燦々の君 影落ちて春ひさぐ
目障りな金色が視界に揺れる。
新しいアルバイト。大学生。男。同い年。あと、チャラい。
屈託のない笑顔と似合っていないガラの悪いシルバーピアスが彼の武装。それが悪いとは言わない。僕がしようとしない努力を重ねることを無駄だとも思わない。自分を良く見せようとする彼の方が、よほど健全だ。
バイト帰り道にスマホをチェックする。
今日は××さんか。あの人とにかくねちっこくて嫌いなんだよね。目にかかる前髪を真ん中でわけて、ふと、街路灯が照らす桜を見上げた。
みんなこれを「綺麗だ」と言って酒を飲んだり、バカ騒ぎする。
そんな桜の下は白いLEDのライトに照らされて明るいかと思いきや、影になって薄暗い。
大勢の人が持て囃す桜でさえ影を落とすんだ。
輝かしいあいつの近くにいたら、僕はどんどん薄汚くなる。
「──もしもし××さん、バイト終わったよ。……うん、そうだね、僕も早く会いたい」
『
春の湊 貴葵 音々子 @ki-ki-ki
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