第2話

「本当にここであってるのか……?」


 先ほどまでいたソルセルリー王国から離れ、トラバント王国に来たんだが……。俺は懐疑心を抱いた。あまりにも家が大きいし、外装がとても派手だからである。間違えてたら恥ずかしすぎるだろ。そんなことを思いつつ、家の前に立っていると、扉が開いて中からメイドらしきひとが出てきた。


「中へお入りください」


 その言葉に従い、俺は家にお邪魔した。一般庶民の家にメイドさんがいるわけがない。これはつまり……そういうことだ。


 中に入るとメイドさんに案内されある部屋の椅子に座って待ってるように言われた。どんな人が依頼人なのだろうか。怖くないといいなあと切実に願う。扉の開く音がした。そちらのほうを向くと見た目は若々しく、スラっとした体型の男の人が立っていた。


「はじめまして、ライクさん。私は依頼人のシュティーア・エヒト。一応この国、トラバント王国の王やってます。よろしくね」

「は、はじめまして、よろしくお願いします…………え?」

「どうしたんだい? あ、そこまで敬語とか気にしなくていいよ」

「この国の王……?」

「うん、そうだよ」

「あのお、つかぬことをお聞きしますが、私が教える人って……」

「私の娘だね。でも王位は他の息子に継承させるよ。やりたくないみたいだから」

「…………」


 俺の生徒王女様かよぉぉぉぉぉ!

 

「早速だが依頼の話に入ってもいいかな?」

「も、もちろんです」


 動揺を隠しながら答える。あまり深く考えないようにしよう。


「光魔法を教えてほしいのは先ほど言った私の娘なんだ。適正は私と違って光属性で教えてくれる講師がいなくてね……」

「確かに、光魔法の講師はあまりいないですからね。そもそも光属性の子は諦めて魔法師以外の道を進む人も多いですし」

「でも娘がどうしてもグロース学園に行きたいみたいでね」

「グロース学園ですか。あそこは実技を結構重視しますよね」


 シュティーアさんも悩ましい顔をしているグロース学園は世界でもトップレベルの魔法学園だ。そのため入試も難しく、倍率もとても高い。正直かなり光属性の人にとってはきつい学園だ。


「そのために君に来てもらったんだ。といってもそこまで重く受け止めなくていいよ。でもどうしても娘を学園に行かせたいんだ……」

「もちろんは娘さんのために全力を尽くします」

「ありがとう。ということで話も終わったし、娘に会ってもらおうかな」

「は、はい」


 ついに本人にあうのか、少し緊張するな。どんな子なのかな。


「ルーチェ、こっちに来て。家庭教師の人が来たよ」

「わかりました!」


 元気よく声が聞こえる。足音が聞こえてくる。やがてその音が止むと……。


「はじめまして、私はルーチェ・エヒトと言います。よろしくお願いします!」

「はじめまして、ライト・ファルシュです。よろしくお願いします」


 白髪で髪型はツインテールをしている王女様は元気そうに俺に挨拶をする。


「ライト先生が私に光魔法を教えてくれるんですか! ついに私も魔法が使えるんですね」


 嬉しそうにニコニコしながら、俺に近づいてきた。距離が近いわ。


「はい、そのために来ましたから」

「やったっ」


 とても喜んでいる。可愛い。すごい。可愛い。まずい、可愛すぎて語彙力がなくなったわ。


「まず、君がしばらく生活する部屋へ案内するよ」

「あ、ありがとうございます」


 そうして、これから俺が生活する部屋に入った。めちゃくちゃ広い。ベッドもふかふかだし。最高すぎる。


 ◇

 

 その後、早速今日から家庭教師の仕事に入ることになった。

「まずは自己紹介をしましょう! 私の名前はルーチェ・エヒト。好きなことは本を読むことです! 特に魔法に関連する歴史ですね」

「私の名前はライト・ファルシュです。 そうですね……好きなことはおいしいものを食べることです」

「ライト先生、私にもフランクな感じでお願いします。そして私の事はルーチェと呼んでください!」

「わ、わかり、わかった、ルーチェ」

「よろしいです!」


 そんな元気な返事をルーチェはする。本当に太陽みたいに明るい子だな。


「自己紹介も終わったことですし、早速お願いします!」

「わかった。じゃあ始めようか」


 そうして魔法の準備を始める。

 

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王女様、魔法はどうですか? りくま @yorikuma

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