水筒にさんぴん茶詰める六月よ

秋保千代子

水筒にさんぴん茶詰める六月よ

日常と非日常との間には千五百十三キロメートルの距離


三線とチャンプルーしよう 君は今 君から離れているんだから


エメラルドグリーンとコバルトブルーなんて言葉じゃ足りないんだよ美ら海は


潮騒が電車の音より大きくて眠れぬ朝に 海鳥ダンス


朝昼晩で海岸線が変わるから 本をかかえて動けずにいた


月と地が綱引きを止めずにいることを 宇宙の神秘と呼べるだろうか


引き潮に惹かれて海に踏み込んだ 蟹さん蟹さんどこへ行ったの


王様が褒めた原っぱ 風吹けど人が歩けど虫は飛ばない


思い込み 窓を開けたら沢山の虫が我が身に降り注ぐはず


白波とカチャーシーする空容器 いつも飲んでる栄養ドリンク


ビニールが美ら海の泡になれたなら今も地球は冷たいままか


いつだって地球は丸くて日常と非日常とがむつみ合ってる


洪水も土砂災害も 概算で三千九百キロメートルの彼方かなたより


人類はいつまで経っても満たされない 警告の書がまだ開けられない


生きるためサーターアンダギー味わった蟻ごと収めた私の腹よ


正殿が見下ろした海はもう遠い 埋めちゃったのさ仕方ないのさ


後悔も反省も夢も満足も ようると偉人は言った


潮騒は羊水の音に似ているか 生まれ変われとうそぶいていたか


人生は変わらないんだよ めんそーれ 窓いっぱいの東京夜景


水筒にさんぴん茶詰める六月よ 破滅に向けた抵抗となれ

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水筒にさんぴん茶詰める六月よ 秋保千代子 @chiyoko_aki

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