道中にて
ミミが魔法で病菌を取り除いた川の水は日本のミネラルウォーターみたいに美味く、道中で休みながらも味わえるので少しは快適な旅になりそうだ。
しかしただ無言で歩くのもなんか味気ないから俺から少しミミに話を振ってみるか。
「なあ、ミミ。もし良かったらでいいからなんでミミは聖女見習いをやっているか聞かせてもらっていいか?」
「ごめんなさい、キッコの街でお別れになるのならあまり詳しい事は話せません」
「ああ、そうだな。変な事を聞いて悪かった」
「いえ、キッコの街では私は聖女としての活動をしますし、きっとユーイチ様は何かお仕事をお探しになるなら、もうさほどお関りにならないでしょうから……」
なんか並々ならぬ事情を感じるが、彼女の言うようにキッコの街でお別れになるならあまり深入りしない方が良さそうだな。
そう考えていると俺達はとんでもない光景を目にする。
「ぐわあああ!」
あれは何だ!熊みたいな怪物に中年のおっさんが襲われている。しかもかなりの怪我をしているぞ。ど、どうすればいいんだ……。
この状況に俺があたふたしていると、ミミの顔つきが変わって熊みたいな怪物に向かって行く。やめろ殺されるぞ。
「お止めなさい、これ以上は傷つけさせませんよ」
そう言ってミミは手から火のようなものを怪物に対して放った。あれも魔法なのか?
火が怖かったのか怪物は森の中に逃げ出していった。ひとまず安心だ。
しかし早くこのおっさんの治療をしないと命に関わる。どうするんだ?
「私に任せてください、治癒の精よ我が声を聞き、我が望みを叶えよ」
なんか呪文みたいなのを唱えるとミミの手から眩い光が出て、おっさんの身体に放たれていく。
しかもおっさんの怪我みるみる治っていく。やった治療は成功だ。
「さあ、立てますか?」
「ん⁉お、おかしいな?怪我は治ってんのに足が思うように動かねえ!」
「そんな⁉治療が失敗したんですか?」
違う!これはいわゆる後遺症という奴だ。とんでもない怪我や病気をした時に残ってしまうやつだ。怪我の後遺症ならリハビリをすればどうにかなるかもしれないが、ここにはまともな設備がないし、たとえ街に連れて行ってもあるのか?
「ちきしょーー!俺がこんなんじゃ、嫁や子供をどう養っていきゃーーいいんだよーーー!」
「ごめんなさい、ごめんなさい……私が未熟なばかりに……」
おっさんは無念そうで、ミミも泣きながら悔しそうにしている。くそ!こんな時に俺は何もできないのか!
そんな悔しがっている俺のスマホに突如通知が来た!どういうことだ⁉異世界では圏外じゃなかったのか!
俺はいちるの望みにかけ、自分のスマホを確認する。そこには……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます