煙草とキスと旅行
西しまこ
山ちゃんとあず
「ねえ、山ちゃん。ちゃんと煙草は消しておいてよ」
「あ、ごめん。消してなかった?」
「消してなかったよー。危ないよ」
「ごめんごめん」
「ほんとはさ、あたしの部屋の中で吸うの、嫌なんだから」
「でも、ベランダも駄目なんでしょ?」
「うん。お隣さんとかから苦情来ると困るしね。換気扇の下にしておいて」
「分かった。……ごめんね」
「うん。ちゃんと火を消しておいてね。……でもさ、止めるのが一番いいんだけど」
「あ、また、そういうこと、言う」
「だけど、身体によくないんだもん。煙草のにおい、するしさ」
「そんなに?」
「うん……キスも煙草の味するよ。煙草の味じゃないキスがいいなあ」
「煙草の味じゃないキス……誰としたの? 浮気?」
「バカじゃないの。そういう意味じゃないよ」
「だってー。心配じゃん?」
「心配なのは、そういう発想! 全く」
「あず……」
「ん……! ちょ、ちょっと待って」
「……だって……」
「んんっ……! ちょ、……ん……っ、だから、今日は!」
「あず~」
「抱きつかない! 今日は旅行の計画立てないと! 今日こそは! だって、ホテルの予約とかしないと。もう日にちないよ。……あん、もう!」
「だってだって~。いつ、他の男としたんだよう」
「それは、山ちゃんに会う、ずっと前……ちょっ」
「……あず、だいすき」
「……ちょ、ちょ、ちょっと! ねえ、旅行、いかないの? せっかくいっしょに休みとれるのに。行かないなら、あたし違う予定入れるけど?」
「うう。冷たい」
「冷たくない! ホテル予約しようよ」
「……うん。……ねえ、おれのこと、すき?」
「……ほら、どのホテルにする?」
「おれ、あずといっしょなら、どのホテルでもいい」
「あ、そういうずるい答え嫌いです。ちゃんと選んでよ」
「……これがいい」
「うん、いいね。雰囲気いいところがいいよね」
「そうそう」
「楽しみだよね」
「うん、楽しみ」
「ねえ、ちゃんとすきだよ?」
了
一話完結です。
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☆関連したお話☆
「山ちゃんとあず」
https://kakuyomu.jp/users/nishi-shima/collections/16817330658271138571
煙草とキスと旅行 西しまこ @nishi-shima
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