背徳を浴びる鳥のうた

長月瓦礫

背徳を浴びる鳥のうた


私はため息をついた。

なぜなら、壁にかかっている鳩時計が3時を告げたからだ。

みんな大好きおやつの時間だ。


客が物影から姿を現し、店の前で列をなす。


赤い屋根のかわいいおうちにいる白い鳩が顔を出し、ぽっぽと鳴いた。

黒く塗られた両目がじっとそれを見つめている。

鳩の目はカメラが仕込まれており、ネットを通じて生放送している。


たった今、巨悪が暴かれようとしていた。


この時間帯になるとキャンディを買いに多くの客が店を訪れる。

彼らは穴という穴から手が出るほどキャンディが欲しいのだ。


しかし、この店で売られているキャンディは通常価格の倍の値段で売られている。

正規の値段で売っても売らなくても彼らはキャンディを買い求める。

それだけ値段を吊り上げても客は買いに来る。


「ちょろいもんだよ、こんな飴玉が馬鹿みたいに売れるんだぜ」


店長はサイケデリックなキャンディを自慢げにかごの中へ放り込んだ。

中層にある花曇工場で生産されているキャンディは主に富裕層向けに売られている。高級感を出そうとしているからか、果汁をふんだんに使用している。


この果汁というのが非常に厄介で、人体に悪影響を及ぼす副作用があることが判明したのだ。果物そのものに中毒性があり、食用として販売が禁じられた。


市場から姿を消し、キャンディも生産中止となったはずだが、工場は閉鎖されずに稼働し続けている。


キャンディに代わるものが出てくるわけでもなく、依存症を治す方法があるわけでもないから、止めるわけにもいかないのだろう。

この店は営業を続けられているし、依存症患者はキャンディを求め、さまよっている。製造中止になったキャンディの製造が続けられ、違法な取引がされている。

鳩時計によって裏側が暴かれる。


「お前も掃除屋なんかやってないでこっちで働いてくれよ。はるかに儲かるぜ」


この男は工場からキャンディを仕入れ、店で売りさばいている。

誠意をもって商売することをモットーにしているが、要は口が回るだけのクズだ。

適正価格を知らないことをいいことにぼったくり価格で販売しているのがいい証拠だ。


「遠慮しておく、菓子に興味はないからな」


「俺だって興味ねえよ。けど、需要がある以上、商売は成り立つんだ。

悪くない話だろ、人手が足りないんだ」


デバイスをちらりと見ると、コメントが滝のように流れている。

貧困層の人間を搾取していること、キャンディを違法販売していること、店の場所を特定し警察に通報したこと、背筋が凍るようなことが次々と書かれている。


砂糖漬けの脳みそしかない連中ばかりのこの世界から抜け出すには、外に助けを求めるほかあるまい。彼らはまともな思考回路を保有している。


遠くからサイレンが聞こえる。

まもなく警察が到着し、この店が捜査されることだろう。


「それはどうかな」


私は声をかけた。

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背徳を浴びる鳥のうた 長月瓦礫 @debrisbottle00

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