鮮やかに思い出駆けるサイコバニー


 私はあの日を振り返る。
 蒸せる夏の夜、うさ耳のカチューシャをつけたリっちゃんの「とってきて」という言葉に、努めて平静を装っていたあの日のことを――


 眩しいな、というイメージを受けました。
 舞台からはまったく眩しさなんて感じないのに、どうしてなのだろうと考えました。
 しばらくして「ああ」と得心がいきました。
 この作品が「忘れられない思い出」というものを、とても的確に表現しているからなのだろうと。

 幾ら経っても印象に残る思い出。
 姿も声も既に記憶の向こう側なのに、ふとした拍子に現れて、強烈な印象を与えてゆく。
 良いものか悪いものかは関係なく、これからも彼女の片隅に残り続けるのでしょうね。