュレーターよ。パソコンに接続したプロポをコントローラー代わりに、仮想空間内でドローンを飛ばすの。ドッグファイトモードってのもあってね、敵のドローンを機銃で撃ち落とすモードなんだけど、FPVゴーグルつけてプレイしたらさ、これまたすごい臨場感あって面白いの」
「なんだか、クウが好きそうなゲームですね。って、毎度のことですけど、リリカのスペック高過ぎません!?」
「ほんとにね。本人は趣味で作ったって言ってるけど、これは間違いなくお金取れるレベルよ。このゲームをうまく使えば、ひと儲けもふた儲けも……くひっ、くひひひひ。部費が捨てるほど入ってくるわ!」
「冗談じゃないくらい悪い顔してますよ、ミー子……」
「――ほいさー、アーちゃん。湯飲みここに置いとくっさねー」
「どうもです、リリカ」
「ミーちゃんの笑い声が聞こえたけども、いまなんの話をしてたんさね? ワシもまぜてー」
「何を話してたかって言いますと、それはその、つまり……」
「リリカはすごいって話をしてたのよ!」
「でも、ブヒ? って聞こえたような……。ワシはてっきり、この前行ったヒロミ農場の話かと」
「そ、そぉーです! ブヒです! ブヒブヒです! ブタさんのお話です!」
「そうよ! アオの言う通りよ!
「かねもうけ? かねもうけってなんさね?」
「ちょっ、ミー子!? いいですか、リリカ。いまの発言は忘れるのです。記憶から抹消するのです!」
「ワシの頭、そんなに都合よくできてないんだけども」
「とーにーかーく! リリカはすごいし、マルチコ部にはなくてはならない戦力って話をしてたの!」
「勢いでゴリ押し!?」
「もー、ミーちゃん。そんなに褒めないでくれっさね~」
「ゴリ押された!?」
「真面目な話、趣味でこんなハイクオリティなゲームを作っちゃうなんて、リリカは本当にすごいと思うわ」
「それには私も同意見です。リリカは休みの日とか何してるんです? ずっとこうゆうゲームを作っているのですか?」
「別にそんなことはないっさよ。プログラミングは気が向いたらやるくらいで、いつもは
「魔改造って……。リリカらしいと言えば、リリカらしい趣味ですね」
「そーゆーアーちゃんは休みの日、なにしてるんさ?」
「私ですか? そうですねぇ……一眼レフの手入れをしたり、撮りためた写真を整理したり、カメラ雑誌を読んだり、でしょうか。あっ、そうそう。最近は動画編集なるものを勉強し始めましたよ。これでも一応、マルチコ部の空撮担当なので」
「へ~え。やるじゃない、アオ。撮るだけじゃなくて編集にも手を出すなんて、感心感心。うちだけで撮影から編集までできるようになれば、放送部にわざわざ外注しなくてもPVを作れるようになるわね。そうすれば外注していた分のお金が浮いて、さらに顧客から編集費も徴収できるから……うひっ、うひひひひ……!」
「まーた悪い顔してますよ、ミー子。そうゆうミー子は何してるんです? 休みの日」
「あたしはね、サーフィンよ!」
「「さーふぃん!?」」
「ミーちゃん、さーふぃんってあのサーフィン?」
「あのサーフィン!」
「長い板のうえに腹ばいになって」
「サーフボードのうえ、ね」
「手でパシャパシャ水をかいて、沖のほうに出て」
「パドルしてゲットアウト、ね」
「後ろから来た大波に乗るっ! ってゆうアレ?」
「それを言うならビックウェーブにテイクオフッ、よ! リリカ」
「ていくおふっ! なんさね、ミーちゃん!」
「ちょちょちょちょ、待ってください! そもそもこの村には海なんてありませんよね!? 海なし村でどーやってサーフィンをするというのです! というか、リリカ! ミー子のノリに
「ごめん、アーちゃん。理性がどこかにていくおふっ! してたっさー」
「ていくおふっ、って……。ミー子、どうゆうことか説明をお願いします」
「あたしが休みの日にしてるのはね、サーフィンはサーフィンでもネットサーフィンよ!」
「ねっとさーふぃん?」
「まずノートパソコンを片手にサーフボードという名のベッドのうえに寝転がります」
「ベッドに、寝転がる……?」
「次にパドル――つまり、起動したノートパソコンのキーボードを指でぱちぱちして、情報の海にゲットアウトするの」
「キーボードをぱちぱち? って、もしかして、さっきリリカが言った『水をパシャパシャ』にかけてます?」
「あとは次に来るだろうトレンドという名のビックウェーブを予想して、みんなより先に――」
「ていくおふっ!」
「そ。リリカの言う通りテイクオフッ! するのよ」
「その言葉、ずいぶんと気に入ったみたいですね、リリカ……。それじゃあミー子は、休みの日はゴロゴロとネットばかりやっているのですか?」
「ゴロゴロって……。なんだか分からないけど、心にグサリと来るものがあるわね……。たっ、たしかにゴロゴロしてるけど、あたしだって他にも色々やってるわよ!」
「たとえば?」
「ネトゲにログインしたり」
「あとは?」
「スレッド立てたり」
「他には?」
「ネットニュース流し読みしたり」
「ぜんぶネットじゃないですか……」
「もしかして、あたし、ネットやり過ぎ? でも楽しいわよ、ネトゲとか」
「聞けば聞くほど、スポーツのサーフィンとはまったくの別物なんですね、ネットサーフィンって。インドアだし、ぜんぜん身体動かさないし」
「うぐぅっ!」
「まあまあ、アーちゃん。休日の過ごし方は人それぞれっさー」
「そうよ、アオ! アオだってネットの沼にハマれば、ちょっとはあたしの気持ちが分るわよ!」
「情報の海、なのではなかったのですか」
「あなたがネット沼に落としたのはレベルがカンストした金のアカウント? それともスレッド立ちまくってる銀の掲示板? 正直者のアオにはどっちもあげるからこっちにおいで~」
「何も落としてないし、沼に引きずり込む気満々だし……。これはもう、沼に住む女神というより」
「誰がネット沼の妖怪よっ!」
「まだ何も言ってませんし、別にそこまで言うつもりもありませんでしたよ!」
「はいはい、二人とも。言い争うのはそこまでにするっさね。こうゆうときは、マルチコ部らしくドローンで白黒つけるっさー」
「「ドローンで、しろくろ?」」
「ワシが作ったゲームの、ドッグファイトモードを使うんさよ。敵の設定をNPCから対人に変更して、アーちゃんvsミーちゃんの仮想空中対戦をするんさね!」
「あたしは別に構わないわ。シューティングゲーとか得意だし」
「私も別に構いませんよ。とことん相手になって差し上げましょう」
「それじゃあ早速、アーちゃんの分のプロポとFPVゴーグルをパソコンに接続してっと。二人も準備しといてくれっさね」
「ネット妖怪の実力、とくと思い知るがいいわ!」
「そんな妖怪は即刻悪霊退散です!」
「二人とも、用意はできたっさか?」
「いつでも始めて頂戴!」
「右に同じくです!」
「それでは、第1回マルチコ部チキチキ仮想空中対戦を始めるっさー」
「勝負よ、アオ!」
「望むところです、ミー子!」
「カウントダウン開始っさ~。3、2、1、どろ~ん――」
「「「――ていくおふっ!!」」」
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