【クウ&ミー子&リリカ】誰がどれ? 動物いっぱいヒロミ農場! ~前編~ (誰がどれって、一体どうゆうことでしょうか? そんなことより、ココはドコ……?)

 ここは、周りをぐるりと山々に囲まれた陸の孤島――なか村。村役場をはじめ、商店に食事どころ、駄菓子屋さんに至るまで、村のほとんどが『カワズ女学園じょがくえん』の生徒により運営されている学園化村落。

 昔からこの村に住むおじいちゃん、おばあちゃんの知恵を借りながら、カワじょの生徒は日頃から様々な活動に取り組んでいる。自分たちの活動を村の内外の人間に知ってもらうため、生徒たちはときどきPVの撮影をマルチコ部に依頼するのだった――。



「――ちょ、もちょこっ……もちょこいっさね! きゃはは!」

「リリーのことがずいぶんと気に入ったみたいだな、そのワンコ」

「顔を舐めるのはもうやめっ――クーちゃん、見てないで助けて! ほんとにもちょこ――きゃははは!」

「しゃーないなー。ほれ、ワンコ。その辺で許してやってくれ」


『ワンッ!』


「おっ、聞きわけがいい」

「だ、だずがっだぁ~~!」

「大丈夫か? リリー。顔、べちょべちょだぜ」

「まんずエライ目に遭った……」

「にしても、なんで農場にワンコがいるんだろうな? お前、どっから走って来たんだ?」


『ワンッ! ワンワンッ!』


「へぇ~、向こうの原っぱのほうから走ってきたのか。そりゃ大変だったなー」

「大変だったのはこっちっさね」


『ウーッ、ワワンッ!』


「なになに……リリーともっと遊びたい? だってさ、リリーさん」

「もちょこいのは、もうイヤっ!」

「だってよ、ワンコ。くすぐったいのはもう嫌だってさ。残念だったな」


『クウゥ~ン……』


「んじゃ、代わりにウチがわしゃわしゃしてやんよ。ほ~れ、わしゃわしゃわしゃわしゃー!」


『キュン、キュウゥ~ン……』


「そうかそうか、そんなに気持ちーか。お腹まで出しちゃって、ほんと可愛いやつだな~。よし! お前の名前はこれからセバスチャンだ! いくぜ、セバスチャン。もっかいわしゃわしゃわしゃ~!」


「――なーにのんきに牧羊犬ぼくようけんと遊んでんのよ、クウ」


「お! やっと帰ってきたか、ミー子」

「……ミーちゃん。農場ファーム部との打ち合わせ、お疲れ様ぁ……」

「お疲れー。って、なんかリリカのほうがあたしより疲れてない?」

「色々あったんさー……」

「ちょっと、クウ。あたしがPV撮影の打ち合わせに行っていた間、リリカに何があったわけ?」

「別になんもねーよ。ただ走ってきたワンコと触れ合ってただけだぜ。まあ、知らない人が見たら襲われてるように見えなくもなかったけどな」

「そう見えてて、どうしてすぐに助けてくれんのさね! ワシ、もちょこすぎて死にそうだったのに……!」

「だって、ウチにはほのぼのしく見えてたんだもん。原っぱでおっきなワンコとたわむれてるちっちゃな子供って感じでさ」

「んにゃあ! ワシは子供じゃないっ!」

「わーってるって。見ため飛び級小学生だなんて、まだ一言も言ってねーだろ」

「いま言ったっさ! いま!」

「はいはい二人とも、そこまでにしときなさい。これからロケハンなんだから、ケンカなんてしてる場合じゃないわよ。みんなで力を合わせて――って、ん? みんな? アオはどこ?」

「なに言ってんだよ、ミー子。アオならそこで一眼レフをいじって……って、あれ!?」

「どこにもいないっさー」

「まったく、二人もついていながら……。いーい? 二人とも。今日はドローンを使ってここ『ヒロミ農場』のPV撮影をするのよ? そのためのロケハンをこれからするってのに、初っ端からアオを見失うなんて。一眼レフでの写真撮影に夢中になって勝手に迷子になるアオもアオだけど、あんたたちもあんたたちよ。牧羊犬とじゃれてるヒマがあるんなら少しは――」

「ちょ、ミーちゃん、説教するのは待ってほしいっさー」

「なぁに? リリカ。言い訳ならあとにして頂戴。そうね、明後日あたりになら聞いたげてもいいわ」

「でも……」

「デモもストもありません!」

「いや、だから……」

「ダカラもポカリもヘチマすいもないわ!」

「ヘチマ水って……。というか、ミーちゃん。さっきから言い回しが古すぎっさね。いったい何歳いくつなんさ」

「みんなと同じ17だけど?」

がわじゃなくて中身の話っさ……」

「え?」

「まあ、そんなことはどうでもいくて、いい加減ワシの話を聞いてほしいっさね」

「何よ、そこまで言うなら言ってみなさいよ」

「実はこんなこともあろうかと、アーちゃんの一眼レフにGPSをつけておいたんさ。首にかけるストラップのとこに、バッジ型のやつ」

「いつの間にそんなものを……」

「みんながクラブハウスで機材とかの準備してたとき、ヒマだったからちゃちゃっと作ったんさー」

「さすがは『工業科の小さな発明王リトル エジソン』ね……」

「ミーちゃん。ワシにちょっぴしガラケー貸してみ」

「いいわよ。はい」

「ピポパポピポパっと……」

「何してんだ、リリー?」

「『迷子の捜索アプリ』をダウンロードしてるんさね」

「ほへぇー。世の中にはマニアックなアプリもあるもんだ」

「これもさっきワシが作ったんさー」

「リリー、なんて恐ろしい子……。無駄にスペックが高すぎるぜ……」

「ほい! ダウンロード、で~けた」

「それで? リリカ。アオは今どこにいるのよ?」

「ええと……、少なくとも『ヒロミ農場』のどこかにはいるみたいっさね」

「いるみたい、ってそれはどうゆうこと?」

「悪用防止とプライバシー保護のために、大ざっぱな位置しか分からないように設定してあるんさー」

「つまり、この農場のどこかって以外、何も分からないってわけ……?」

「ご明察! そうゆうことっさー」

「意味なくはないけど、限りなく意味ないじゃない! そのアプリとGPSッ!」

「まあまあ、ミー子。いいじゃねえか」

「何がいいってのよ、クウ! ドローンは今、農場の受付コテージで充電中なのよ? いつものように空からは探せないのよ?」

「だけどさ、この農場のどっかにはいるんだろ? そんなに広くねーし、ロケハンしながら歩いてりゃ、そのうち見つかるって」

「んだんだ。『海なし村の小さな農場。なのに名前は、大きい海で大海ヒロミ農場!』って、うたい文句にしてるくらいっさー」

「ま、まぁ……たしかにそうかもしれないわね。どうせ見て回るんだし、歩いて探すことにしましょうか」


「「異議なーしっ!」」



(ふぃ~、危なかったぜ~。ミー子の説教、始まるとマジ長げぇんだよなー)

(ミーちゃんが説教のこと思い出す前に早く探すっさー)



「二人とも、なにコショコショ話してんの?」


「「なっ、なんでもないです!」」


「ふ~ん」

「セ、セバスチャン! 一緒に手分けしてアオを探してくれ! この農場のどっかに、カメラ持った女の子がいるはずだから!」


『ワンッ!』


「よし! セバスチャン、GOーッ! リリー、ウチらも探すぞ!」

「かしこまりっさね」

「ちょ、二人とも!? 待ちなさいっ!」

「まずはあそこの牛舎ぎゅうしゃからだ! よぉい、ドンッ!」

「どんっ!」


「こらーッ! 待ちなさ~い!」

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