映画
西しまこ
山ちゃんとあず
「映画行かないの?」
「もう少し、こうしていようよ」
「あん、もう。抱きついてこないでよ」
「えー、時間あるしさ、ね? もう一回」
「映画行くって言ったじゃない」
「んー、ほら。サブスクでいろいろ観れるよ」
「そうなんだけどさあ、映画館で観ようねって話したじゃない」
「これ、とかどう?」
「あたし、もっとしっとりした映画がいいな」
「えー、これ人気なんだよ? カーアクションがかっこいいって」
「あたし、そういうの、あんまりわかんないんだよね」
「じゃあ、これは?」
「あー、うん、これは泣けるよね」
「じゃあ、これで!」
「でもさ、これは一人で観たい映画なの」
「えっ! おれと観るのが嫌なの? 誰と観たの? ひどいっ」
「……あのさ。一人で観たいって言っただけじゃない。山ちゃんと観たくないわけじゃないよ」
「他の誰かと観た、想い出の映画なのかと思って」
「そういうわけじゃない。……ちょっとリモコン、貸して」
「何観るの?」
「これ! これがいいな」
「……ぜんぜんしっとりしてないじゃん。まあ、あずがいいならいいけど」
「うん、これにする! あたし、このシリーズ好きなんだ」
「おれも好き。こんな能力あったらいいよね」
「……バカじゃないの?」
「あー、バカって言った!」
「……どんな能力が欲しいの?」
「んーと。時間を操れるのかな」
「何に使うの?」
「小さいころのあずを見に行く。小学生とか中学生とか高校生とか。……かわいいだろうなあ」
「……キモいんだけど」
「ひどっ」
「だって、キモいよ、それ」
「なんだよう、こんなに好きなのに」
「ちょ、映画観るんじゃないの?」
「まあまあまあ」
「……」
了
一話完結です。
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「山ちゃんとあず」
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映画 西しまこ @nishi-shima
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