第20話『不自然(忠告)』
ウライダは5人を見据えるようにして、挨拶する。
「私は水精騎士隊隊長のウライダ。改めて、ミレパクト騎士団に入団おめでとう。そして、改めてこの場で謝罪するわ。皆を危険な目に遭わせてごめんなさい。けど、あれが君たちが相手するモノだという事も理解してちょだい。」
「…。」
魔物とは、戦闘できる人間が複数人。あるいは、魔法を使える人物が数名連携する事によって、やっと倒せる怪物なのだと改めて考えさせられる。
「そして、貴方たちは3か月の間訓練を行ってもらうわ。本来は最初に体力づくりのメニューから始まるのだけど、状況が状況だから座学からになるわ。」
「座学っても、俺とトーマスは難しい読み書きはできねーぞ。」
「貴族がするような勉強じゃないわよ。魔法や魔物についての知識、戦術、組織体系などについて学んでもらうつもりよ。あ、でも報告書の書き方ぐらいは憶えてもらうわよ?」
ダニエルとトーマスは露骨に嫌そうな顔をしている。
かく言うクロツミも胡坐をかける立場ではない。
ミレパクト語の読みはともかく、書きに関しては自身が無い。
女性陣はと言うと…丁寧にミレパクト語でメモを取っていいらっしゃる。問題ない訳だ。
「しばらくは、この水精騎士寮の3階の5部屋を使ってちょうだい。…本来だったら体力づくりで脱落して十数人程度になると思ってたんだけど、皮肉にももっと少なくなってしまったから、贅沢に個室よ。」
「座学はいつから…?」
「明日からよ。さて、そろそろ夕食ができる頃よ。下に降りて食事にしましょう?」
話は終わりとばかりに立ち上がり、ウライダは部屋の扉を開ける。
それに合わせてレンやダニエル達も立ち上がり階段へと歩いて行く。
クロツミも立ち上がろうとすると、左腕を掴まれて止められる。
振り返ると、神妙な顔のオリヴィエがこちらを向いていた。
「クロツミさん、ちょっといいかしら?」
「どうしたんですか?オリヴィエさん?」
「これから同僚な訳だから、オリヴィエでいいわよ。」
「なら、俺もクロミツでお願いしますよ。それで、改めてどうしたんだオリヴィエ?」
「レンさんの事で気になった事が一つ。」
レンがどうしたのだろうか?
何かを思い返すように目を閉じてから、続きの言葉を放つ。
「あなたと別れてから、レンさん。ずっとアナタの事を心配していた様子だったんです。いくら親しい間柄だとしても、未遂とはいえ殺しに来た相手を心配し続ける姿はその…奇妙に見えて。」
「それは…確かにそうだな。」
自分の身が危うくなったと言うのに、他人を心配し続けるのは優しさと言うには歪だ。あまりに過ぎると、レンの身すら滅ぼしかねない事柄だ。注意するべきだろう。
「ありがとう、オリヴィエ。俺からも少し聞いてみる。」
オリヴィエは頷き、二人はそのまま食堂へと向かった。
魔槍の解放者と聖剣の英雄~終末世界の素晴らしき共依存~ 極彩色ブランデー @nigurasu_24
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