【クウ&ミー子&リリカ】誰がどれ? 動物いっぱいヒロミ農場! ~後編~ (どうしましょう、完全に迷いました……。またミー子に叱られてしまいます。そうだ! あそこで道草食べてる方々に訊いてみましょう!)

 カワズ女学園じょがくえん入学時に選択できる学科は、普通科、農業科、商業科、工業科の4つ。村役場の運営や商店の経営、通信網の整備、酪農に畜産、畑作に稲作など、各学科の生徒がそれぞれの強みを生かした役割を担うことで、なか村は維持されている。

 また、カワじょには多種多様な部活動が存在し、バスケ部や軽音部などの一般クラブはもちろんのこと、狩猟マタギ部や山釣り同好会といった特殊クラブへの入部も可能である。そんな数ある部活動の中でも特に異彩を放っているのが、4人の異名持ちネームドたちで構成されるマルチコプター研究部――通称、マルチコ部なのであった。



「こんちわーっす!」


『ンモォ~~~』


「さすがは牛舎ぎゅうしゃってだけあって、ウシさんいっぱいいるっさー」

「でも、ここにアオはいないみたいだな」

「――ゼェ、ハァ……ぜぇ、はぁ……。あ、あんたたち、ちょっとは待ちなさいよ……」

「おいおい、ミー子。疲れすぎだって。そんなに走ってねーだろ。体力なさ過ぎなんじゃねぇ?」

「あたしはね……頭脳労働、専門なのよ……」

「というより、ただ単にのつけ過ぎだと思うんだが」

「ちょっ、それはどうゆう意味よ! クウ!」

「どうもこうも、なぁ? リリー。リリーもそう思うだろ?」

「ほんとっさね。神様は不公平っさー」

「なあ! リリカまで!」

「ミーちゃんの半分、いや3分の1でいいから、ワシにも分けてほしいっさー」

弱冠じゃっかん17歳にしてそのスタイルはなぁ。歩く電波塔というか、歩く青少年保護育成条例違反というか……」

「は、はぁ? 二人ともなに言ってんの?」

「これだから無自覚で持ってるやつは……」

「持たざる者とは、一生分かり合えないのっさね」

「あ、あんたたち!? 変な目でジロジロ見ないでよ! 恥ずかしいじゃない!」

「てぇーことで、ミー子。ウシへの聞き込みは任せたぜ」

「何がてことで? それよか、聞き込みって何!?」

「たしかにクーちゃんの言う通りっさね。ミーちゃんのはウシさんというより、たわわに実ったメロンっぽいけど、ワシらの中だったら一番ウシさんと話ができそうっさー」

「さっきから何言ってるの、リリカ!? というか、聞き込みとか話をするとかってなんなのよ!」

「もしかしたらさ、ここに写真撮りに来てたかもしんねぇじゃん、アオ」

「だったらどうしたっての?」

「牛舎を出てどっちに行ったとか、見てるかもしれねぇじゃん? ウシたちが」

「だから?」

「ウシにアオを見てないか聞き込みするってわけ」

「するってわけ、じゃないでしょう! なーに突拍子もないこと、当たり前みたく言っちゃってくれてんのよ!」

「ミー子様の実力ってのは、その程度のもんなのか?」

「はぁ?」

「あたしはどんな情報も取りこぼさない、って言ってる割に、情報源は人間だけなのかよ? 動物が持ってる情報はミー子様の守備範囲外なのか? あ~あ、見損なっちまったぜ、ミー子。所詮はこんなもんだったのか……」

「見損なった? 所詮はこんなもん? ずいぶん好き放題言ってくれるじゃない、クウ」

「だってそうだろ?」

「いいえ、違うわ。あたしはどんな情報も取りこぼさない。例えそのソースが動物だったとしてもね。ミー子様の情報網ネットワークは、種の垣根さえも越えてこの村全体に広がっているの。いいでしょう。そこまで言われちゃ仕方がないわ。このあたし、ミー子様の本当の実力を今から見せてあげようじゃない!」

「チョロいなー、ミー子」

「ふぁいとっさー、ミーちゃん」




「――モ、モウ? モウモウ?」


『ブモォ~~~』


「モモウ?」


『ンモォォォォオ』


「モー! モーモーモモモ?」


『ムォーー!』


「オッケー、オッケー。ご協力、どうモォ~」




「ふうっ、終わったわ。あたしの手にかかれば、ウシへの聞き込みなんて朝飯前なんだから」

「で? ウシ、なんて言ってた?」

「栄養満点で美味しい、ヒロミ農場の牛乳をどうぞよろしくって」

「ずいぶんと宣伝熱心なウシだな……」

「あと、アオのことは見てないって」

「てことは、アーちゃんは牛舎には来てないんさね」

「そうらしいわ」

「んじゃ、牛舎での聞き込みはこれで終わりってことにして、次行ってみよーか」

「今度は走らないでよね」

「わーってるって」




「――やっぱ、牧場と言ったらウマだよなー」

「クーちゃん、ここは牧場じゃなくて農場っさー」

「牧場も農場も大体おんなじだろ、たぶん!」

「なんてテキトーな……。でもまぁ、クウの言ってること、あながち間違ってもいないんだけど」

「吹きすさぶ砂の風! 睨み合う保安官とカウボーイたち! 両陣営の間を転がってゆくタンブルウィード! 気分はそう、OK牧場!」

「あんた……ほんと好きよねぇ、そうゆうの」

「ウマに乗って武装ゲリラと銃撃戦するのでもいい!」

「クーちゃん、それは牧場も農場も関係ないやつっさ……」

「とにかく! 次はうまやにやって来たぜ!」


『ヒヒーーンッ!! ブロロロロ……』


「そんじゃ、リリー。さっそく聞き込みのほう頼んだ」

「えっ、ワシ!? 話の流れ的にクーちゃんなんじゃ……。ワシ、ウマさんみたいにおっきくもないし、筋骨隆々きんこつりゅうりゅうって感じでもないし。でも、ウマさんに聞き込みさせてもらえるってのは、まんざらでもないっさね。喜んで一肌脱がさせてもらうっさ! こほんっ。ヒヒ――」

「あっ、聞くのはこのウマじゃない。隣の部屋にいるやつ」

「隣の部屋? 隣ってなんさね」


『ヒーン! ブハッ。ヒンヒーンッ!』


「ちょっと、クウ。これ、ポニーじゃない。たしかにウマなことはウマだけど……」

「リリーが乗ったら絶対に可愛いと思わねぇ? まさにリリー専用のおウマさん!」

「ワシ専用ってどーゆー意味っさ!」

「アオ見つけたら、ポニーに乗ってるとこ必ずパシャってもらおうな、リリー」

「写真なんてぜったいに撮ってもらわない!」

「えー、頼むよぉ。想像しただけで滅茶苦茶かーいいんだから、リアルはもっとかーいいって! なっ、頼むぜカワイ子ちゃん」

「イーっだ! ぜったいに乗ってやらないっさ」

「あとでヒロミ農場ソフトクリーム買ってあげるから」

「げ、限定!?」

鶏卵けいらんを使用したクッキーもつけるぜ」

「げんせん!? とくせい!?」

「あとはそうだなぁ、蹄鉄ていてつキーホルダーもつけようじゃないか!」

「ぷれみあむ! とくそうばん! はわわぁ~~……!」

「乗ってくれるか?」

「……じゃあ、一回だけ、乗る。ほんとに一回だけだかんね」

「おうよ!」

「なんなの、このやり取り……」

「んじゃ、気を取り直してポニーへの聞き込みいってみよー!」

「おーー!」

「何だかんだでノリノリね、リリカ……」




「ぽ、ぽにぽに?」


『ヒィィィィイ、ブヒーンッ! ブフォフォフォフォフォ……』


「ぽーににぽー? ぽーにー?」


『ニヒィィィイ、ブハッ。ンネヒーーーン、ブボボボボ……!』


「ぽーにっに! ぽにぽーに! ぽにぽーぽにぽに!!」


『ヒヒヒーーンッ!』


「そうけそうけ。ポニーさんも大変なんさなぁ。ありがとー。めっちゃ助かったっさー」




「すごい話し込んでたけど、ポニーはなんて言ってたの? リリカ」

「えっとね、要約すると『オイラはウマの子供じゃねえ! 子供用のウマでもねえ! 好きで幼児体型やってんじゃねえ!』だそうっさね」

「ちっちゃい者同士、まさに馬が合ったってわけね……」

「それ以外にはなんか言ってなかったか? リリー」

「他にはね、『ヒロミ農場イチオシ! 馬油ばーゆシャンプーとリンス、お土産ブースにて絶賛発売中! ぜひ買ってくれよな!』だって」

「ウシに続いてポニーも宣伝してくるとは……。ここの動物はみんな商魂しょうこんたくましいのか!?」

「あっ、そうそう。ワシら3人以外に知らない顔は見てないとも言ってたっさー」

「つまり、アオはうまやにも来てないってわけね。あの子ったら、ほんとにどこほっつき歩いてるのかしら」

「ほいじゃ、ぱっぱと次いこーぜ! 動物はまだまだたくさんいるんだからな! こっからは巻きでいくぜ!」




うまやの次は鶏舎けいしゃだ!」

『コケッ、コッコッコ、コケッ――コッケコッコーー!』

「ダメね、3ぽ歩いたら忘れちゃうから覚えてないみたい……」


「お次は豚舎とんしゃ!」

『ンゴッ、ンゴッ……ピギィーー!』

「見てないって言ってるっさー」


「次はヤギ小屋!」

『メェェェエ! メェェェヘヘヘェ!』

「ここにも来てないみたいだな」


「次! アヒルプール!」

『グワァー、グワァ―。グワップ、グワップ、グワップ、グワップ、グワァー』

「ここもダメだわ。それはそうと、どうして大抵の農場にはアヒルがいるのかしらね? どうゆう目的で飼われてるのかちょっと気になるわ」


「アルパカハウス!」

『プゥ~、プゥゥ~。プププゥ~~~』

「アーちゃんのことは知らないそうっさね。てゆうか、アルパカさんがこんな声で鳴くとは知らんかったっさー」


「原っぱにいたロバ!」

『ゴーヒィー、ゴーヒィー、ゴーヒィー……!』

「なんつーか、全力疾走した直後みたいなゼェハァした鳴き声だな……。つか、ここにもアオ来てねぇのかよ! さすがにウチも疲れてきたぜ……」



『――ワンッ!』



「わん? あぁ、なんだ、セバスチャンか……」

「今さらだけど、なーに勝手に牧羊犬ぼくようけんに名前つけてんのよ、クウ」


『ウーッ、ワンワン! ハッ、ハッ、ハッ、ハッ……ワワンッ!!』


「ねぇ、クーちゃん。セバスなんか言ってるっさね」

「セバスって……」

「え? なになに?」


『ワンッ! ワンワンッ!』


「ほうほう、フムフム……」


『ワォーーンッ! ワフッ!』


「おいマジか!」

「どうしたの? クウ」

「セバスはなんて言ってるんさね?」

「見つけたって、アオのこと。向こうの草原で。案内するからついて来て、だってさ」



 ――メェー。



『メェー』 『メェー』 『メェー』 『メェー』

 『メェー』  「めぇー」  『メェー』  『メェー』

   『メェー』  『メェー』  『メェー』  『メェー』



「あ、ほんとにいたわ。ヒツジの群れに1頭だけ違うの混ざってるわ」

「アオは一体、ヒツジの群れの中で何してるのかしら?」

「ヒツジさんの前にしゃがみ込んで……う~ん。よく見えないけど、なにか話してるみたいっさね」

「もしかして、帰り道訊いてるんじゃねぇか?」



「「あぁ~~」」



「それじゃあ、クウ」

「クーちゃん」


「「今すぐ迷える子羊を確保ッ! よぉい、どんっ!」」


「うーっ、わわんっ!」

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