理学療法士だった俺、異世界で見習い聖女と診療所を開きました

burazu

唐突な異世界転移

 俺の名前は宮下祐一。都内の病院で務める理学療法士だ。


 理学療法士とはケガや病気によって生じた後遺症の影響で障がいが残った。あるいは障がいが予測される人に対してリハビリを行っている専門職だ。


 専門職とはいっても基本的に理学療法は診療補助に位置づけられているから医師の指示の下、この理学療法を行っていくのだ。


 患者さんが元の生活に戻っていくのを見るのは嬉しいし、逆に結局障がいが残ったまま日常生活に戻らざるを得ない状況を見るのは悔しいと思う。


 そんな日々を過ごす俺は今日のリハビリのケース記録を入力し終えて、ナースステーションにいる当直の看護師にその事を申し送りしている。


「すいません、405号室の吉田さんの今日のリハビリのケース記録を入力しましたので、担当医の川田先生に確認するようお願いしますと伝えてください」

「はい、お伝えしておきます」

「それじゃあ、お疲れさまでした」

「お疲れさまでした、また明日もよろしくお願いします」


 看護師の言葉を聞いて、俺は病院をあとにし、自宅へと戻っていく。


 自宅と勤務先の病院は少し遠いが、徒歩で通勤できる範囲なので俺は徒歩で通勤している。


 そしてその徒歩通勤の楽しみとしてコンビニに寄り道して酒を買う。ちなみに俺は缶チューハイが好きだ。


 帰りの道に公園があり、いつもの俺ならスルーするが、今日の俺は思わず公園のベンチに座り、その場で缶チューハイを呑む。


「はーーー、たまには公園で飲むのも悪くないなあ、あ、弁当はどうしよっかな、まあいいや確か途中で自販機もあったし、もう1回買うか」


 我慢できず夕飯のコンビニ弁当のお供にしようと思っていたチューハイを呑んだ俺は自販機で買い直せばいいやと思うが、これが運命の分かれ目であった。


 さすがに空きっ腹に酒をいれたのはまずかったのか1缶だけなのに足がふらつく。


 だが、この道は俺の手慣れた道だ。迷わず帰れる自信はある。しかし、そんな俺に思わぬ誤算が発生する。


「あっ!」


 気付いた時には手遅れだなんとマンホールの蓋が閉まっておらず、俺はそのまま落下してしまう。


「うわああああ!」


 ああ、なんと間抜けだ。酔っぱらってマンホールに落下して死ぬなんて恥さらしもいいとこだ。


 そうして俺は意識を失い死んだかと思われたが、幸いにも意識が戻った。


 回りを見渡すと複数の木があった。それも今は日の照り方から昼間である事は明白だ。さっきまでは夜だったことから俺が出した結論は1つだ。


「まさかとは思うが俺って異世界に転移したのか」


 俺の異世界生活がいま始まろうとしていた。

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