数少ない女友達
異世界転生の王道と言えば剣と魔法の世界だがこの世界は剣と剣という脳筋世界。つまりは昔の地球とほとんど変らない。唯一違うのはこの世界では戦いが己の強さ(肉体的)に戦うことが第一にされていることだ。まるで地球で起きた核兵器の恐ろしさに神様が忌避したかのように作られた核兵器の恐ろしさを知ってる俺からしたら都合の良い世界になっている。
しかし例外もある。この世界、剣と剣だけに
俺は最初2%を舐めていた。そう簡単には出会うことはないと高を括っていた。実際は結構の確率であっており、また騎士団は変態の集まりだったのだ。
よくよく考えれば兄さんも戦闘狂の時点で考えておくべきだったのだ。無駄な戦いがしたくない俺がいくら安定の収入を得られる職業であっても絶対に知っていたら選ばなかっただろう。騎士団に、限っては戦闘狂が2割を超えると聞いたのは入団してからすぐのことだった。
忘れもしない、あれは入団して少し経った頃、
俺は、兄さんに騎士団はモテると誑かされ入団したがモテる気配は一向になく男だらけの生活に魔が差して仕事を放棄して街へ繰り出していた。
俺は出店で買った串焼きを食べながら街を歩いていた。
(仕事を抜け出して食う飯はうめぇ〜。やっぱ息抜きは大事だよな。甘い物欲しくなってきたしあそこの饅頭でも買うか)
饅頭を買いに向かい側に行くと後ろから首を掴まれた。誰の仕業かと思い振り返ると、思わず食べていた串を落とした。
そこには鬼の形相をした兄さんがいた。
「リト、なんでここにいるか説明してくれるか」
「兄さんこそなんで此処にいるんだよ。そっちこそサボりかよ」
「こっちは街の巡回で来てるんだ。お前は新人だからまだ巡回はないはずだが」
咄嗟のことで言い訳を稽えれなかった俺はそのまま詰んだ。その後、兄さんや騎士団長にたっぷりと怒られ稽古の量を今までの5倍にすると告げられなんとしてでも食い止めたい俺は必死に懇願した。
「お願いします。許してください稽古以外はなんでもするんでそこをなんとか」
俺の今の格好は土下座で謝っている。そこまでしているのは今の稽古でさえもきついのに5倍にされたら死んでしまうからだ。稽古を想像しただけで体が震えてしまった。
兄さんたちが俺の言葉を聞き、顔を見合わせてニヤけ出した。嫌な予感がした俺はさっきの言葉を訂正しようとしたが一足遅かった。
「リト、お前には遊んでもらいたい子がいる。俺等は最近、忙しく構ってあげれなくて寂しい思いをさせてしまっていているから相手になってあげて欲しいんだよ」
嫌な予感がした俺はすぐには了承できないでいると団長が
「相手をしてくれればしばらくの稽古は参加しなくて良い。そして今回のことは不問にしよう」
すぐに了承の返事をした。
「お任せください。この任務必ずや遂行させます。」
兄さんたちの言葉の言い回しのせいで子守だと思った俺にとってはこの後、予想外の仕事になるとは思いもしなかった。
次の日、兄さんたちに言われた通りに待ち合わせをする。場所は闘技場の目の前だ。
(なにかがおかしい。闘技場の前で待ち合わせをするなんて)
不安に思っていると
「お前が噂に聞く、仕事を放棄したリトか」
声が掛かった方に目を向けるとそこには騎士団の服を纏った銀髪の美しい女性がいた。その姿に見惚れていると、
「早く中に入るぞ」
銀髪美少女に引きずられながら闘技場の中に入る。
「今日は子守の仕事じゃないんですか。兄さんたちからは相手をしてもらいたい子がいるって聞いて」
俺は闘技場に入ってくことを不思議に思うとそれを見て、
「子守なんのことだ。今日は私と試合をしてもらうために連れてきたんだ。お前と同期だから敬語は使わなくて良い」
面倒くさいと思いつつも、美少女と剣を交えれるなら本望だと思い受けることにした。
(口調はちょっと男っぽいけど、めっちゃ可愛いな。勝負でなにかを賭けてデートに誘おうかな)
「ただの勝負だとつまらないから何か賭けようぜ。俺が勝ったら友達になって欲しいな」
日和ってデートまでは誘えなかった。
「いいだろう。私が勝ったら何をするか考えておこう。まだ名前を教えていなかったな、私はセリスだ」
俺も自己紹介をしようとすると「必要ない兄から聞いている」と言われた。
(兄さん俺のアピールポイントを奪いやがって。)
「早く始めるぞ。」
俺が兄さんを心の中で恨んでいると、セリスが急かすように呼びかけてくる。俺は思わず頰が緩んでしまった。可愛い美少女に急かされて嬉しくない男はいないだろう。
お互いに剣を構え試合を始める準備をする。彼女が石を投げて地面に落ちたときに開始する。
「始めるぞ」
地面に石が落ち試合が始まった。最初はお互いに様子を窺う。俺は女子と剣を合わせるのは初めてのため傷つけないように手を抜きながら勝とうとしていた。それが命取りになることも知らずに。
女だからと油断していたすきに一瞬にして間合いを詰められた。あまりの速さに驚き防御をとるのが遅れ頰先に剣が掠った。
(やばい。このままだと本気でやらないと死ぬかもしれない)
女性に本気をぶつけて傷つけさせたくない俺はこのまま負けようか迷ってると、
「まだまだこんなものではないだろ?さっさと本気を出してくれないか 」
女性が望んでるのならと思い俺は本気を出す。激しい攻防になり何度か打ち合う内に彼女に対する違和感を覚えた。
熾烈の戦いの中、段々と俺側が有利に傾いてきた。男女では体力、骨格も違うため実力では一緒であった場合、有利に働くのは男なのが必然である。
防戦一方となる彼女は苦しいのにも関わらず、苦悶の表情どころか笑顔を向けていることに俺は狂気的なものを感じていた。
その顔はいつも近くで見ているような見覚えのあるような笑顔を向けていたのだ。
「さすがクリスさんの弟だ。まさかここまで強いとは。私が勝ったら一生、私と戦ってもらおうかな」
今の発言で既視感の正体が分かった。彼女は兄さんと同じ戦闘狂の部類で兄さんよりも狂気的な思考を持っていることを。
(兄さんたち、彼女が戦闘狂と分かってて押し付けてきやがって。なんとしてでも勝たないと一生、戦わないといけなくなる。)
体力的状況を考えて持久戦に持ち込もうとしたが彼女も俺の考えに察し、攻撃のギアを上げてくる。
(戦闘狂だけに、俺の戦いの癖が読まれてる。このままだと押し切られる)
俺がピンチに陥ったところで決着が着いた。セリスさんの剣が折れたのだ。
「私はもう戦えない。私の負けだ。」
長い試合がようやく終わったことに俺はため息を吐いた。
「約束通り、友達からお願いします。」
可愛い友達を得たことに安堵していると、
「友達ってことはいつでも試合してくれるってことか。死線をくぐるような戦いが何度もできるようになるとは嬉しいことだ」
勘弁してほしい。誰も彼女に友達の定義を教えてないとは。なのでしっかりと友達の意味を教えると彼女はしょんぼりとした。その顔にぐっと気持ちが押し寄せたが心に留めることにした。
「生憎、今まで友達ができたことがなくてな。」
可哀想と思った俺は、
「たまになら試合してあげてもいいよ、たまにはね。取り敢えずお腹減ったしご飯行こうか」
「本当か。では、明後日とかどうだろうか。今日は私がごちそうしてあげよう」
(気が早いな。俺の体のために早めに新しい趣味見つけてあげないと大変だな)
俺たちはそのままご飯を食べに向かった。その後兄さんにセリスのことを説明してくれなかったことを愚痴ったが上手く言い回されてしまった。
「ふぁ〜」
どうやら昔の夢を見ていたようだ。カーテンを開け窓からの日差しを浴びていると、
「リト、今日は私と試合の日だ。楽しみに待っているぞ」
元気よくセリスが入ってきた。俺の部屋にはプライバシーがないようだ。
「セリス分かったから外に出てくれ、着替えれないから」
「私としては構わないが、リトが言うなら。早く戦いたいから急いでくれ」
セリスは颯爽と出ていく。余程、早く試合がしたいらしい。現代の日本人が見たら思うだろう彼女は残念美少女だと。
「頼むから戦闘狂同士で戦ってくれよ。兄さんもいるんだしさ。俺は夜の戦闘狂だよ」
俺の言葉は虚しくも誰にも聞かれずに消えていく。
(誰か俺の代わりに代わってくれ〜)
転生者の理想離れのガン萎え生活 トシゴロー @onosinnn
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。転生者の理想離れのガン萎え生活の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます