紹介文の『童貞文学』の看板に偽りなし

 年上の女性から性的な自撮りをもらって喜ぶ青年のお話。

 現代ものの掌編です。
 まさに紹介文にある『童貞文学』の一語の通り、とある童貞青年の内省……というか自分語りのお話。
 もうどうやってもネタバレになっちゃうので、本編を未読の方はこの先ご注意ください。



〈 ! 以下ネタバレ注意 ! 〉

 とにかく『童貞』感のすさまじさに圧倒されました。
 主人公のこの、なにか見栄の張りどころがズレてしまっている感じ!

 この長い独白、というか無限に続く言い訳は、一体どこの誰に向けて張られた予防線なのか?
 わかるけどわからないところが本当に素敵。
 かっこつけの言い訳であることは理解できる、という意味で「わかる」けど、でもそんなことしたって仕方ないじゃない、という意味で「わからない」……。

 要は高濃度の「そんなんだから童貞なんだよ」を叩きつけてくるお話、として読んだのですけれど、特に好きなのはそれが主人公の視点から描かれていることだったりします。
 揶揄などではなく、ある種の自戒や自嘲としての童貞。
 彼の〝これ〟と同じものではなくとも、でも自分だって何かにうじうじ言い訳して一歩も動かないまま満足しちゃうこと、あったりするなあと思ったり。

 主人公をはじめ、登場人物は必ずしも魅力的とは言えない(どころかきっと嫌われそうなタイプ)のですけれど、にもかかわらず作品そのものが魅力に溢れたお話でした。

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