第2話 キャラメイクへ がんば令嬢
二週に渡る課題地獄をやっとの思いで終わらせ、買ったまま開封されずにテーブルに置かれたゲームパッケージをみる。
「やっと、やっとできるわ。この……えーっと、ディフェ?……ディファなんちゃら!」
英語が読めない。
二週間前にゲームショップで偶然見つけた、1900年代のイギリスをモチーフにした世界観のゲーム。分類的にはVRMMORPGになるらしいそれを、パッケージの雰囲気だけで買った直後に課題を出され、サービス開始から二週間も経ってしまったそれを、やっとできるのだと思うとテンションが高くなる。
ゲームの中では私、お嬢様みたいな振る舞いをするんだ……、現実じゃ出来ないし。
RPGはよくやるけど、MMOはやったことがなく、ちょっと調べると姫プレイという他人に物資を貢がせるプレイがあるらしいという情報見つけることができた。参考になるかもと、もう少し詳しく調べてみたがどうにも『騙された』やら『あの笑顔が俺を狂わせる』みたいな被害者の発言しか出てこなかった。姫プレイって言うくらいだし、とびきりのお嬢様的な演技でもしていたのかな?騙されたとかの発言を考えると、腹黒いとかわがままな性格に何かしらのカリスマがあるタイプだったのかも知れない。よくわからないけど前に読んだ悪役令嬢モノのラノベにそんなキャラがいた気がする。それを真似ればいいのかな?
「まあいいわ。早速やりましょ」
諸々を済ませ、ゲームの世界へダイブした。
▼▼▼
『ようこそおいで下さいました。早速ですがこの世界でのあなた様のお名前をお教えください。』
ログインすると男性とも女性ともつかない音声が流れてきて名前を尋ねられた。少し悩んで、ちょうど課題の為に読んだハムレットの登場人物のオフィーリアという名前を入力する。すると『そちらの名前は使用済みです。』のメッセージが流れる。少し文字を変えると使用可能になった。
『おフィーリア様ですね。ようこそおフィーリア様この空間は、キャラクターメイキングの為の場所となっております。初めに脳波の測定といくつかの質問をこちらから訊ね致します。その返答により、天恵と対価の二つが付与されます。ヘルプはご利用になりますか。』
「じゃあ、天恵と対価のヘルプお願いします」
ヘルプによれば、天恵はその世界での立場や地位、職業に対する補正を受けられるクラスのようで、例えば職人というクラスを付与されると、生産製造に対するステータス補正と職人NPCからの好感度の補正があると書かれている。一部を除けばポイントを消費することで取得できるらしい。言ってしまえば、質問と脳波による適正によってただで貰えるクラスってことみたい。ただし天恵で得られたものはメインクラスやサブクラスとは別枠で表記され変更ができないとも書かれていた。
次に対価スキルを読んでみると、後天的に取得することが出来ず、ゲームプレイに対して大きなデメリットを課す代わりに、強力な効果を持つスキルとのこと。また同じ名前でも効果内容が違うスキルなるものもある。常時発動されるタイプや特定の行動をとることで発動されるタイプの二種類があると書かれていた。
これ、天恵クラスに立場や地位に関するものがあるのなら、もしかしたらお嬢様とかお姫様みたいな立場のものもあるのでは?ってことは質問内容次第だけど、それっぽく答えていけば望んだものに近いクラスが手に入るかもしれない。
『準備ができたようですね。それでは質問と共に脳波の測定を開始いたします。終了まで最短でも5分ほどかかります。準備はよろしいですか。』
「開始してください」
ふわっとした感覚と共に質問が開始された。食べ物がなく困窮した子供がいますどうしますか。みたいな質問があるかと思えば、数種類のケーキをどれから食べますか。や、なぜかミルクティーのミルクを先に入れるか後に入れるかみたいな不思議なものまであった。それをどうにかイメージの中でのお嬢様っぽく考えながら答えていく。全部で五十を超える質問の雨を捌ききる。
『測定が完了いたしました。こちらがあなたに付与される天恵となります。』
提示されたメッセージには天恵【令嬢】と記載されていた。
「やった!望み通りッ」
小さくガッツポーズをする。やっぱりある程度はこちらでクラスの取得をコントロールできたみたいだ。
説明を見れば、初期装備がドレスになり、社交界や茶会などでの好感度に補正がかかるらしい。ステータスへの補正は『あなたは令嬢として様々な教育を受け、他貴族からの言葉の応酬を味わってきた。そのため、あなたは精神力と
初期装備のドレスは見た目が変わっただけで防具値の変更はなかった。
『そしてこちらが、あなたに付与される対価となります。』
そこには対価【悪役】と記されていた。
「悪役!?」
あまりに自分に都合のいいスキルに、大量の疑問符を浮かべながらそのスキル説明を開く。
『あなたはわがままで、人に世話をしてもらうことを当たり前に思っている。それは時として愛嬌となるが、行き過ぎれば自身を破滅に追い込む可能性を秘めた性質だ。このスキルはあなたがわがままなキャラを演じている間、味方の精神力を上昇させる。また、体力を1になるまで減らすことで戦闘からの離脱が可能となる(パーティメンバーを巻き込む)[CT‐2h] 被物理ダメージが微量増加』
うん、戦闘を絶対離脱できるし、多分魔法とかの防御に必要な精神力が上がるのは良いんだけど、悪役を演じている時だけなのが、控えめに言って使いづらいのでは?いやまあ、もとから悪役令嬢みたいなキャラにしようとしてたし、問題ないのかな?ううん?……まあいいか。
『ふふ、打算的なあなたにはお似合いのスキルでしたか?』
うわ、急に毒吐いたよ。
『それでは次はあなたの見た目を教えてください。』
複数のウィンドウが現れ、各種数値が表示される。【令嬢】と【悪役】この二つに似合う見た目にしたい。できればわがままに演じても不自然に思われない見た目がいいな……、そういえば前に見たアニメにもわがままお嬢様な子供がいたな。
「とりま、髪はウェーブがかったイエローブロンドにして」
幼い見た目にできれば、ちょっとくらいわがままに演じても、苦手な人はいるだろうけど、そういうキャラとして見られるはずだ。
「身長は150㎝くらいにして」
性格がわがままなら少し目も弄って目付きを鋭い感じにしたらよさそう。
「目の色はこれにして。よし、これで完了ね」
目の前にはアニメチックなフランス人形の様な少女。イエローブロンドに毛先にウェーブと薄い赤のグラデーション。三白眼に小さく吊り上がった目尻。顔つきも子供から大人になる少し前の、大きくなったら美人になると言われそうな感じにまとめた。どこかのソシャゲのわがまま魔女っ子を彷彿とさせる美人の幼体具合に満足満足。
ちょっとわがままキャラになりきってみることにした。
「完成よ!すっごい美人になりそうな見た目でしょう!」
まだちょっと慣れないから語尾が大きくなっちゃうけどこれはこれで楽しいな。
『お上手ですね。そのキャラでよろしいでしょうか。』
「もっちろん!」
ふふふ、ちょっとびっくりしたけど中々いいじゃないこれ。悪役令嬢ロールプレイはもしかしたら私にめちゃくちゃ向いているのではって思えるくらいだ。
『それではいってらっしゃいませ。《
世界が白く染まり、なんかノウメンをかぶった男性が巨大な白い柱の前で高笑いをしながら、空に浮かぶ逆さまの街を見上げているOPムービーを見せられ、私はこのゲームの世界に降り立った。
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読みやすさがわからないので、一部の文とセリフにスペースを入れてみました。
とりあえず、この話だけ
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